下にいくほど新しくなっています

1 nobember(fri)
15 self-existing owl moon

 やったー!
 2枚の油絵が完成した。
 この2週間こもりっきりで描いていたので、子泣きじじいがおりてくれたような爽快感。(ふつうこういうときは、肩の荷がおりたって書くんだろうな)
 12月の仕事が来年の2月にのびたので、今年はネアリカ三昧だ。
 来年じゅうネアリカはつづくと思うので、ボランティアは多ければ多いほどいい。
 現在30人近くも応募がある。
 ネアリカの輪は、毛糸の波紋のごとく広がりつづけている。
 明日はなんと、飛行機で! 
 京都から美和ちゃんと香奈ちゃんがきてくれる。
 二人ともやる気満々、2泊3日のネアリカ3連ちゃん。
 ネアリカンの情熱にこたえるため、美味いクラムチャウダーをつくるぜ!

2 nobember(fsat)
16 self-existing owl moon

 ネアリカ再開。
 まずはあっこさんが10時15分に「霧降メルモンテ」から出勤してきた。
 前日71歳のお母さんとタクシーで東照宮や中禅寺湖などを観光し、昨晩はメルモンテのデラックスルームに泊まり、朝から風花の舞う露天風呂につかり、お母さんを東武日光駅から電車に乗せたあと、ネアリカンにやってきた。
 10分後にとっちゃんと、文ちゃんがきた。
 ゴッドハンドとっちゃんはサッシ職人だけあって完璧な仕事をする。満ち欠け月食にむかう月を正確に描き出す。
 文ちゃんは蝶をふちどる暗い斑点を担当してもらった。
 元ひきこもりからメキシコの先住民にまで世界がひらかれた文ちゃんは、ひきこもりの人たちが集まれるフリースペースづくりに挑戦している。
 「ネアリカは世界の縮図だ」と思うことがある。
 今、文ちゃんが木工ボンドで手をべたべたにして貼る暗闇は「黒いスポットライト」だ。 内側の明るい羽を浮き立たせる。たとえ暗い役割を引き受けたにしても、ネアリカ全体を輝かす底力になる。
 そのつど、そのタイミングで、人間一人ひとりに与えられた「役割分担」という言葉を思い出させてくれる。
 昼頃には、ジャルのマイレージを使って京都から美和ちゃんと香奈ちゃんがきた。

 左の絵は美和ちゃんのキャンバス作品で、すごいサイケデリックな傑作だ。
 写真ではよく見えないが、綿密に描きこまれた細部は、「前世はウイチョル族かアヤワスカを使うシピポ族?」と思えるくらい、集合無意識に染み入ってくる。
 美和ちゃんは大阪スカイビルにあるフィットネスクラブのインストラクターで、その会員の香奈ちゃんをつれてきた。
 香奈ちゃんはシルバーアクセサリーをつくっていて、その手腕に驚いた。明日にはアップで彼女たちがつくったところをお届けします。
 送迎バスにのって、霧降温泉のメルモンテにいった。
 温泉卓球で盛り上がる。

 
美和ちゃんと香奈ちゃんは、なんとシェークハンドのラケットを選んだ。(ここで、ただもんじゃないのがわかる)
 ほぼ3人とも互角で、カットとスマッシュの嵐。
 オレがはじめて敗北をきしたかこちゃん(中高とも卓球部)とも対戦させたい。
 バドミントンでは、「お蝶夫人」ミッシェルに鍛えられたオレが圧勝したけど、ふたりともひろいまくる。天性のしなやかな運動神経、美和ちゃんスポーツで食ってるプロだよ。香奈ちゃんはニューヨークのBDCにモダンダンスを4,5回も習いにいってるし。
 たぶん3日後にはオレが負けそう。

2 nobember(sun)
17
self-existing owl moon

 美和ちゃん深夜2時までひとりでネアリカの制作をしていたという。
 すごい情熱!
 ふつうネアリカンは、浅草発8時10分の快速に乗り、10時14分に東武日光駅に到着。11時くらいから製作を開始し、2時くらいに昼食をとり、4時35分の送迎バスで温泉にいき、6時52分の電車で帰るというが定番だ。
 制作の正味時間は5時間くらいだろう。
 しかし関西チームは12時間という恐るべき記録を樹立してしまった。
 香奈ちゃんは正確無比な手腕で蝶の羽にある太陽と月の紋をつくりあげた。紺と青の毛糸を扇状にはさむことよって、網膜をあざむき、紋が動いて見える。
 前回「太陽のカムイ」のメイン部分の太陽を制作してくれた美和ちゃんは、今回もメインの子どもをやってくれている。
 それも2ミリの毛糸を3本にばらし、ピンセットで細かく貼り付けていく。オレはもちろん、本家ウイチョル族も絶対マネできない超絶技巧だ。
 2回目のあきちゃんはじつに手際よく下羽の銀がとそのバックをやってくれた。
 今回はお試し参加で地元今市の上原夫妻も手伝ってくれた。
 おまけにヘンプの編み方教室もしてくれ、みんなに携帯のストラップやブレスレッドづくりを指導してくれた。
 出会いは財産というけれど、ネアリカの糸がいろんな人を結びつけてくれる。

3 nobember(mon)
18 self-existing owl moon

 またもや美和ちゃんは今朝の5時過ぎまでひとりで「眠る子ども」をやっていた。
 昨日の制作時間12時間を自分で破る17時間だ。
 オレは邪魔をしないよう書斎に寝袋をひいて寝た。
 香奈ちゃんも蝶の両羽根にある「太陽と月の結婚」を深夜過ぎに完成した。関西から飛行機でやって来たというだけではなく、ネアリカン最強のコンビだ。
 初参加の由紀ちゃんは、映画クラブの大学4年生。
 彼女のホームページの日記(驢馬の耳)に書かれた詩のような文章はとても魅力的だ。「行間の跳躍力」を知ってる詩人だ。痴呆になった自分のおじいちゃんの日常を描いた「会長観察記」もクールな愛情がにじみ出てる。
 由紀ちゃんが今ハマってるバンド「 Syrup 16g 」にオレもハマった。
 救いようのないくらいネガティブで身勝手な詩、幻惑的なギターとヴォーカル、色彩豊かなアレンジは、「感傷的狂気」にオレをいさなう。
 五十嵐隆は、ジョイディヴィジョンを、エコー&バニーメンを、スミスを、スピッツを、スガシカオを、中村一義を、ゆらゆら帝国を越え、Jポップの新時代を築くだろう。(暗いんで、バカ売れはしそうもないが)
 由紀ちゃんは温泉よりもネアリカを選び、夜8時の電車で帰っていった。
 美和ちゃんと香奈ちゃんは9時の電車で栃木にいき、夜行バスで大阪に帰る。ふたりとも明日朝から仕事だ。
 20年以上も作品を創りつづけてきて、他人に対してこれほどの感謝を感じたことはない。

4 nobember(tue)
19 self-existing owl moon

 20日ぶりの休日だ。
 2週間、油絵のかんづめ状態、ネアリカンの食事づくりに主婦状態。
 妹と3歳の周次郎と飯を食いにいくことになった。
 車から降りた周次郎がとととーっとかけよってきて、妙なポーズをとる。
 小さな左手をひじからあげ、右手を胸にそえて、舌ったらずな口で言った。
「あ〜ら、おくさま、どちらにおでかけ?」
 ドラえもん教育の是非を問う。

5 nobember(wed)
20 self-existing owl moon

 プールのジャグジーから初雪をながめる。
 「おつなもんだなあ」なんてくつろいでいると、テラスの床になにかがころがっている。
 ジャグジーから立ち上がり、窓に近づく。
 鳥だった。
 ウグイス色の羽とネイプルイエローの腹をした体長20センチほどの野鳥だ。
 死因はわからないが、コンクリートのうえでさらしものになっているのも不憫だな。
 オレは濡れた海水パンツ一丁で雪の舞うテラスに飛びだし、鳥を抱き上げる。
 体温は失われ、ぴくりとも動かない。
 花壇の土を素手でほじくり返し、鳥を埋葬した。
 伸びた爪の間に土がつまり、両手が真っ黒になる。
 思わず寒さに身震いし、あわてて室内にもどると、3人のおばさんと目が合った。
 真っ黒な両手をうしろに隠して、愛想笑いをかえそうとしたが、おばさんは「変人」からぷいと目をそらし、テーブルに置いた荷物をかっさらっていってしまった。
 そりゃそうだ、雪の中を裸で土を掘り返すひげ面の男なんて、危険人物そのものだろう。
 まっ、いいか。
 真実は、鳥さんだけが知っている。

6 nobember(thu)
21 self-existing owl moon

 電話録(住所録ではなく、電話のみ)をつくった。
 こりゃあもうダーウィン進化論の「淘汰の歴史」だ。
 まえまえから「やらなくっちゃ」と思いつつ、「めんどくせえ」と先延ばししていた。
 美術をやっていた6年前までは個展のたびにダイレクトメールを出すので、オレの住所録は5000人近くなっていた。最後の個展「偽アンディー・ウォーホル展」では、10000通のダイレクトメールを出している。
 もう誰が誰だかわかんない。
 話したことのある人の顔は覚えているが、名前がでてこない。
 「ああ、ひさしぶり」とか言いながら、
 誰だっけ?
 どこで会ったっけ?
 名前はなんだっけ?
 とか誘導尋問している。

 6年間の日光引きこもりで、さっぱりした。
 5000人が50人にへった。
 電話で連絡する相手だから、気心も知れている。
 友人というのは、「周波数」だ。
 人は1秒ごとに別人であり、発する周波数もちがう。
 今自分が発している周波数に同調する人が集まり、合わない人ははなれていく。

 もうひとつ突っ込むと、友人は「鏡」だ。
 今のオレを映してくれる。
 6年間も書き換えなかった電話録のほとんどの人が消え、現在の自分に必要な人だけが残っている。
 相手から拒絶されるにせよ、自分で連絡をとらなくなるにせよ、まわりにいる人たちは、「今、君が必要としてる」から、いてくれる。
 人間は身近な人ほど、おろそかにしがちだ。
 ふうっとまわりを見わたしてごらん。
 両親や友人を亡くして後悔するのは、いやになるくらい身近な愛情に、
 気づかなかったことだ。

8 nobember(fri)
22 self-existing owl moon

 アイヌのシャーマンであり、「風の子レラ」のチュプばあちゃんのモデルでもあるアシリ・レラ(山道康子)さんの講演にいった。
 8月のアイヌモシリ一万年祭で会ったばかりだが、東京で康子さんに会えるとは贅沢だ。
 開演は夜の7時だが、昼の2時に町屋についてしまったので、とりあえず会場までいった。すると早々と会場の飾り付けを終えた康子さんがいるではないか。
 リハーサルがはじまる4時までずっと二人で話していた。こんなにゆっくり話ができるのは何年ぶりのことだ。そこで聞いた逸話をひとつ。

 青森の郊外に首を切り落とされたアイヌたちを祀っている神社があるという。
 そこではしょっちゅう幽霊が目撃され、地震でもないのにお堂が揺れる怪奇現象が起こるので、「浮かばれぬ霊たちをなぐさめてほしい」と康子さんが呼ばれた。
 お堂近くの池で、康子さんは目に見えぬ力で髪の毛を引っぱられ、どんどん池に近づいていく。
「危ない!」
 康子さんにはこの意味がわかった。ここで殺されたアイヌたちの霊が「わたしたちはこうして髪を引っぱられ、石に押さえつけられ、切り落とされた首をこの池に投げ込まれたんだ」ということを知らせているのだ。
 水面下にはたくさんの首たちがいっせいにあらわれ、恨めしげな目で康子さんを凝視する。
 まわりの人たちが康子さんを池に落ちる寸前で引き止めた。
 神社の奥さんにそれを言うと、けろっとした顔で答えた。
「ああ、首はいっぱいいますよ」
 康子さんがお堂にはいったとたん、微震がはじまった。板が軋む音が聞えるくらい揺れる。
 みんなが神社の奥さんに不審の顔をむけると、またもやあっさりと言った。
「ああ、揺れますよ」
 お堂の真下には、当時もっとも力を(霊力も)もったアイヌの首領の胴体が埋めてある。昔からつづく怪奇現象を恐れ、神社を建て替えたときに、胴体のあるという穴にコンクリートを流しこんだ。それからこの微震ははじまったのだという。
「首はどこにあります?」康子さんが訊いた。
「ちょっと遠いですよ。ここから300メートルほどはなれた山の祠の下にあります」
「首をつなげなくちゃならない。案内してください」
 死者の霊力を断つために首を切る風習は太古の昔から世界中にあった。アフリカ、アジア、アメリカなど、白人でさえインディアンに敵部族の首を切ってもってこいと命令したし、フランスのギロチンをはじめ、日本でも江戸時代まで、いやいや三島由紀夫の自殺まで、首切りの伝統はつづいている。
 首の祠に着き、康子さんが触れたとたん、誰も開けられなかった扉が開いた。
 その内側に首が浮かんでいた。
 もちろんそのビジョンは康子さんだけにしか見えなかった。
 そこまで話したとき、康子さんはオレの顔を凝視したかと思うと、大笑いした。
「AKIRA、あんたの顔とそっくり!」
「そんなあ、オレは幽霊じゃありませんよ」
「いや、これは霊的な話じゃなくて、実際に目鼻立ちからヒゲまで似てるわ。あんたあの首の子孫なんじゃない? がっはっはっは」
「ほらほら脱線しないで、それでオレの先祖はどうなったんですか?」
 康子さんはまた真顔にもどって話をつづける。
 この首は何百年たってもこれだけの力を残すすごい念があるので、真剣に祈らないと自分が負けてしまう。負けたら最後、自分が発狂するか、死に至る可能性もある。
 康子さんは全身全霊を込めてカムイノミをはじめた。
 すると地の底からかすかな呻き声が聞えてきた。
 神社の奥さんはもちろん、同行者にも聞えたそうだ。
 コンクリートの中でもがく胴体の苦悶が痛々しく感じられる。長く苦しい時間がすぎると、突然溶岩のような熱が山を駆け登ってくる。自分たちが祈っている地面の下にそれが到達した瞬間、同行者のひとりが叫んだ。
「つながった!」
 べつにシャーマンでもなんでもない学校の女性教員だ。驚いた康子さんが訊ねた。
「なんでわかったの」
 女性教員は当惑しながら答えた。
「えー、自分でもわかりませんが、なにか熱い固まりが足の方からはいってきて、脊髄のあたりを昇り、頚椎のところで消えたんです。なんだか急にさっぱりしました」
 康子さんたちがお堂にもどると、微震がおさまっていた。

 これで小説が1本書けちゃうくらいおもしろい話だ。
 リハーサルで50分かかったユーカラ(アイヌの神話)を主催者の天川さんから「もうちょっと縮めてもらえませんか」といわれた康子さんは、本番で15分に縮めてしまった。
 さすがに開演15分で休憩は入れられない。そこで急きょ、もうひとつ「血を飲む刀」というユーカラをやってくれた。これがモダンホラーみたいで、すっげーおもしろかった。
 最後はアイヌの歌と踊りで、オレも参加させてもらった。観客もステージに上がり輪舞(リムセ)を踊った。
 康子さんはいつも、人を幸せにする魔法をかける。
 体型もそうだが(ごめん)、
 本当に、
 大きな、
 大きなひとだ。

9 nobember(sat)
23 self-existing owl moon

 今日のネアリカンはもう7回目のとっちゃん。
 温泉にもいかず、8時間まったりと制作に没頭した。
 インドカレーを食いに外にでると、雪が舞っている。
 風花ではなく、淡い結晶のみぞれ雪だ。
 ウエイターのヴィシュヌさんはカルカッタ出身なので、生まれてはじめての雪だそうだ。
「オーマイゴッド!」
 奇声をあげながら外に飛びだし、両手を広げて天を仰ぎ、子どものようにはしゃいでいる。
 ヒンドゥー教の聖地シバ神の住むカイラス山を思っているのだろうか。
 そういえば、オレのシバ神トトチョフもあの山の頂上にいる。

11 nobember(mon)
25 self-existing owl moon

 今日のネアリカンは、いっきに完成直前までもっていってしまった。
 2作目の倍早いペースだ。
 池澤雪っぺは、左肩に「雪印」(雪印乳業のマーク)のタトゥーを彫っていたが、雪印乳業の破綻によって深い打撃を受けている。
 彼女の奇想天外な美術作品はガロをはじめNHKでも紹介されているが、パフォーマンス作品で「ハラ・ロワイヤル」舞踊団というのをつづけている。
 クラシックバレーの衣装をつけ「白鳥の湖」を腹踊りやドジョウすくいと融合させたり、最近はインド舞踊と腹踊りを組み合わせている。ビデオを見せてもらったけど、もう笑いが止まらない。
 今回2度目の参加で、大学で映画クラブにはいっている由紀ちゃんの映像作品も見せてもらった。田舎のおばあちゃんが死んで、姉のもとに上京してきた妹を「不要物なんでも引き取ります」というリサイクル屋に売る話だ。ちなみに妹の値段は28000円だって。シュールで、わけわかんなくて、無意識に深読みさせられる映画だった。
 由紀ちゃんの友人奈美ちゃんは、サニーデイサービスのファンで、偶然自転車でとおりすぎた曽加部君を(サニーデイサービスのリーダー)鬼のダッシュで追いかけ、サインをもらったという逸話をもつ。
 ネアリカにはまった3人は、温泉拒否。
 10時間ぶっつづけで、完成の1歩手前までいった。つぎのネアリカは、11月19日(火)。(完成に立ちあいたい人はメールしてください)
 今、写真をアップして驚いた。
 右したに白い円が浮かんでいる。カメラのレンズを調べてもそんな染みはないし、撮り直しても白い霊魂はなかった。
 心霊写真だ!
 やったー、何十年もあこがれていた心霊写真をついに我がカメラに収めたのだ。
 なんでも自分に都合よく解釈してしまうオレとしては、
 蝶の魂がネアリカに入る瞬間を激写したね。
 先月、霧降温泉の垣根に埋めてあげた蛾の魂がウェブを見てるみんなにもわかりやすいように白い固まりであらわれたにちがいない。
(くしゃみで空中を飛んだ猫のよだれかも知んないけど)

13 nobember(wed)
27 self-existing owl moon

 プライベートライブも深夜過ぎに終了し、眠ったのは朝の4時だ。
 帰りの運転のために酒をひかえたタケちゃんは、「ポツリ」ですごい速弾きを披露し、オレのヴォーカルも今まででいちばんよかったそうだ。

 その昔、オーストラリアの先住民アボリジニは、ほとんど日常会話をしなかったらしい。
 言葉を発するのは、神たちにむかって歌うとき、
 祭りで神話を語るときのみに限定されていたという。
 「じゃあ、ほかはぜんぶテレパシー?」というわけでもない。
 だいたい日常生活はやることが決まってるし、「そこの鍋とって」とか指させばいいし、音を立てちゃいけない狩りは、指などのサイン(手話の原形)を使うのが伝統だった(東北に残るマタギもそう)。
 太古の昔、言葉は神にのみ捧げるものだったのだ。
 「千と千尋の神隠し」は言霊の呪縛を描いていた。
 世界中に響く無数の歌はたったふたつに分類される。

 「神」と「セックス」

 ただそれだけだ。
 ロックやポップはもちろん「セックス」(あえて「愛」とはいわない)だが、「神」と「セックス」の中間にある「あいまいさ」をあえて追及するJポップアーティストが、中村一義であり、スガシカオであり、スピッツであり、COCCOであり、ゆらゆら帝国であり、ありありなのだ。
 前半ステージのラストに、オレが今はまってるSYRUP 16g(オフィシャルサイトでヴィデオクリップと音楽が聴ける)の「Reborn」(再生)を歌った。
 他人のオリジナルをやるのはジョン・レノンの「イマジン」以来だ。これほど、聖と俗との振幅幅の大きい詩も少ない。

「Reborn」 作詞作曲 五十嵐隆

昨日より今日がすばらしい日なんて
わかってる そんなことあたりまえのことさ
時間は流れて ぼくらは年をとり
汚れて 傷ついて 生まれ変わっていくのさ

愛する心がどんな色であっても
やさしい気持ちだけで夜は明けてゆくよ
つじつま合わせるだけで精一杯の
ぶさいくな毎日をぼくらは生きていくのさ
 手をとりあって肌よせあって
 ただなんかいいなって空気があって
 一度にそんな幸せなんか手に入るなんて思ってない
 遠回りしていこう

期待してあきらめて それでも臆病で
ほんとの気持ちだけが置き去りになっていくよ
 手をとりあって肌よせあって
 ただなんかいいなって空気があって
 一度にそんな幸せなんか手に入るなんて思ってない
 遠回りしていこう

昨日より今日がすばらしい日なんて
わかってる そんなことあたりまえのことさ
時間は流れて ぼくらは年をとり
汚れて 傷ついて 生まれ変わっていくのさ

ou making its better You taking its better
You making its better You taking its better

14 nobember(thu)
28 self-existing owl moon

 熊本の須藤さんがうちのリンク集をサーフィンしてたら、80歳になられる歴史学者吉田悟郎さんの「ブナ林便り」で、こんな記事が目に飛び込んできたという。

また 地方がめざめ立ち上がる 市長選挙が熊本市でありました。<熊本で信じられない事が起きました。昨日行われた熊本市長選挙で、現職を新人が破る快挙が起きたのです。現職の三角保之氏は川辺川ダム推進派で、若干37歳で新人の幸山政史(こうやませいし)氏はダム反対を訴えました。熊本市民はダムに対して「ノー」と表明したのです。熊本での講演会では、川辺川ダムに反対している球磨川漁協の毛利さんのお話もありました。彼の話は感動的でした。ダムが必要ないことはハッキリしているのに、それをゴリ押しする国土交通省や推進派のやり方。私は、何人かのダム反対者の方に「状況はどうですか?」と聞いたところ、やはり現職が有利ではないかという反応だったのですが、熊本市民は選挙で結果を出せたのです。長野の塩尻市の件といい、確実に動いている事を感じます。地方が動けば、必ず国を変えることができるのです。> (高橋茂さんメルマガ 『民意のゆくえ』11月11日から) 。

 しかもメルマガの記事のある「熊本で出会ったダム反対の人々は〜」というのは、なんと須藤さんと友人のことだったんだって。さてさて、定期便の須藤さんのメールを紹介しよう。今回はめでたいよ、ついにダム反対の熊本市長が誕生したのだ。

 世の中の不思議さ、人の出会いの不思議さを改めて感じています。
 高橋さんには「デジタルボランティアに学ぶ脱ダムの民意」というタイトルで11月8日にお話をしていただいたんです。丁度熊本市は市長選挙の真っ最中。
 選挙絡みの話をしていただきました。面白かったです。
 そのことを「民意のゆくえ」で紹介していただいた記事が「ブナ林便り」に。
 で、akiraさんのHPのリンクで、私はそれを見つけた。
 akiraさん〜ブナ林便り〜高橋さんとつながり、私もつながった!

 熊本は今回の市長選挙で、無党派の37歳の新人が当選しました。
 共産党を除く大政翼賛会派とあえて政党や団体に推薦を求めなかった新人。
 二ヶ月前に自民党を離党した幸山氏は、個人で辻立ちしながら支援を求めました。
 幸山氏に共鳴した現職の自民党県議と民主党の県議が「党派の締め付け」をものともせず、辻立ちに同行。
 この動きに市民や学生や女性たちが共感していきました。

 選挙運動期間の途中、川辺川の反対の幟も立てていいですよ、という候補者自身の言葉。

 組織に頼らない、個人としての選挙運動でした。
 現職も、県議や国会議員や市議会議員、労働団体、考えられるだけの組織の支援を確保したものの、市民派として押し出さないと新人に負けると選挙スタイルを市民派であると標榜、党派や団体は後ろに隠れ、長野での構造と全く同じになりました。

 で、市民の代表を訴え続けたものの、途中で「これでは負ける」と本来の姿に戻り、政党の締め付けが厳しくなりました。ここも長野と同じ。

 しかし、公示後も幸山氏は選挙スタイルを「辻立ち」から変えず、選挙カーを一度も私は見ませんでした。
 当然連呼もなし。さびしい選挙だねえ。という会話も。

 結局、1万数千票の差で当選。
 ガラス張りの市政を。市民の目線で市政を変えます。という公約に期待します。

 自民党や既得権に固執する勢力に囲まれ、今まで孤立していた熊本県知事の潮谷知事は、新しい流れの出現に大喜びだと思います。
 そして、来春は人吉市長選挙です。

 今までのところ、ダム反対を訴えて市議、会社役員、県議を辞めた人が立候補を表明しました。
当然、ダム推進のごりごりの地域ボスである現職も立候補予定です。
 脱ダムは世の流れ と長野県では候補者全員がそのように表明しました。
 人吉市という閉鎖された球磨郡でも、世の趨勢はダム反対となりつつあります。
 このような民意の変化にもかかわらず、国はダムに固執しています。
 「収用委員会」での漁業権の審理は相変わらず続き、ぼろぼろとその手続きのいいかげんさが噴出してきています。
 また、微妙なバランスの上にたちつつも、「住民討論集会」は継続しています。
 シーソーのような、そんな雰囲気を漂わせながら、綱引きが続く熊本です。

 でも、球磨川流域のダム推進の一枚岩がダム反対の「八代市長」誕生で壊れ、
 県知事はダム推進をいまだ表明せず、かつ県庁所在地で「ダム反対派の支持する幸山氏」の当選という熊本の変化を目のあたりにした旧態依然とした人々、公共工事で経済の活性化を、ダム推進で地域おこしをといまだ言い続ける人々にとっては、薄ら寒い冬になるでしょう。

(きゃっきゃっ と言う気分です。)  お元気で。

15 nobember(fri)
1 overtone peacock moon

 今日からマヤ歴では倍音の月にはいった。
 シンボルは孔雀。
 テーマは「自分自身に最高の権限を与えるには?」
 キーワードは「輝き」「授ける」「命じる」
 「やりたいという欲求に正直に、計画を推し進めるとき。必要な情報、物、協力者を手元に集め、自分の決めたことに責任を持ち、自分の意志で計画を実行していく」
 「自分自身に最高の権限を与える」なんていうと、勘違いする政治家とかいそうだが、そうじゃない。「自分のやりたいことを気合い入れてやんなさい」ってな月のようだ。

  10月31日の日記で、東京にできた「アイソレーション・タンク」を紹介したが、くわしい情報を載せたホームページができたので、読んでみて。
 具体的になにをするかというと、裸でタンクの中の塩水に1時間よこたわる。
 人間の脳は日常、外的刺激によって反応する。じゃあ五感の感覚からアイソレート(孤立)した状態では、脳はどうなるの? って疑問からアメリカの神経生理学者ジョン・C.リリィはこのタンクをつくる。
 そう、五感の感覚が最小限に減少したとき、
 脳は内側にむかうのだ!
 ドラッグなどを使わず、自然に無意識層へ降りていける。
 1回じゃ無理だろうけど、回を重ねるごとにより深い無意識に降りていけるはずだ。
 1回5000円で、おまけに美肌やリラックス効果もあるという。
 
早くも5回目を終えたコラムニストの伊藤竜太さんから今日、すごいトリップ体験が送られてきたので紹介しよう。

 3回目からまったく違和感がなくなってリラックス万全になったが、5回目となる今回はいよいよ念願のトリップ体験! 
 最初から静止せずに、進む感触!
 下半身の方がゆらゆらぶるぶると揺れる。
何らかのエネルギーが起きているのは間違いない。
 考え事をしながらウトウトしていると、しばらくしてビクッとして目を醒ます。
 不思議なことに、ウトウトしたりビクッとしたりしながらも、思考は中断することなく継続している。眠る体と意識が完全に分離している!
 その状態がしばらく続いた後、突然耳の中にビリッという電気ノイズが走り、再び目を醒ます。
 目の前に防具を着けた剣士が蹲踞の姿勢で竹刀を構えている。剣士と自分と向き合ったまま、静かに、沈黙の時が過ぎる。
 やがて剣士が消え、目が・・・いや、至近距離に顔が見える。
 獣や梟の目をした猿人、弥生人など、ずいぶんと昔の人たちばかりがよってたかって私の顔を覗きこんでいる。
 成仏できないでいる死者たちかと思って心の中で経を唱えると、顔たちは遠ざかる。だが、また新しい顔が次から次へと目の前に現れて私の目を覗き込む・・・
 顔たちが消えて行くと、「違う世界に来たんだ」という実感が湧いてきた・・・
 気付くと、黄色い花畑の上に浮いている!
 そして頭の方向に進みながらどんどん上昇する。
 青い空が見える・・・空を飛んでいるんだ。
 何と自然で、穏やかな気分だろう!
 空を、上へ上へと上がって行く。
 ・・・・・・。
 もう、宇宙だ。
 ・・・地球が遠くに見える。
 宇宙空間は、とても静かだ。
 (終了時間を知らせる音楽が聴こえて来る)
 宇宙空間に、日本語の歌が聴こえて来る・・・懐かしい。
 さあ、出なければ。
 でも、まだ地上に着かない。
 体がまったく動かない。
 だんだんと下界に降りて行く、ゆっくりと。
 でも、まだ動けない。
 曲が終わりそうなので、無理矢理に首を上げると、髪の毛から雫が垂れる。腕に力が入らず、相当な努力をして漸くのことで上半身を起こす。
 出口を探るが、遠くて、遠くて、進んでも進んでもたどり着かない。
 いったい自分はどこにいるんだろう?
 やっと出口を見出して扉を開けて立とうとするが、足に力が入らず、ひざがガクガクして、掴りながら辛うじて立ち上がる。
 ああ、無事に還って来れた!
 幽体離脱でもしていたのだろうか?


 すごいリアルでしょ。
 明日は三田村美土里家で素樹文生やランディさんたちと飲み会だ。ランディさんも今月中にやるといっているし、オレもいてもたってもいらんない。

 「アイソレーションタンク」の今年いっぱいのお試し料金はこうなってます。
 月〜金の11:00〜17:00

 1時間5000円。
 19:00〜23:00
 1時間7000円。
 
23:00以降
 1時間10000円。
 土日と休日
 14:00〜23;00
 1時間10000円。
 完全予約制で電話受付時間は11:00〜17:00。
 03−3446−4707
 ホームページ http://www.deepself.net/index.html
 メール deepself@axel.ocn.ne.jp
 〒108−0072
 東京港区白金1−25−1 ecco
 地下鉄南北線、三田線、「白金高輪駅」
 渋谷からバスで10分くらい。

17nobember(sun)
3 overtone peacock moon

 昨日は現代アート界でもっとも活躍してる三田村美土里の家で飲み会をやった。
 なんといっても話題は素樹文生の新しい彼女ラブ・サイケデリ子だ。バリバリ若いのに、畑を耕し、環境問題に燃えている。素樹いわく、オレと同じ縄文人だという。騎馬民族の素樹をそっちのけで、川口農法や地球環境について語り合った。
 ゲロリスト・ミッシェルも吐かなかったし、年末にアマゾンのサントダイミー教会にいこうとしたが、チケットが取れずベトナムに変更した。
 ランディさんから夜になって電話があった。昼間バーゲンに奔走し、疲労困憊で参加を断念するという。買い物袋を抱えて走りまわる姿がありありと想像できて爆笑した。
 チベタンみゆきは祖師ケ谷大蔵の駅まできたのに、オレが美土里家の電話番号を教えるのを忘れていて、帰った。本当に申し訳ない。こういうとき「反携帯電話主義者」の自分を深く反省する。
 今日トッシーと秋葉原で2度はぐれたときも携帯のおかげで助かった。
 やっぱ携帯もつべきなのかな?
 いやいや、ただでさえ電話の多いオレがもったら、伊藤晴雨みたいな悶絶縄地獄になる。
 「電話は暴力」だからね。
 メールは「謙譲の美徳」かも。
 今から、来年の2月におこなわれるトトチョフ一回忌のはがきをつくる。

18 nobember(mon)
4 overtone peacock moon

 友人から「幸福のメール」というのが送られてきた。
 怪しんであけてみたら、日常的な勘違いギャグの集大成。大手企業でこのメールが回覧され、仕事中に爆笑していたという。
 冷凍イカで頭を冷やしていたお母さんや、カルボナーラをボラギノールにまちがえたり、水戸黄門は鎖国時代に「ヤッホー!」や「ファイト!」という異国語を使ってたり、オレの「子宮外妊娠」からの盗作じゃないかってのまである。
 無意識ギャグほど恐ろしいもんはない。
 チェーンメールはいやなので、いっきにおバカページにいってちょうだい。
 http://home.kimo.com.tw/pgljmsk/ml.html

19 nobember(tue)
5 overtone peacock moon

 ついにネアリカの3作目「蝶のカムイ」が完成した。
 東京から4回目のみちさん、3回目の文ちゃん、やじろべえさん、ジュンジュン、日光からタケちゃん、ヤスコちゃんがボランティアに来てくれたのに毛糸がなくなった!
 タケちゃんの車で宇都宮へすっ飛ばし、ハマナカボニー466(バックの濃い紫)をゲットし、とんぼ返り。
 今日の完成はあわや絶望! と思われたが、ラストスパートにより完成……直前に矢口明子さんから電話があった。
「もう完成した?」
「もうちょっとです」
「ああ間に合ってよかった。あたし今日ガンを宣告されたの。12月のはじめに手術するので成功をネアリカで祈って欲しいの」
 びっくらした。あんなに元気な明子さんが肺ガンとは。ネアリカにも3度も参加してくれているし、蝶の羽にある銀河は明子さんの制作してくれたものだ。
 オレたちは明子さんの手術の成功と健康回復を祈りながらひとりひとり交代で最後の毛糸を貼った。ダイヤモンドカットされたガラスの星を背景に貼り、カムイノミをした。
「アペフチカムイ(火の祖母神)よ、蝶のカムイに伝えてください。ネアリカンの仲間、明子さんを守ってくださるよう。カムイ・ピリア・チコ・プンキネ・イエ・カル・カンナ(美しい神にむかって、わたしたちは心から祈ります)」

21 nobember(thu)
7 overtone peacock moon

 いきなりガンを宣告されたら、君ならどうする?
 オレは絶対パニクるね。
 「先生、ウソでしょ、ウソと言ってください」と袖がちぎれるまで白衣にすがり、レントゲン写真は紙飛行機に折って窓から飛ばしてしまう。押さえつけようとする看護婦のスカートをめくり、うしろから投げられるメスの雨をかいくぐりながら「ここの医者はヤブーだぞー!」と病院じゅうを叫びまわる。ついでに正面玄関の自動ドアにスプレーで「おたんちん」と書いて、100軒くらいちがう病院をあたるね。
 100軒ともガンと言われたら、残された日々をどう生きるか?
 「どうせ死ぬんだからやけっぱちだ。今までできなかったことをやったる」と強姦魔になってもしょうがないし、サンシャイン60から飛び降りる覚悟でソッと痴漢をするのも情けない。豪勢な料理を食ってもすぐあきちゃうだろうし、世界一周旅行もほとんど行っちゃってる。
 オレがいちばんやりたいことってなんだ?
 う〜ん、文章書いて、ネアリカ貼って、玄米食って、酒飲んで寝る。
 あれ、これじゃいつもとおんなじじゃねえか。
 シロップ16gの「クーデター」というアルバムに「ハピネス」という曲がある。
 
 だけどたまに思うんだよ
 これは永遠じゃないんだって
 誰かの手にまた
 この命返すんだ

 ねえ、そんな普通を
 みんな耐えてるんだ
 ねえ、そんな苦痛を
 みんな耐えてるんだ

 いっしょにアイヌモシリ一万年祭にいった沖縄の在るさんは乳がんを宣告されても手術を拒否し、「天命をまっとうする」って子どものような笑顔で人を癒しつづけている。
 トトチョフ(父)はぽっくり心臓麻痺だったかたらまだましだけど、ババチョフ(母)は胃ガン、脳ガン、肺ガンと、3回もガンを宣告された。自分の死期が近づいてるのを知りながらも、英語を教えろと、付添のオレに毎日レッスンをせがんだ。
 「退院したらモルジブへいってレッスンの成果を試すわ。あの世へ行っても外人の霊と話せるでしょ」と笑っていた。
 ババチョフも「そんな普通」を笑顔で耐えていたんだな。
 矢口明子さんは、オレとそう年は変わらないが、成人した息子がいる。ネアリカで明子さんの健康回復を祈った翌日きたメールに驚き涙してしまった。彼女から許可を得て、メールの一部を転載させてもらう。

 昨日は手術成功のお祈りをささげてくださってありがとう。
 ボランティアの皆さんにも心から感謝です。皆さんありがとう。
 手術が決まった昨日が、ちょうどネアリカの完成の日で
 完成前に電話がつながったというのはスゴイ。恐るべしネアリカパワー。
 ちょうちょの神様が「毛糸不足?」にして待っててくれたのかな?なんて
 「虫」のいい解釈をする私です。
 先日、腫瘍が悪性である可能性8割とわかった日に
 生まれて今日までの人生をずっと振り返って見ました。
 すると突然体の中から幸せ感がどんどん湧き上がってきて
 ・・・ああ、なんて幸せな人生だっただろうという気持ちに体中が満たされました。
 今この瞬間に死を迎えたにしても何の後悔もないなあと思った。
 そうしたら生も死も不安も喜びも何もかも吹っ切れてしまいました。


 この言葉に、逆に勇気をもらったのはオレたちのほうだ。
 明子さんがいなければ、「太陽のカムイ」も「蝶のカムイ」もできなかった。(明子さんへの励ましのメールはここへ送ってくれれば本人に転送します)

23 nobember(sat)
9
overtone peacock moon

 今日のネアリカンは、もう8回目のゴッドハンドとっちゃん、ネアリカ最大の武器であるグラデーションを発明したミユキちゃん、初参加のユウコちゃん、なんと大阪から夜行バスでやってきたキヨミちゃんの4人だ。
 今日も完成した「蝶のカムイ」のバックにガラスの星を貼る。明子さんの手術の成功と回復を祈ってカムイノミをした。

 さてさて、新作は「牛のカムイ」だ。
 牛の顔が子宮になっていて、飛び散った乳が乳海を撹拌する。
 回転するオッパイ星、
 天の母なる地球にむかって転生していく魂たち、
 もしくは卵子にむかって泳いでいく精子たち。
 フレームはXとYの染色体が23対づつある。


 サッシ職人とっちゃんは、いつものようにフレーム。
 ミユキちゃんは、オッパイ星に「美和メソッド」に挑戦し、
 ユウコちゃんは、転生する魂、
 キヨミちゃんは、乳海撹拌を貼ってくれた。
 キヨミちゃんは子どものころから左手が不自由だった。オレも片手で貼ってみたがすっごいむずかしい。
 オレは左利きなので、郵便局などで書類とか書いていると、「器用ですねえ」とか言われたりする。いちおう書道家の肩書きもあるんですけど(スカトロ書道だけど)。ハサミとか使うと、「左でハサミが切れるんですか」とかね。生まれたときから左手でやっているんでまったく不自由を感じない。そういうもんなんだろうな。
 キヨミちゃんはなんなくすいすいと貼っていく。ハンデなどまったくないし、つーか、オレよりぜんぜんきれいじゃん!
 世間がかってに平均値を決めるから、それ以外の「個性」を「障害」などと呼ぶのだ。
 「障害」なんて、本当はこの世に存在しない。

24 nobember(sun)
10
overtone peacock moon

 キヨミちゃんとミユキちゃんが合宿したので、オレは書斎の寝袋で寝た。「COTTON100%」に登場する雪に埋もれても凍死しない20年ものだ。
 朝起きたら、ニワトリになっていた。
 穴から漏れ出だしたダウンが体中にはりつき、家中に羽毛が舞った。
 今日のネアリカンは、さきほどの2人にくわえ、3回目の瑞穂ちゃん、造形大出身の亜季子ちゃん、(ネアリカンのアキコは4人目)、インド放浪の亜子ちゃん(あわや5人目のアキコ、セーフ)だ。
 キヨミちゃんは右手でみごとな乳の海を完成させた。
 ミユキちゃんも毛糸を細かく切って点描する「印象派メソッド」を発明しオッパイ惑星をつくった。
 瑞穂ちゃんは「美和メソッド」に挑戦し、中心の地球を誕生させた。
 亜季子ちゃんと亜子ちゃんは牛のまわり右側のグラデーションをやってもらったが、初参加とは思えない凄腕だ。正確で美しいグラデーションは、昨日オレが貼った左側より数倍うまかった。オレはもう31回もセッションに参加しているのに、初心者に負けてしまうとは、脳に問題があるとしか思えない。
 亜季子ちゃんは、なんと2年前のアイヌモシリ一万年祭でオレといっしょに写ってる写真をもってきてくれた。今日初対面の瑞穂ちゃんと亜子ちゃんもレイブのパーティーで出会っていたという。
 縁とは奇なり。
 ネアリカンは前世で、砂曼陀羅や洞窟で壁画を描いていたとか、漁師鍋を囲んでいたとか、温泉に傷を癒しに来る猿だったかもしれん。
 温泉の送迎バスが満員で、15分ほどあとに臨時のバスをだしてくれた。今夜の夜行バスで大阪に帰るキヨミちゃんは、男湯と女湯に別れる通路でオレとさよならし、たった10分の露天風呂を楽しみ、「フルマン」で(この場合フルチンとは呼ばないだろう)女性ボランティアと握手をかわし、先に帰っていった。
 学園祭の合宿のように楽しい日々だったという。

25 nobember(mon)
11
overtone peacock moon

 写真家の川内倫子さん「広告」(11月号)という雑誌を送ってくれた。
 宇宙特集で、地球の「広告」を宇宙にむけて発信するというコーナーに、横尾忠則さんなど4人のクリエーターとならんで倫子さんの写真がのっている。植え込みのクモの巣におりた朝露が銀河のように輝いているすばらしい作品だ。
 う〜む、どっかで見たような気もするんだが。倫子さんの手紙をみてびっくらした。
 こ、これってうちの目の前の植え込みじゃん!
 そういえば、倫子さんがランディさんたちとうちへ来たとき、この植え込み撮ってたよ。オレがよく立ちションする植え込みが、地球の広告になるなんて!
 植え込み先生、どうかお許しください。もう2度とションベンはかけません。
 とか謝っていたら、いきなり黒いてんとう虫がしゃしゃりでてパソコンの画面にはりついた。寒いので窓は全部閉め切っているし、冬の夜中にてんとう虫とは。羽の形もダーズベーダーみたいだし、もしかするとこのお方は地球の広告を見て訪れた宇宙の使者やもしれん。
 そういえば倫子さんの写真集「花火」の最後にはUFOが写ってた。
 いつのまにかダーズベーダー様もいなくなったし、話をもどそう。リトルモアからでている写真集3部作「うたたね」「花火」「花子」は超おすすめ。写真集コーナーがある本屋なら必ずおいてあるので、まずは「うたたね」を手にとって。
 さりげない日常から切り取られた写真が、なぜこんなにも愛しく胸を打つのかびっくりするよ。それは老婆の手であったり、女の子の口の中であったり、ハトの死であったりする。このようにあまねく世界を抱きしめられる視線を人間が持ちうること。曇った眼球が洗われ、新鮮な驚きをもって君をとりまく世界が立ち現れてくる。
 倫子さんの写真は、メガネドラッグのまえにおいてある洗浄器というか、ジョンソン・ガラスクリーナー・クルーというか、韓国垢すりエステというか、森羅万象に宿るカムイを見通す母神の視線だ。
 オレも日常のくりかえしに目が曇ってくると、倫子さんの写真集をひっぱりだして脳を洗濯する。ランディさんなんか「あたし、この1枚1枚の写真に1個づつ短編が書けるわ」と絶賛していたし、倫子さんはカラオケでCOCCOも歌える(関係ねえか
)。
 倫子さんの視線はこう語りかけてくる。

 すべては、在っていいんだ。
 この世に、在っていいんだと。

 植え込みの写真は、我が家の家宝としよう。
 ページを開いてアマチュアカメラマンだったトトチョフの仏壇に捧げた。

26 nobember(tue)
12
overtone peacock moon

 今日のネアリカンは、4回目の三智がきてくれた。
 ネアリカは人を旅立たせる効果があるようだ。
 ペルーやアマゾン、インドなどを旅してきた三智は、チベットに魅かれているという。来年の2月に指圧師の仕事を辞め、東京のアパートを引き払い、数ヶ月にわたる旅に出る。
 旅ほど人を成長させてくれるものはない。
 オレは人生のすべてを、創作の根源を、旅から学んだ。
 顕微鏡と望遠鏡をいっしょにのぞいてごらん。
 オレたちの体をつくる炭素原子やリン原子で宇宙もできている。
 オレたちは宇宙を旅する永遠の旅人なんだ。
 安定した生活をなげうっても、「ええじゃないか」。
 確実に死は自分にも訪れることを知っている。
 つぎに生まれ変わるときは、もう今の世界はない。
 べつに人類が滅亡するって意味じゃなく、世界は刻一刻と変化している。
 今この時代に、この世界に、生まれ落ちた奇跡を見とどけたい。
 今この肉体で、この意識で、知覚できるすべてを知りたいんだ。
 これって、悪魔のささやき?

28 nobember(thu)
14
overtone peacock moon

 今日のネアリカンは、愛知から新幹線できたみちちょふ、東京から2回目のまゆちゃん、初登場の玄ちゃん。
 みちちょふは昨日10時間も貼ってくれた。オレも負けじと貼っていたので、日記が書けなかった。
 玄ちゃんは1週間前に「アジアントランス」を読んで熱くなり、ネットでオレのホームページを見つけ、さっそく駆けつけた。
 映像作家を目指す25歳、大阪出身だが、現在は高円寺に住んでいる。まるで「裸の大将」山下清を思わせる朴訥な魅力がある。
 ネアリカ初挑戦のみちちょふも玄ちゃんも、むっちゃうまい!
 全員が「温泉拒否」。
 お、鬼だ。こいつらは「毛糸の鬼だ」(ちょっと迫力ない表現だなあ)。
 6時の電車でまゆちゃんが帰った(アップした写真は6時の時点)あとも、無言のまま貼りつづける。この2時間でまたすげえ進んだ。
 前作を越える驚異的スピードだ。
 いつもはバックが残るのだが、今回はバックから完成しそうだ。
 今日はBGMもかけわすれるほど、ネアリカ・トランスにはまった。
 ネアリカ効果とはいったいなんなんだ? ちょっと分析してみよう。

 1 トランス・ミュージックのような規則的作業のエクスタシー。
 2 自分の行為が目に見えて形になっていく達成感。
 3 なにか神聖な儀式にでも参加しているようなトランスパーソナル(自我を越える)効果。
 4 毛糸の肌ざわりが、ぬいぐるみみたい。(自分が貼り終えた場所にほおずりしたくなる)
 5 おまけの飯が美味い。(今日は韓国味噌鍋スキヤキ)

 などなど、さまざまな要因がからみ、ボランティアの応募は増えつづけている。信じらんない話だが、フランスや韓国の留学生からの応募さえある。
 この先どこまで広がるんだよ、おい。

29 nobember(fri)
15
overtone peacock moon

 今日も午前中からみちちょふと昼飯も食わず4時まで貼りつづけた。
 やはり関西勢は気合いがすごい。みちちょふは3日間家から一歩も出ずにネアリカ三昧。なんだかオレも煽られて、飯づくり以外はずっと貼りつづけた。
 奇跡だ。
 「牛のカムイ」をはじめてたった1週間なのに、早くもバックが終ってしまったのだ。
 今回のバックは白なので、ウェブでは貼り残しのキャンバス地と見分けがつかないが、白い毛糸で埋まっている。
 みちちょふは8時の新幹線で愛知へ帰っていった。
 土曜日から7日間中6日間連続のネアリカマラソンは終り、明後日からまた3日連続ある。
 ボランティアがどんどん集まってくれるせいか、今まで1作を完成するのに1カ月かかってたのが、2週間もかからずに終わりそうだ。
 駄菓子菓子(=だがしかし。作ミッシェル)
 
腰が痛いぜベエベー。

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