『LOST BODY 失われた肉体』

さよならバスチーユ。
オレはえらい過密なスケジュールを組んでしまった。DEAD END STREET 3と、Blueでのオレの個展が重なってしまったのだ。オレもマサに負けないくらいのオッチョコチョイで、友だちの結婚式に借金までして行ったら「昨日終わりました」とか、渋谷のハチ公前で3時間待っても友だちが来ないんで電話したら「あんた日曜日は明日よ」とか言われたエピソードは多々ある。まあ、ライヴの日が一日ずれていたのが、不幸中の幸いだ。
DEAD END STREET 3『LO$T BOD¥ 失われた肉体』は、命を犠牲に取引される経済システムへの批判や、肉体の束縛を越えて飛び立つイマジネーションを基本テーマにすえたものだ。
8月26日〜28日参加したアーティストは相原ヤス、早川星太郎、三田村光土里、菅間圭子、高村まどか、川野弘毅、DPZ加藤史子、石黒一華のレギュラーの他に、初参加アーティストも加わった。横は何ある前衛美術学校『Bゼミ』から石膏の足形を炭で焼いた作品を展示した岡山淑美、同じくBゼミから拳銃を持った男の写 真を自動スライド映写機で写した溝口美輪、作家自身と友人のAV女優のSM写 真を出品した都賀暁野、“LOVE”や“KILL”などの言葉を直接肌に書いたオッパイの写 真を入口の階段に展示した中島ちえ、セルフ・ポートレートの押尾健太郎、着物と洋服をミックスさせたオリジナルドレスを展示した関エミコ&北原詩織、スタッフの方でも朝岡研(ヴィデオ撮影)、宗戸一眞(DMデザイン)、里陽子(照明)、久保真由美(カッティングシート)、バーバラ成瀬(会計)がバックアップしてくれた。
オレは病院で使われてる『面会謝絶』という札をかけ、動物病院を出品した。どこのスーパーマーケットにも列んでるサーロイン、ロース、バラ肉、スペアリブ、ベーコン、鳥のもも肉などを包帯でくるんだ。スチロールのパックに4本足をつけ、病室の白いベッドに見立てた。8月のクーラーもきかない病室で、『面会謝絶』の生肉たちはピンク色のリンパ液を包帯ににじませ腐っていった。
27日(土)のライヴはロシアから帰国したマサのヴィデオ作品からはじまった。
床に置かれたテレビモニターから、モスクワの風景が発光する。マサがロシア国立映画学校で恋人だったアイルランド娘オーラと親友だったダレルが主人公だ。ダレルは渋谷のユーロスペースで上映されたホドイナザーロフ監督の『少年、汽車にのる』の主役もつとめていたし、92年ヴェネチア映画祭で銀賞をとった同じくホドイナザーロフ監督の『コーシュバコーシュ』でも主役をやった。最後にダレルが自分の絵を燃やしてしまう、炎の美しさが印象的だ。
オレは『子宮外妊娠』の中から短編「障害者の反乱」を朗読した。

森下泰輔と菅間圭子は前作をさらに洗練させて『Pー3』とした。闇の中に浮かび上がる巨大な時計が秒を刻む。時間の本質をはきちがえた空間を刻むだけの機械、“時計”に逆行するかのように、ノスタルジックな菅間圭子のピアノが流れる。59秒の次の瞬間、工事現場を思わせる森下泰輔のギターノイズが我々を強引に現実へと引き戻す。それが一秒も狂わず、一分ごとにくりかえされる。揺り動かされる我々の船は、永遠にどちらの岸辺にも安住することを許されないのだ。
つぎは相原ヤスの鮮やかなスライドをバックにバーバラ成瀬の短歌リーディングだ。当時ロンドンやニューヨークのクラブシーンでポエトリーリーディングが復活してきたころだった。しかしバーバラのように自らアコーディオンを奏でながら、詩よりも古い短歌形式で現代を歌ったやつはいないだろう。
路上にて すくんだままの 時破り 僕らを刻む ディジタル音よ
ロ    ス       ト   ボ     ディ
最後の二組は轟音グランジノイズバンドだ。
LOOP ON THE HEAVEN(ループオンザヘヴン)は8月21日にデビューCDをリリースし、前日フリクションとの共演を終えかけつけてくれた。ノイジーなのに不思議にメロディアスで美しい曲たちだ。
トリはOVER HANG PARTY(オーヴァーハングパーティー)だ。リーダー福岡リンジはPHEWや東京ダウザーにも参加していて、石井聡互監督の作品でも音楽をつとめている。暗転させた部屋に強力なフラッシュライトが点滅し、ドラムスがグラインダーで火花をちらす。演奏が終わっても、目も耳も使えなくなるほどのすさまじいトリップだった。
創刊3号目くらいの新進アートマガジン『FREAK OUT』が見に来ていた。編集長の荻原広は「これはムーヴメントですよ!」と興奮した口調で語っていた。
うわさは広まり、観客数は増え、評価も高まってきているが、制約はますますきつまっていった。
ダイダイエマニュエルが改装してゲジラNo1と名前を変えた西麻布バスチーユは、もう廃墟の面 影をとどめていない。今までのように無料で借りれなくなり、ひとり8000円の出品料を集めなければならなかった。オレの生肉の作品でも「真夏の3日間で腐っていくことも重要な作品の一部」と言い張ったが、「腐臭を放ちはじめたら捨ててもいい」という条件で納得せざるをえず、オーヴァーハングパーティーの火花も契約違反と言われ謝罪した。
この展覧会を最後にオレと満知子、ダイダイエマニュエルとDESの蜜月は終わってしまう。しかし田中満知子の存在なしにDESはありえなかった。もしDESが東京のアンダーグラウンド・シーンに重要な役割を果 たしたとするなら、ワガママな悪ガキたちを大地の母のように育ててくれた田中満知子の存在は本当に大きかったと思う。


HOME