下にいくほど新しくなっています

1 december(sun)
17 overtone peacock moon

 従弟のトッシーにマックのG4をもらった。
 買ったら数十万のすごい代物だ。
 10年ほど前からマックを使っているが、1回も自分で買ったことがない。
 1代目のパワーブックは、白水社の編集者だった後藤ちゃんから。
 2代目のデスクトップは、今ニューヨークのレストランでシェフを務める工藤から。
 3代目のiBookはめるくまーるの営業部長太田さんから。
 4代目である。
 トッシーが来てセッティングしてくれた。
 画面もiBookの12インチから17インチへ。色も数段上だし、見やすい、見やすい。とくに縦書きの文章では最高に使い勝手がいい。今まで画面におさまらない縦書き文章を移動しながら
、よく6冊も書いていたもんだ。

 今日のネアリカンは、2回目のジュンジュンと初参加のオオタケアヤちゃん。
 ジュンジュンのパフォーマンスビデオを見せてもらった。ローリーポーリー(赤ちゃん用のセルロイドおきあがりこぼし)でガムランみたいな音を奏でながら歌う詩は、あやうくて胸に染み入る。
 アヤちゃんは、中学生のころから灰野敬二やゆらゆら帝国やマリア観音や暴力温泉芸者のライブにかよっていた猛者だ。90年代の東京アンダーグラウンドの活気を知り尽くしている。
 高円寺にある高校を選んだのも「ライブに通いやすい」という理由からだった。しかしライブハウスへの出入り禁止の校則によってめでたく退学となり、節モード学院を卒業して、雑貨屋で働き、最近ホームページを(センスあるなあ。コケコケ日記もおもしれえしな)アップした。
 ううむ、すごい。
 ライブハウスへいったくらいで退学させる高校もすごいが、時代の先端にあるものをかぎ分けるアヤちゃんのセンスがすごいのだ。
 ゆらゆら帝国も今や第一線のバンドだし、暴力温泉芸者の中原昌也も小説で三島賞をとった。
 8年くらいまえにオレは坂本君と会い、ゆらゆら帝国の歌をモチーフにした美術展をやろうとDESに提案したが実現しなかった。
 中原君はpaper backでエッセイを書いている。(かなり生活苦に悩んでいる)
 今、アンダーグラウンドシーンはどうなっているのだろう?
 一見下火にも思えるが、そんなときこそ新しい才能が育っているのだと思う。
 それは君かもしれない。
 芸術論や自己懐疑に悩んでるひまはない。
 行動せよ。

2 december(mon)
18 overtone peacock moon

 ネアリカンの執念には、頭が下がる。
 ジュンジュンは朝から夕方6時の電車まで貼りつづけ、みごとな世界地図を完成させた。
 1本の毛糸を3本にほどき、べつの色とより合わせてオリジナルの色をつくるという発明までやってのけた。
 ジュンジュンの背景に燃え上がる不動明王の姿が見えたね。
 オレも子宮牛を完成させ、残るはフレームのみ。
 けっこう今回のフレームは細かいんで、かなり時間がかかるはず。
 明日のネアリカンは三智さんと文ちゃんだ。
 「完成11日間」という大記録が生まれるのか!?
 オレはけっこうふらふらだけど、なんとか明日完成させて、あさって新宿リキッドルームであるシロップ16gのライブにのぞみたい。

3 december(tue)
19 overtone peacock moon

 残念ながら完成は次回の6日か、7日に見送られた。
 フレームの「染色体」が意外に細かく、すき間を埋めるのに時間がかかる。
 まあ、ネアリカはスピードより、スピリットだから。(ちょっと名言だな)
 今日のネアリカンは、5回目の三智と4回目の文ちゃんだ。
 三智の出身地与論島では、よくUFOが目撃されるという。
 80年代初頭、三智の叔父さんが漁港にいるとき、上空20メートルに巨大な円盤が出現した。漁師など20人がサバニ(沖縄の伝統的なカヌー、当時の漁船はまだサバニが多かった)の陰に隠れる。円盤のディティールまではっきり見え、漁港に影ができたというところがリアルだ。 その日以来目撃者のひとりが宇宙人に取り憑かれた。
 島でも有名なUFOおじさんで、彼が経営するバーはUFOグッズであふれている。なかでも手作りランプはアルマイト洗面器をひっくり返した傘でできている。
 UFOおじさんは「わたしは毎日宇宙人と交信してる」と豪語する。
 いったいどうやって宇宙人と交信するのだろう?
 NASAはSETI計画で8000000チャンネルのコンピューターやインターネットをつかって宇宙からの電波を分析しているが、いまだに宇宙人との交信は成し遂げられていない。
 ある人がどうしてもその光景を見たくなって、のぞきにいった。
 すると、UFOおじさんは自宅の裏庭にでて、懐中電灯を大まじめに振り回していたという。

 今日のネアリカを終え、送迎バスで温泉にいくとちゅう、いきなり運転手がブレーキを踏んだ。
「あの光はなんだ!」
 道路なんぞあるわけない山奥に4つほどの光がならんで、ゆっくりと右へ移動している。
 鹿撃ちのハンターが夜にあんな山中をさまよっているわけないし、狩猟は日の出から日没までと定められているので、道路から丸見えの山で密猟するはずない。遭難者だって夜間の移動はしないだろう。
 UFOの目撃話は、磁場異常による側頭葉の幻覚と説明されているが、ネアリカをはじめてからいろんなシンクロがむっちゃ多いので、ついついUFOだと信じたくなる。
 いそいで最上階の露天風呂からのぞくと、まだいたのよ、例のやつが。
 文ちゃんもいっしょに目撃した。
 フルチンでUFOを見る。
 「宇宙人と裸のおつきあい」だ。
 さ、寒い。
 我にかえると、睾丸が右脳と左脳のように縮こまっていた。
 露天風呂につかってから、ふたたび見わたしたとき、もう光はなくなっていた。その間わずか3分。
 う〜む、UFOが一瞬で飛び去ったのか、誰かが懐中電灯を消したのかは、謎だ。
 べつにあの光が、密猟者でも、遭難者でも、真実はどうでもいい。
 オレは絶対「UFO」だと思い込んじゃうもんね。
 君もネアリカに参加すれば、「UFOの見える露天風呂」へいけるぞ。

 消えないで
 照れないで
 宇宙の中へ
 (シロップ16g。「水色の風」より)

 ああ、明日はガッちゃん(五十嵐隆)の歌を生で聴けると思うと、
 高校生みたいにドキドキする。

5 december(thu)
21 overtone peacock moon

 きのうはむっちゃ濃い一日だった。
 日光を朝9時にでて、11時に浅草に到着。
 浅草での楽しみは、絶品回転寿司「まぐろ人」だ。フジテレビの「スーパー特報」で一万人が選ぶ東京の回転寿司ベスト20の1位に輝いたおかげで、15分くらい長蛇の列にならばなければならない。そこで「まぐろ人」が最近出した店舗「立ち食い寿司」へはじめてはいった。
 本店は、東武浅草駅から歩いて3分だが、こちらは1分。3皿目から一かんずつ注文できるので、時間がなく、ひとりのときは、だんぜんこっちがいい。
 6人ほどでいっぱいになってしまうカウンターにたつと、おくに5人ほどの人が中国語で会話していた。カメラと音声と照明の機材をもっている。
 カウンターの中から本店の寿司職人がはなしかけてきた。
「すいません、香港のテレビ局の取材がはいっていますが、お客さんは映さない約束なので、気にせず注文してください」
 ディレクターがオレを見て、通訳になにか言った。通訳がちょっとつたない日本語ではなしかけてくる。
「すいません、わたしたち若者向けの番組です。あなたカッコイイので、エキストラで映してもいいですか?」
 オレはいやだった。
「ディレクターが寿司のお金は全部払うと言ってます」
 ええっ、すげえラッキー!
 喜びの表情を必死で隠して無表情に言った。
「No problem」(いいよ)
 外で待機していた香港アイドルの男女がはいってきて、大げさに美味い美味いと中トロや生ホタテをほおばる。
 2回NGがでたのをいいことに、オレはつぎつぎと高いものばかり注文しまくる。
 香港に住む友だちもけっこういるし、やつらがこの番組を見たら、大笑いするだろう。
 アイドルたちの背景で、ドレッドと派手なアクリルシャツ、ワインレッドのコーデュロイのベルボトムをはいたオレが、伝統的な寿司を必死で食いまくっている。
 やっぱ、貧乏性はぬけねえな。

 午後1時15分から下高井戸で「ガイアシンフォニー4番」を観た。
 ランディさんの家で断片のヴィデオは見ていたものの、やっぱ映画館で観ないとね。
 「ガイア仮説」の生みの親ジェームス・ラブロックの陽気さや、「頭だけで考えていたんじゃだめ。手で形にしていかなくちゃ」という言葉。
 サーフィンの神様、ジェリー・ロペスは毎日8時間も海にはいって波をまつが、波に乗るのは数十分しかないという。「待つこと」に対する忍耐と瞑想の奥深さ。
 20代から40年以上もアフリカの森でチンパンジーの観察をつづけた白人女性ジェーン・グードルの、異種や異文化を「敬う力」。
 沖縄の版画家、ぼくねんさんの情熱と開かれた心には胸を打たれた。
 監督の龍村さんはほんとすごい作品を残してくれた。
 オレたちはハリウッド映画観て、涙して、ご満悦、って忘れるけど、
 この人は本当の「感動」の正体を知っている。
 それは「意識の変容」だ。
 「ガイアシンフォニー」の映画館をでたあとは、見慣れた世界がとてもキラキラして見える。

 夜7時から新宿リキッドルームで「シロップ16g」のライブを見る。
 いまだにガッちゃん(五十嵐隆)の轟音ギターが三半規管の底で響いてるけど、ライブはCDとべつもんだわさ。
 くずれてる、でもすごい。
 だからこそ、すごい。
 2回のアンコールもふくめて、2時間ほとんどMCなしの歌いまくり。20曲以上やったのはたしか。
 せっかく「ガイアシンフォニー」で世界を肯定する気分になったのに、ガッちゃんの詩は世界を全否定する。

 君に存在価値はあるか
 そしてその根拠とはなんだ
 涙流してりゃ悲しいか
 心なんて一生不安さ
 (「生活」より)

 本気出さないままで終了です
 後はほうきで掃いて捨てる
 それをどうして悲しいという
 信じたくないけれど本当です
 君の心の価値は薄い
 それをどうして悲しいという
 (「無効の日」より)

 進化 調和
 友好 繁栄
 ああそう HALLO
 あんた 嫌い
 (「神のカルマ」より)


 君は死んだほうがいい
 外の世界はどんな風
 後悔や四季や
 あと流星のキラめく世界
 (「デイパス」より)

 なんか、太宰治も真っ青だろう?
 思わず最後のアンケート用紙に「死なないで」とか書いちゃったよ。
 オレたちは全員と言っていいくらい思春期に「クライシス」をくぐる。「精神的危機」ってやつだ。それまでは自分を中心に世界がまわってた。ある日突然、コペルニクスが言う。
「おまえはその他大勢のひとつにしかすぎない」

 もしも僕が犬に生まれたなら
 それでもう負け
 今度僕が犬に生まれたなら
 君に飼われてもいい
 それとも保健所で死ぬ

 明日なんていう日を
 決めるのはそう
 いつだって今日でも
 国家予算内で死ぬの
 (「負け犬」より)


 三島由紀夫は、天敵の太宰治を「あいつの落ち込みなんか、アスレチックジムにつれていけばすぐ消し飛ぶ」みたいな発言をしていたが、人は落ち込みたいとき、どっぷりそれにはまりたいのよ。
 だって不幸ほど居心地のいい場所はない。
 この曲を聴きながらまえの女の子がずっと涙をぬぐっていた。

 つらいことばかりで
 心も枯れて
 あきらめるのにも慣れて
 したいこともなくて
 する気もないなら
 無理して生きてることもない
 明日を落としても
 誰も拾ってくれないよ
 それでいいよ

 機械みたいな声で
 サヨナラされて
 それでも何か傷ついて
 誰も愛せなくて
 愛されないなら
 無理して生きてることもない

 そう言って
 うまくすり抜けて
 そう言って
 うまくごまかして
 そう言って
 楽になれること
 そう言って
 いつのまにか気づいていた
 (「明日を落としても」)

 いっしょうけんめい悩んでいるから、笑えるのだ。

 あなたどなた
 明日どうなった
 体の中
 白血球なかった
 薬切れた
 看護婦さんどこだ
 頭の中
 発狂寸前だ

 三遊間越えた
 親友が肥えた
 不完全燃焼な
 フランケンシュタイナー
 預金通帳たまった
 タランティーノじゃなかった
 全人類兄弟
 けんちん汁ちょうだい
 (「バリで死す」より)

 あまりに必死に神との(自己)問答をくり返すガッちゃんの詩を鋭く指摘するやつもいた。
 「こっれって「COTTON100%」の主人公にそっくりじゃん!」

 「いっしょうけんめい生きてるわたしに
 どんな罪があるんですか?」
 「いっぱいあるさ
 死ぬほどあるさ
 っていうか、なんでおまえはそこにいる!」
 (「手首」より)

 「おまえうるさいから、二度と生まれてくんなと神様からいわれた男、なんか騒がしいんで地上に神様が降りてみると、男が文句を言ってる。そこで神様はしかたなくさとすが、あれほど生まれ変わるなって言った男がそこにいるんで、「っていうか、なんでおまえはそこにいる!」って感じだ。毎回この歌詞に笑ってしまう。

 800人ほどはいるリキッドルームが超満員。
 まだまだ「無名」のシロップにとっては、うれしかったんだろう。ガッちゃんは終始「ありがとう」をくりかえし、盛り上がってくると左足を犬のションベンのごとくあげる。
 おお、これが伝説の「犬ション」ポーズか!
 感動した(小泉首相風)。
 観客の98%くらいは20代の女の子、男はミュージシャン風。みんなのセンシティブな波動が広がる。
 揺れる頭にはそれぞれの脳がはいってて、
 みんながみんな、主人公
 みんながみんな、いつか
 死ぬ。

 それでも、今ここでガッちゃんの声を聴いている。
 ネガティブ100%なガッちゃんがしぼりだすレモン汁みたいな0,01%のぎりぎりの希望に涙がでた。

 昨日より今日がすばらしい日なんて
 わかってる
 そんなこと
 あたりまえのことさ
 (「Reborn」より)

 「肺ガン」という贈り物をもらったネアリカンの矢口明子さんの手術日も今週中には決定するだろう。

6 december(fri)
22 overtone peacock moon

 今日のネアリカンは、明子(桜井)ちゃんと玄ちゃんだ。
 玄ちゃんは2週間ほどまえに古本屋で見つけた「アジアントランス」に感動し、ネットでオレのページを探し、いきなり先週からネアリカに参加した。数日前、同じ古本屋にいくと前までなかった「アヤワスカ!」があった。まるで神様が万引きならぬ「万置き」をしたかのように絶妙のタイミングで本が現れる。
「おんなじやつが売りにきただけなんじゃねえの?」とオレは言ったが、ネアリカンの山下清、玄ちゃんは燃えている。
「金ためて絶対アマゾンにいきますよ。サントダイミー教会の儀式に参加するんです!」
 熱いぜ、玄ちゃん! いい感じ。
 明子ちゃんも年末のカンボジア行きをペルーに変えようかなと迷いはじめてるし。
 ふたりは今日の完成を夢見て必死に貼りつづけるが、オレはまたもや重大な過失に気づいてしまった。
 ない!
 467番の毛糸がなくなってしまったのだ。
 日光の手芸店に取り寄せてもらったつもりでいたのに、前回につづいてオレの大失策であった。
 生クリーム仕立ての明太子スパゲッティーとアボカドのグアカモリサルサで失点をおぎなったが、写真に写ったふたりの笑顔は、どことなく淋しそう。
 ふたりは4時半に霧降温泉へ。
 オレは宇都宮の手芸店まで電車に乗る。駅からバスの本数が少なくて、歩くと往復一時間くらいかかるので、やむなくタクシーにした。
 とっておいてもらった毛糸を買いタクシーで駅までもどると、渋滞のため往復で2200円もかかってしまった。電車賃も合わせると、300円の毛糸を買うのに4000円も使ったことになる。いちばん金のない時期に痛手だが、明日は3人のボランティアが来る。
 明日こそは完成させるぞ!

7 december(sat)
23 overtone peacock moon

 「牛のカムイ」ついに完成!
 
今日のネアリカンは、9回目のとっちゃんと初参加のかよちゃん、「おっぱいプリン」のアーティスト・ミッシェルだ。
 ゴッドハンドとっちゃんはつぎのネアリカ(来週の土曜日まで秘密)のフレーム制作し、
 ミッシェルはシェフを代行し、むっちゃうまいビビンバをつくった。(他人がつくってくれた料理はうまいなあ)
 映画祭のプロデュースにかかわるかよちゃんは、感動的なフィニッシュを決めてくれた。
 完成の乾杯をし、ネアリカンの明子さんの健康をカムイノミすると、祝福の雪が降り出した。
 子宮牛から飛び散るミルクの滴のようだ。

 雪の露天風呂ほど幸せなものはない。
 湯の中の体はぽかぽかに暖まり、顔に冷たい花びらが降りそそぐ。
 眼球に雪がはりつく直前までまぶたを開き、大口開けて舌に白いシャーベットを味わう。
 週末に混雑する客がいなくなるのを待ち、植え込みの雪に大の字で倒れ込む。
 素っ裸で、雪のベッドに寝る贅沢さよ。
 これがやりたかったのよ。
 ほてった皮膚がきゅうっと引き締まり、暖寒急行のトランスがこみあげてくる。
 余韻を楽しみながら起き上がると、湯船に浮く3組の眼光に突き当たった。3人のおっちゃんがいつのまにか露天風呂にはいっていたのだ。
 前面に雪を貼り付けたヒゲ男を奇異の目でにらんでいる。
 露天風呂で雪を溶かす予定をやめ、そそくさと内風呂に逃げる。満員の内風呂の人たちとも目が合う。内風呂人たちは、さらに異界から突然はいってきた雪男に目をむいた。
 孤独な雪男が住めるのは、やはり白いキャンバスの世界なのか? 

9 december(mon)
25 overtone peacock moon

 世界がホワイトアウトした。

 まるで大地そのものを受粉させるみたいに、夜明けの空を雪が舞う。汚れた生の痕跡を慈しみながらおおっていく。雪のひとひらをつかまえて手を開くと、涙を残して消えている。美はいつもオレの手のひらをすり抜けていく。
(「アジアに落ちる」より)

 なにをかくそう、オレは「雪かき」が好きだ。
 あらゆる運動のなかで雪かきほどトリップできるものはないと豪語する。
  ごうごー、ごうごー!
 ピンクのプラスチックショベルをふるい、50センチもつもった雪をかき分けていく。ダウンジャケットを腰に結び、大汗をかいて、最後はTシャツになる。
 人々の歩く道をつくるなんて、神様みたいじゃないか。
 通りすぎる人が「ごくろうさまです」と感謝する。
 ふふふ、この勤労に励む男が、自分のトリップのためにやっているとは想像もつくまい。
 トランス状態のまま家に帰り、キャンバスに新作の下描きをする。いいぞ、いいぞ、脳が開かれているといいものが描ける。
 今度のネアリカは「梟のカムイ」だ。
 参加すれば、「賢者」になれるぞ。
 「あめゆじゃとってちてけんじゃ」

 明日はランディさんと精神科医の関口さんたちと韓国家庭料理で忘年会だ。
 ランディさんいわく「うおおおおと号泣するくらいおいしい」という。
 すごい。あのバーベキュー奉行が 「うおおおおと号泣する」んだから。オレも 「うおおおおと号泣する」ぞお。関口さんも 「うおおおおと号泣」し、文ちゃんも 「うおおおおと号泣」し、ほかの客も 「うおおおおと号泣」するなんて、すごいうるさい店なんだろう。

10 december(tue)
26 overtone peacock moon

 精神科医の関口さんと夕方宇都宮で待ち合わせたので、昼飯は宇都宮市役所前の「らーめん厨房どる屋」へいった。一夜干しの鯛からとるぜいたくなスープは、あっさりとして深い味わいがある。冬季限定の「ねぎにら新麺」と迷ったが、しょっちゅうこれないので、チャーシュー2枚のせのラーメンにした。するとマスターがミニ「ねぎにら新麺」をサービスでだしてくれたのだ!
 このあとマスターと100円ショップでバッタリ遭遇。なんとオリジナルの十味とうがらしをつめる入れ物を物色していた。また新作ラーメンに挑んでいるという。恐るべき研究熱心さは、ラーメン屋の鏡だ。

 関口さんと川崎にむかい、待ち合わせの時計台にランディさんがあらわれた。ドクロマークのスタジャンにストーンウォッシュのジーンズ。
「若いっすねえ!」
「詐欺とか言うなよ。年末はおばさんを狙うひったくりが多いんで防犯対策なの」
 コリアンタウンにある韓国家庭料理「居酒屋つくば」(044−299−5758)は噂以上にすごかった。
 「日経ビジネスアソシエ」の編集長兼ハードボイルド作家、渋谷和宏さんをむかえ、マッコリ(どぶろく)で「うおおおお!」、なまこで「うおおおお!」、ホヤで「うおおおお!」、ケジャン(カニの刺身の辛いやつ)で「うおおおお!」、レバ刺しで「うおおおお!」、ユッケで「うおおおお!」、煮込みで「うおおおお!」、最後のサムゲタン(宮廷かゆ)で「うおおおおおおお!」。
 「この店を知らずに死ぬのは、人生の大きな損失である」ってくらい極上の美味である。4人で「もうまいりました」というほど飲んで食って、ひとり3500円とは安すぎる。
  忘年会ならぬ「忘月会」を毎月ここでやりたいくらいだ。いっそ「忘週会」や「忘日会」のために川崎に引っ越すか。もう「忘時会」や「忘分会」のために「居酒屋つくば」で働くか。「忘秒
会」にエスカレートしたら、過食死だな。

 2次会は関口さんが20年かようジャズバー「FIRST」で、ネアリカンの文ちゃん、関口さんのアシスタントヤスさん、カウンセラーの卵千春ちゃんたちと合流した。
 ランディさんの「今までで何人死体を見たことがある」という質問に、オレは人生を振り返って数えてみる。
 両親、祖父母、母方の祖父母、親戚4人、友人2人、ジャンキー3人、イラン・イラク戦争5人。普通人で20人の死者を見るのはそうとう多いよなあ。
 死者は強烈なメッセージを生者に送ってくる。
 絢爛なる無、
 豊穣なる静謐、
 饒舌なる沈黙、
 生者はただ……
 耳を澄ます。

11 december(wed)
27 overtone peacock moon

 「文庫こころとからだのクリニック」で朝の5時まで飲み、昼に起きた。
  京浜急行本線の上大岡にある「中華そば いまむら」にいった。さすが関口さんが一押しの店だけあって、貞光地鶏と魚介の醤油スープはくせになる美味さだ。なんかグルメ日記になってきたなあ。
 不登校や引きこもりの親たちが主催するさまざまな会をつないだ「ヒッキーネット」の会合に参加させてもらった。「ひきこもりだった僕から」の著者、上山和樹さんの講演記録も印刷され、みんなに配られた。冊子の最後に各会の主催者が文章を寄せていて、思わず引き込まれた(さすがヒッキー)。
 ここに集まったお母さんたちは、子供たちのひきこもりを不幸と嘆かず、逆に人生を見直すチャンスだととらえている。
 冊子からちょっと引用してみる。

 息子が6歳で登校拒否をしてからの数年間、親子共々それまでの世界からはなれて二人だけの世界で生きてきました。
 そのころ起きぬけの決まり文句は、「今日はどこにいこうかなー」でした。
 近くの自然公園、図書館、遊園地、毎日ふたりだけの遠足です。
 そのころの私は、人の集まる場所でのおつきあいに疲れる自分を感じていました。
 息子の登校拒否は世間と距離をおくちょうどいい口実となりました。
 学校へ行かないことへの不安、夫、両親との葛藤、中学生、高校生の兄、姉などへの配慮など、まわりは問題だらけでしたが、息子が嬉しそうにするのを時間を忘れて眺めていたものです。
 (「みんなの会」代表)


 私がこの会で学んだことは、
1 長くかかる。ドン! とかまえて。
2 でも必ず上向きへ。希望をもって。
3 感受性豊かな素晴らしい子。誇りに思って。
4 親にとっての宝物、と相手に言葉で伝えて。
5 子どもからのメッセージはのがさずしっかり受け止めて。
6 父親にもしっかり家庭に目をむけてもらう働きかけを。
7 自分は自分の人生を楽しんで。
8 本人が自分で歩きはじめるのを見守って。
9 豊かな家族関係あっての豊かな社会関係。
 「うさぎの会」代表)

 たくましいぜ、ヒッキー'sママ!
 関口さんが買ってきた大福もちの粉を口紅にはりつけながらも、インディアン戦士のようなオーラを放っていた。(この冊子に興味ある方は、「文庫こころとからだのクリニック」まで)


 日光に帰ってくると即、ネアリカン(ネアリカ制作に参加してくれたボランティア)の矢口明子さんから電話があった。
 病院からだ。
 19日(木)にひかえる肺ガンの摘出手術のために今日入院したという。
 「ちったあ、病人らしくしろ!」と言いたくなるくらい元気、元気。
 ネアリカンたちからドドッと励ましのメールがきて、健康時の200%くらいパワーアップしてしまったそうだ。
 病院のリハビリルームで、ウォーキンマシンや筋トレやってんだもん。
 やっぱ祈りの力はすごいな。
 明子さんくらいの高性能テレパシーメール受信機は「outlook」も真っ青だぜ。
 病院では携帯のメールも禁じられているし、返事できないので、「ごめん」と言うことでした。
  同じネアリカンの亜子ちゃんがこんなメールをよこした。

 偶然にも矢口明子さんの手術日は私の誕生日です。
 命への感謝の気持ちを、明子さんの命のエネルギーへと繋がるように祈りながら、大いなる魂に捧げます。

  なんか、目に見えない糸がダイナミックにつながっていく感じの今日この頃である。
  19日(木)の手術は祭りだぜ。ネアリカンだけじゃなく、みんなで「テレパ」メールを明子さんに送っちゃえ。きっと明子さん、ウォーキンマシンで猛ダッシュしちゃうんじゃねえの。

12 december(thu)
28 overtone peacock moon

 はやくもランディさんのメルマガでおとといの忘年会がとりあげられていた。
 絶好調だね、シスター。
 あれだけ読むとわれわれが人生ばかり語り合っていたように思われてしまうが、残りのほとんどはいつものバカ話。
 激辛忘年会の裏話を紹介しよう。
 R-RANDY  A-AKIRA

R「あたしサイン会ってやったことないの。たくさんの人と握手するのも苦手だし」
A「じゃあ、握手じゃなくて、拍手にすれば?」
R「なにそれ」
A「ランディさんが椅子に座ってて、読者が一人ずつ前にでて、拍手しては去ってゆく」
R「あたしは神社か!」

R「握手ならまだいいんだけど、ハグする人も断れないだろうし」
A「じゃあ、アポロ11号とかの宇宙服を借りてくれば?」
R「地球で宇宙服着てどうする」
A「じゃあ、甲冑とか鎧がいいよ」
R「大河ドラマの原作本じゃないんだから、重くてサインできないっちゅーに」

R「こないだ退行催眠受けたんだけど、あたしの前世はイヌイットの男だったみたい。霊的な犬を譲り受けたんだけど逃げられちゃって、一生そのことを悔やんで死んでいったの」
A「ペットもいっしょに転生するらしいから、オレにおしっこかけたあの亀が、霊的な犬の生まれ変わりなんじゃない?」
R「まっさかー。テリー(亀)のわけないわよ」
A「わかった。 イヌイットの男と霊的な犬が混ざってランディさんに転生してきたから、秋田犬みたいな顔になっちゃったんだ」
R「あたしゃあ、ザ・フライか!」

※注 「ザ・フライ」という映画は、人間を分解して移動させる装置に1匹のハエが紛れ込んでいたため、ハエ男になってしまったという内容。

13 december(fri)
1 rhythmic lizard moon

 オレの使ってるマヤ暦「律動の月」に変わった。
 今月はリズムよ、リズム。
 トーテム・アニマルは、「トカゲ」
 尻尾切れても生えてくるぜえ。
 テーマは、「どうやって自分の平等を人に広げるか?」
 いっしょのリズムで揺れよう。
 キーワードは、「同等」「組織する」「バランス」
 「パワーバランス 苦労話 バラ
されてもなあ」(シロップ16g「天才」より)
 アドバイスは、「心が揺れ動くときには、まわりに耳を澄ます。相手と自分のと欲求のバランスをとる機会をつくる。お互いの同意を取り合いながら計画を調整し、実行していく」

 なかなか折り合いがつかなくてさあ。
 世の中は自分の思ったとおり流れてはくれない。
 他人は自分の思ったとおり動いてはくれない。
  「失意」は放っておくと「悪意」に成長し、自分自身や他人に牙をむく。
 どうしてオレたちは狂犬みたいな欲望を不自由な肉体に閉じこめ、健忘症な脳をもって、この世に生まれてきたんだろう?
 あの世は喜びと光に満ちた完全な世界だという先住民たちに、何度もこの質問を浴びせてみた。
 メキシコのシャーマンはこう答えた。(かいつまんで落語風に)
「あの世ではフットボールの観客にしかなれない。自分でプレーするためにこの世に生まれてくるんじゃよ」
 ときはワールドカップの真っ最中、メキシコ代表も快進撃をつづけていた。
「だって、11人の出場選手に選ばれるわけないでしょ」
「いやいや君もわたしもこの世に生まれたやつら全員があの世チームの代表じゃ。あの世で選考もれした連中はわんさかいるぞ」
「そいつらはひいきのユニフォームとか、グッズとか買ってんですか?」
「いや、そういうものは売ってはいないが、ひいき選手の応援はすごいぞ。まあ、ほとんどが身内びいきよ。過去と未来の家族を応援するのが習わしじゃ」
「未来の家族もわかるんですか?」
「わかるっちゅうか、トトカルチョみたいに選ぶんだ。来世はこの両親に賭けるって」
「け、けっこういいかげんですね」
「まあな。ギャンブルは思いこみとカンだから」
「はずれも多いでしょ」
「多いというか、ほとんどはずれじゃ」(笑)
「まわりは敵だらけだし、思わぬところでイエローカードだし、けがもするし、サポーターにも罵倒されるし、代表は損ばっかじゃないすか」
「わしなんか息子の進学費もはらえないし、後悔の連続じゃ」
「そんな、かりにもシャーマンが情けないこと言わないでくださいよ」
「いいの、いいの。わしらはいろんなもんに負けることを学ぶために、生まれてきたんだから」

 ※注 2002年ワールドカップでメキシコ代表は、予選でクロアチア に 1 -0、 エクアドルに2- 1、イタリアに1 - 1、と快進撃。決勝リーグに進出したが、歴史の宿敵アメリカ合衆国に0-2であっけなく破れる。

 メキシコ各地で暴動があったというから、みんな悟ってないじゃん。たぶんあのシャーマンも激怒したはず。直前に帰国してよかった。

14 december(sat)
2 rhythmic lizard moon

 今日のネアリカンは多いぞお。
 とっちゃんは、1番乗りで10回達成! オレの油絵作品をプレゼントさせてもらうぜ。
 「太陽」も「蝶」も「牛」も「梟」も、ネアリカのフレームはすべてとっちゃんの正確無比な手腕から生まれている。本人はいたって無口で仏のように微笑んでいるが、 もうとっちゃんなしではネアリカはつくれないほどの重鎮である。
 オレを「シロップ中毒」にさせやがった由紀ちゃんは、この前いったsyrup 16gのライブが衛生テレビで放映されたヴィデオをもってきた。 オレは昼飯休憩まで我慢できずに、見てしまった。最前列で踊る由紀ちゃんが映っているではないか。ずるい、ずるいぞ。オレもビビらずに最前列にいけばよかった。
 由紀ちゃんの友人直ちゃんは、法政のアートクラブ出身だ。羽の模様を貼ってもらったが、速い速い。初参加なのに3回目の由紀ちゃんを追い抜くスピードだ。ってゆーか、由紀ちゃんはヴィデオに釘付け。
 兵庫から再びやってきた強者、香奈ちゃんのシルバーアクセサリー作品を見せてもらった。緻密かつ洗練された技巧は、恐るべし。やはり蝶のカムイの羽にあるグルグルを発明した凄腕だけある。
  今回は梟の羽の新たなるグルグルに挑戦してもらった。これは「純粋知覚の限界」という図形で、マサチューセッツ工科大学のミンスキーとパペートが考案したものだ。左は2本の線、右は1本の線でできているが、動物進化の過程で生存に不必要な映像は「知覚」されない。この線を指でたどれば、ふたつのちがいが「認知」される。人類の爆発的進化は、「認知」の領域に入り込んだことである。

 このグルグルを香奈ちゃんが完成させた直後に撮った記念写真で、香奈ちゃんの第3の目あたりに白い球体が写された。
 もう心霊写真は2枚目だ。
 不吉などころか、 うれしい。
 梟のカムイの魂がはいったぞ。
 韓国留学から帰国した素福(そふく)ちゃんは、インドやペルーも旅している。共通の友人がいるのもびっくりだし。
 素福 お母さんがかなりファンキーな人で、「年子が3人つづいたんで、あんたを中絶しようと思ったのにさ」と、平気で我が子に言う。しかし韓国道教のシャーマンに相談したら、「絶対に生みなさい」と言われて、名前もファンキーな「素福」にされて、今ではシャーマンのおばあちゃんに大感謝だ。だって素福ちゃんが生まれてなければ、梟の胴体誰が貼るんだよ。ネアリカに魅せられた素福ちゃんは、もう夜中近いのに今も隣室で貼りつづけている。
 やっぱ生まれてきた全員がワールドカップ代表だね。
 しかもネアリカに集まる確率は、気が遠くなるほど天文学的な数字なんだろう。
 よく血縁を「血が濃い」とかいうけど、
 ネアリカンは出会いの「縁が濃い」って感じ。
 うん、前にも会ってる。

15 december(sun)
3 rhythmic lizard moon

 今日のネアリカンは2連ちゃんの素福ちゃんと初参加の久仁子ちゃんのはずだった。
 久仁子ちゃんが到着したあと、玄関にうごめく謎の影。
 なんと昨日帰った由紀ちゃんと直ちゃんがまたとんぼ返りしてきたのだ。ドラえもんのクリスマスブーツをおみやげにもって。しかも一言も話さなかった久仁子ちゃんと同じ席に座っていたというのだからおどろきだ。
 「偶然」という言葉がオレの辞書から消えていくね。
「羽が気になって、またきちゃいました!」
 一堂、大歓声。
  どうしてみんな、そんなにネアリカに惚れ込むの?
  素福ちゃんは夜中までかかって、梟の胴体を完成させちゃうし、足も紫と黒で決めてくれた。
  久仁子ちゃんは脳の切断面に輝くグラデーションを美しい手さばきで仕上げる。
 由紀ちゃんと直ちゃんは「この羽はわたしのもの」という執念で、細かく埋めていく。
 8時の電車のぎりぎりまでかかって、たった二日で本体の梟を完成させてしまった。
 こんなメールをもらう。
「 最近のネアリカってスピード違反ですよ。行こう行こうと思ってる間に完成しちゃう」

 素福ちゃんは友人のライブがあるので、3時の電車で帰っていった。「誰のライブ?」ときくと、オレの古い友人花ちゃんだった。彼は多摩川の河原にテントを張って、もう10年近く仙人生活をつづけているミュージシャンだ。会場の多国籍居酒屋「縄」(渋谷区東3−20−1電話O3−3400−753)にも友人が働いていて、オレの本もおいてある。ここの中庭にはインディアンのテント・ティピがあり、かまどで米を炊き、黒米にオクラのカレー、ココナツミルクアイスが激うまだそうだ。

  今日の昼飯は活力鍋で炊く「豚の角煮とタケノコと里芋の煮付け」だった。
 かなり多めにつくったのに、法学部出身の編集者 久仁子ちゃんがみごとに平らげてくれる。ネアリカよりもシェフに徹しているオレは、美味しく食べてもらうことに至上の喜びを感じる。 「わたしって大食いなんですよ」と笑う久仁子ちゃんはぜんぜん太っていないのに、なんと、わんこそば110杯の記録をもつ。わんこそば7杯でラーメン一人前だから、16人前のラーメンを平らげたことになる。
 なんかネアリカンは、三国史の梁山泊みたくなってきたなあ。

16 december(mon)
4 rhythmic lizard moon

 ディー・ブラウン(94歳)が死んだ。
 アメリカ史をインディアンの視点からひっくり返した大ベストセラー「わが魂を聖地に埋めよ」(草思社)の作者だ。12日、心不全のためアーカンソー州リトルロックの自宅で死去したという。
 ディー・ブラウンはアメリカ西部史を専門とする白人の歴史家だが、一生をかけてネイティヴ・アメリカンの復権に尽力した、いわば「白いインディアン」だ。
 「わが魂を聖地に埋めよ」の原題は「BURY MY HEART AT WOUNDED KNEE」である。
 「COTTON100%」に書いたが、オレがサウスダコタ州南部にある聖地ウーンデッド・ニー(傷ついたヒザ。ラコタ語でチャンクペ・オピ・ワクパラ)を訪れたのは1984年だと思う。
 例によってアメリカ中をヒッチハイクしていたオレは、たまたまウーンデッド・ニーに墓参りにいくというラコタ族のおばあちゃんの車にひろわれた。
 小高い丘を登ると赤と白の煉瓦でできた門がある。門をつなぐアーチには皮肉にも十字架がついていた。数本の木が寂しそうに立ち、冬枯れた雑草に粗末な墓石が並んでよこたわっている。見わたせば、荒涼とした平原に冷たい川が流れ、小さな教会がある。
 1890年12月29日、ここで無防備のラコタ族300人が、500人の騎兵隊に一斉射撃で殺された。当時まだ少年だったブラック・エルクは、一部始終を目撃していた。

 どれほど大きなものが終わったのか、そのときにはわからなかった。いまこうして、老齢という丘の高みから振り返ってみると、あの曲がりくねった峡谷のいたるところに折り重なりまた散らばって倒れていた女たち子どもたちの無惨な姿が見えてくる。まだ若かった目で見たのと同じように、はっきりとまぶたに浮かぶ。あのとき血まみれの泥のなかで死に、雪嵐の中で葬られたものは、彼らだけではなかったのだ。そのことが、いまにしてわかる。一つの民の夢が、あそこで死んだのだ。
  それは、美しい夢だった。

「ブラック・エルクは語る」めるくまーる

 ウーンデッド・ニーがふたたび注目を浴びるのは、1973年、先住民の誇りに目覚めた若いインディアンたち(AIM=アメリカン・インディアン・ムーブメント=通称アイム)が、この教会に71日間立てこもり、FBIや陸軍や空軍との銃撃戦を繰り広げる。
 世界中のマスコミに報道され、アメリカの非道を暴露した。
  「え? インディアンて、まだいたの」と、西部劇しか知らない人々に衝撃を与えた。
 そのリーダーが、「COTTON100%」にも登場するデニス・バンクスとラッソー・ミーンだ。(占拠事件の詳細はデニス・バンクス著「聖なる魂」朝日文庫、クロウ・ドッグ著「魂の指導者クロウ・ドッグ」サンマーク出版、マリー・ブレイブ・バード著「ラコタ・ウーマン」第三書館などに書かれている)

 相変わらずアメリカは「ウーンデッド・ニー」をアフガンやイラクでくりかえし、北朝鮮を狙っている。
 「アメリカ人は残虐だ」などと、批判だけにとらわれる人は先へ進めない。オレたちの祖先も同じことをしてきたし、今日君も電車で肩がぶつかったやつに悪意をいだいたかもしれない。
 オレの母親ババチョフは、ヒザの病気をしてから片足をわずかに引きずって歩いていた。
 町内旅行も、ギリシャも、トルコも、ニューヨークも、中国も、二度と帰らぬガンセンターにむかったときも、ずっと「傷ついたヒザ」(ウーンデッド・ニー)で歩んだ。
 ババチョフに歩調を合わせていたためか、
  今でもオレの歩みはおそい。

17 december(tue)
5 rhythmic lizard moon

 砂浜に埋められてる夢にうなされてたら、猫が胸のうえにのっていた。
 横向きに寝ても腕のうえにのってくる。
 おめえら文鳥じゃないんだから重いぞ。
 今日は中村一義の武道館コンサートにいってきます。

18 december(wed)
6 rhythmic lizard moon

 中村一義の武道館コンサート、最高だったわ。
 いきなり「1,2,3,4,どーお!」
 の「犬と猫」というデビュー曲のオープニングに泣いてしまった。
 一義よ、大きくなったのう。(養父の気持ち)
 思い起こせば5年前、わしは一義の 「どーお!」を偶然耳にした。
 デビューしたての一義をだれも知らんころじゃ。
 業界の一部では「天才の出現」と、いとうせいこうさんが自分のHPで紹介したり、細野晴臣さんがアルバムに参加したりしたものの、ファーストアルバム「金字塔」は一般には知られなかった。
 わしはこれぞという友人に会うたび、「犬と猫」を聴かせ、一義の紹介された雑誌のコピーをくばったもんじゃ。
 なかでも感覚の鋭い作家素樹文生は即座に反応し、「旅々オートバイ」(新潮社)という作品に「一義中毒」を暴露している。
 わしの地道な布教活動とともに、一義は、「太陽」、「イーラ」、そして今回の「100式」と、期待を越えるアルバム群をリリースし、ついに武道館を超満員にしてしまった。
 引きこもりでライブ恐怖症だった一義が、こんなに成長するとは、わしも感無量じゃ。
 わしがもう一義にできることはなにもない。ひっそり引退し、一義の成長を見守ることにしよう。
  うれしいのう、さびしいのう。
 しかしわしには、新しい孫ができた。
 シロップ16gの五十嵐隆じゃ。
 隆は一義と正反対の性格をしておる。
 一義が太陽ならば、
 隆は月じゃ。
 一義が光ならば、
 隆は影じゃ。
 隆が自殺しない限り、5年後には武道館を超満員にしとるじゃろう。

 老人モードは疲れるのでヤメ。
 明日はネアリカのボランティア、矢口明子さんの肺ガン摘出手術だ。
 ガンはひらいてみないと、実際の進行具合がわからないという。
 オレは一昨日、明子さんの家族に電話をかけ、中村一義の武道館のまえに向が丘の聖マリアンヌ病院にお見舞いにいこうとしたが、本人から電話があった。
「わざわざ、来ないでもいいわよ。こんな元気な病人にお見舞いはいらないわ。それより、祈って」

 「祈りの力」を科学的に検証した実験はいろいろある。
 たとえばラリー・ドッシー博士の「魂の再発見」(春秋社)という本に書かれている実験を紹介しよう。
 ライ麦と大豆の発芽率に人間の「祈り」は影響するか?
 二つにわけられた片方のグループにだけ、 「育って」「発芽して」「大きくなって」と人間が祈りを捧げる。
 祈られたグループと、祈らないグループでは、祈られた方が発芽率が明らかに高い。何度やっても祈られたグループが多く発芽した。
 さらに悪い環境(人間でい言う病人)では、もっと顕著な結果が出ている。
 サンフランシスコ州立病院で病人に祈ると祈らないのでは、祈られた方の治癒率が高いという実験結果が出ている。
 「祈りは量に比例する」
 たくさんの人が祈った方がいい。
 知らない人でも軽い気持ちで祈ってみようよ。
 それと、祈る人が対象を知っていた方が効果があるという。
 明子さんを直接知ってるネアリカン(敬称略)は、
 川島清子(東京)
 増田勝俊(東京)
 西久保美和(京都)
 斎藤文武(横須賀)
 大野香奈(兵庫)
 どう?
 ここがおもしろいんだけど、「手術が成功しますように」と指示的に祈るより、 「よくなって」と、指示しない祈りの方がはるかによい結果が出たという。
 自分だけリッチになる賭ごと、パチンコや競馬で祈りは使えないんだなあ。
 
 「
誰であろうと、どんな病をわずらっていようとかかわりなく、患者に対して純粋で聖的な意識」を抱くべきだとドッシー博士はいう。
 「最もよい状態」になることを祈りさえすればよい。
  「最適」なことが起きることを祈るのだ。
 けっきょく「すべてをまかせる」のが祈りの基本なのかなあ。
 「じゃあ、祈る意味ないじゃん」って言われそうだけど。
 「祈り」ってのは、冷水かぶったり、厳しい修行することじゃなく、

 「想う」ことなんじゃないかな。

 あえて言います。
 明日の手術は、成功するぜぇー!
 聖マリアンヌよ、脱脂綿とか、ハサミとか、明子さんの肺におきわすれんなー。
 たのむぜ、おい。
 あとは、祈りの力で、なんとかするからよう。

19 december(thu)
7 rhythmic lizard moon

 満月に祈りがつうじたかな?
 今日のネアリカンは愛知から2度目のみちちょふと、東京から4度目のまゆちゃん。
 「今頃切ってるかな?」とか、明子さんの手術の話題で盛り上がり、井戸端会議風の祈りを捧げた。

 眉間にしわを寄せて祈るより、楽しい笑い声の方がよく届きそう。
 まゆちゃんのお父さんも片肺を取り、肋骨の一部を切除したが、元気で暮らしているそうだ。 話は変わるが、オレがおととい食った極上小龍包の店「上海湯包」(シャンハイタンパオ。銀座松屋の裏。03-5524-2608)を自慢しようとしたら、ふたりはとっくにいったことがあるという。しかも名古屋には7軒もあって、みちちょふは20回以上もかよっていたとは!
 小龍包評論家のオレ(いつからそんな肩書きが増えたんだ)としては、「上海湯包」のほうが、新宿高島屋10階にある「鼎泰豊」(ティン タイ ホン)より1ポイントリードだね。
  なかの熱々スープはお互いゆずらぬほど美味だが、「上海湯包」のほうが、皮が薄くてムチムチしている。しょうゆに混ぜる黒酢も絶品だ。
 もしニューヨークにいったらチャイナタウンにある「Joe's Kitchen」の小龍包が最高だ。皮は厚めだが、なかのスープの濃厚さは圧倒的だ。
 本場上海の豫園のもいいが、市場で先を競って食った小龍包は野性味にあふれていた。
 しかし小龍包のルーツは南翔である。上海の人民公園から1時間もバスに揺られてわざわざ出かけていった。(こういう話は「アジアに落ちる」には書かない)
 南翔には古猗園という名庭園があり、その一角に小龍包最古の店「古猗園餐庁」はある。
  言い伝えによると、貴族たちが饅頭の餡だけを食べ、皮を池の鯉に食わせているのを見た黄明賢という饅頭売りが、くやしさのあまり発明したという。
 さすが小龍包のルーツだけあって、素朴かつ奥深い味だった。
 1ミリの薄皮に美味の小宇宙を閉じこめ、 味覚によって人をトランスさせる。
 小龍包は大気にくるまれたガイアである。

20 december(fri)
8 rhythmic lizard moon

 矢口明子さんとネアリカに参加した川島清子さんから電話があった。
「明子さんの手術の結果を息子さんからきいたんだけど……」
「ど、どうだったんです?」たたみかけるようにオレは訊いた。
「たいへんなことになっちゃったのよ」
 やばい、鳥肌が活火山のごとく隆起していく。
「まさか、ガンが転移してたんですか!?」
 脳裏を3度のガン転移によって死んでいった母がかすめ、生唾が喉を墜落していく音が頭蓋に響く。
「それがねえ……」
 電話での沈黙は人を不安にする。
 実際に会えば五感を通じて相手の感情を察知できるが、今は音声だけがたよりだ。
「ガンはどっかに消えちゃったの」
「はあ?」
 飲みかけていたウコン茶をあやうく吐き出しそうになった。
「 レントゲンでガンだと思われていた影は結核だったんで、その繭みたいなところを切除して、はいお終い。もう来週には退院だって」
 オーマイブッダ!
 アンビリーデバビデブー!
 全人類兄弟、
 けんちん汁ちょうだい。
(シロップ16g)
 ただの誤診つったって、結核をわざわざガンだなんて脅かす医者もいないだろう。
 オレはまた自分の都合のいいように解釈するとだな、
 全国50人のネアリカン、このページきてくれるみんなの祈りが満月にとどいたのだ。
 太陽や蝶や牛や梟のカムイたちが温泉手ぬぐいをほっかむりして、聖マリアンヌ病院に忍び込んだんだろう。蝶のカムイがみんなに指示をだす。
「太陽さん、そんなに輝いちゃだめ。豆電球にして、足もとだけを照らすのよ」
「ウッシー母ちゃん、この非常口をぶち破って」
「梟の旦那、あんたは夜目がきくから見張りをたのむわ」
 まんまと611号室に眠る明子さんの大口から蝶のカムイがはいっていく。ガンを盗み出すことくらいカムイにとってはかんたんだ。
「えへ、結核にすり替えてきちゃった。医者のプライドってのもあるでしょう」
「 まあ、お蝶婦人たら、お茶目なんだからあ」
「さあ、早くもどらねえと、AKIRAが目を覚ますかも知れねえ。あいつションベンちかいからなあ」
 おとといの夜中、オレが目覚めると、4枚の白いキャンバスがあった。
 (ウッソー!)

 祈った人よ、ありがとう。
 祈らない人も「祈らないこと」によって祈ってくれてありがとう(だってこの日記読んだ時点で祈りは感染してるはず)。
 結核、ふえてるんだって。
 ウイルスには注意しましょう。

21 december(sat)
9 rhythmic lizard moon

 今日のネアリカンは、11回目のとっちゃん、京都から3度目の美和ちゃん、初参加の翠(すい)ちゃんとハルカちゃんだ。
 翠ちゃんは手作りのシュークリームと紅茶ケーキをもってきてくれた。それに自作の詩集も。中原中也ばりの叙情詩で、「シロップ16g」の詩にも通ずるところがある。
  ハルカちゃんは電話相談の占い師というユニークな仕事をやっている。電話をかけてきた相談者をタロットで占うという。そんな分野があることさえ知らなかったが、東京に10社以上もあるという。
 ふたりとも新人とは思えぬ凄腕で、なんかネアリカンのオールスターみたいな集まりだった。

 夜は隣町の今市総合会館で、和太鼓奏者林英哲のコンサートにいった。
  彼の演奏は25年くらいまえ鬼太鼓座(おんでこざ)で聴いている。4トンもある大太鼓のリズムが内蔵を揺らし、魂をわしづかみにする。音楽という枠をはるかに越え、なにか神聖な儀式に立ち会っているような気分になる。
 図太い2本のばちで彼は「魔」と戦い、われわれの「穢れ」を禊(みそ)ぎしてくれる。
 人のエネルギーというのは善意にもなるが、リズムが狂うと悪意にも変換されうる。
 全身全霊を込めてわれわれの「魔」を追い出してくれる林英哲の背中から流れ落ちる汗をみたとき、オレの目から涙が流れた。

22 december(sun)
10 rhythmic lizard moon

 昨夜コンサートからもどった美和ちゃんと翠(すい)ちゃんは、そのまま徹夜で貼りつづける。翠ちゃん詩集に感動し、即興でオレが歌をつけて歌う(もう夜中の3時なのに)。美和ちゃんいわく、「今までの人生で聴いた歌のなかで、いちばん感動した」という。

 耳鳴りするので
  耳を削ぐ

 幻覚みるので
 目を潰す

 名を呼ぶ口は
 縫い合わす

 もとへと向かう其の足は
 ヌクモリ残る掌と
 腕と一緒に
 切り落とす

 遠き世界は亡骸と
 まみれた血の海沈みます

 私はうつぶし手繰りゆき
 いきつく先では委ねよう

 この身全てを捧げよう

 (澤田翆「白く告する」より)

 オレは書斎で日記をアップし、「ケチャップ」の推敲をし、3時くらいに眠り、朝10時に起きた。
 翠ちゃんは朝まで貼りつづけ、学校があるので朝7時の電車で帰ったという。美和ちゃんは一睡もせず貼りつづけている。(なんなんだ、このエナジー!)
 11時に横浜から初参加の明日香ちゃんがきた。
 シカゴ州立大学の大学院を出ている。シガゴの寒さは「COTTON100%」にも書いたとおり半端じゃない。大学でも自殺者が異常に多く、明日香ちゃんが住んでいた寮でも幽霊話には事欠かなかったという。
 食堂の4面を走るようにたたく音が聞こえたり、天井に死んだ韓国人留学生の首が浮かんだり、寮の廊下を自殺者が徘徊するなど、アメリカ人ってホラー大好きだから。

 美和ちゃんは夕方4時までかかって、「脳」の下半分を単独で完成させた。2作目の「太陽」の顔と3作目の「眠る子ども」についで3本目の予告ホームランだ。
 不眠不休の30時間連続ネアリカ!
「あたし、無理してるんじゃないんです。楽しいから止まらないの」
 この記録は、永遠に破られないだろう。

 恋人にふられた半蔵が「ひとりでいると、落ち込んじゃうから」とやってきて、みんなで足尾温泉にいった。あいかわらずここの露天風呂は極楽だ。
 1日でも腰が痛くなるネアリカンがいるのに、オレはもう3ヶ月も貼りつづけている。 おまけに今回は7日間休みなしで、ときどき刺すような痛みが腰におそってくる。
  それでも楽しいから止められない。自分の貼った毛糸が確実に作品を完成させていく。自分の蒔いた種が、確実に実を結び、目でむさぼり食える。
 ネアリカは、田植えだな。
 オレたちは「心が食う米」を植えている。

23 december(mon)
11 rhythmic lizard moon

 今日のネアリカンは、5回目の由紀ちゃんと、友人で初参加の愛ちゃん。ふたりとも法政大学の4年生でむっちゃ鋭いアンテナをもっている。
 由紀ちゃんが貸してくれた漫画「ヒミズ」(「稲中卓球部」の古谷実)は、ギャグなし、救いなし、シロップ16gなみの暗さ。
 でもすごい作品だった。
 由紀ちゃんのアンテナはすごい。
 日光に引きこもってテレビも見ないくせに、こういう先端情報だけは誰かがとどけてくれる。
 無駄な情報なし、ネアリカンは「情報のサンタクロース」だ。
 愛ちゃんの正確なグラデーション、脳の完成を目指して、夕方からヤスコちゃんとからくり半蔵が参戦する。
 霧降温泉から帰ってきた由紀ちゃん愛ちゃんとオレたちがラストスパートをかけて、夜8時の最終電車直前に脳が完成した!
 まるで、「脳」みたい。
 そりゃあ、「脳」を目指して貼ってきたんだから。
 でもこんなリアルな脳ができるとは予想できなかった。

 川辺川を守ろうとする須藤さんから、すげえおもしろいメールがとどいた。(ひさしぶり!)
 人間って、かっこわるいよね。
 それが愛しい。

こんにちわ  熊本市の須藤です。
最初に、明子さん よかったです。心からよかったと思います。
みんなのやさしさの祈りが通じたんです。人を元気にさせ、やさしさの
輪が繋がり、心が通じあうこと、心を寄せ合うことのすばらしさを実感しています。
そのやさしさ、いたわりあい、分かり合う関係とは全く逆の経験をして
そのことを書かせていただこうと思っていましたので、偶然の一致というには
あまりにも不可思議な思いをしています。
12月21日、川辺川ダムを巡る第5回目の住民討論集会が人吉市で開催されました。
第4回の集会の報告は9月にさせていただきました。その続きです。
ダム推進派の旗頭、人吉市長の福永浩介氏の地元。かつて強硬に拒否し続けた
人吉開催。すんなりと受け入れたことで、何か仕掛けてくるなとは
思っていたのですが、なんと前夜から建設業者を動員しての場所取り。駐車場押さえ。
朝の4時から並び、9時の開場には2000人からの人が。開場と同時にすぐ満席。
反対派の住民の抗議で100席のみ譲って反対派は席を確保。
1000人対100人の聴衆の前での討論でした。
当然論議がかみ合うはずもなく、ダムの是非、治水の本質論議を迫る住民代表に対し、
ダム反対派の個人の資質をあげつらう国土交通省。曰く討論集会の度に発言内容が異なる、
信頼性の欠如。数字の根拠がない云々。
国土交通省の発言の度に開場からは一糸乱れぬ拍手と「よっしゃあ」という掛け声。
つまり、推進側は「ダム反対の論拠は破綻している。信用性がない。専門家も信用できない
連中。市民はダム反対派の欺瞞性に気がつき、ダム推進を理解してくれている」
という「事実」を見せようとシナリオを描き、その通りに実行したのです。
推進派で占拠された閉鎖された会場で、ダム反対の住民代表を完膚なきまでに
たたきつぶそうと。
私は午後からの空き席を頼りに入場。会場内はダム反対派に対する「憎しみ」と「嘲笑」
の気が渦巻いていました。 あれほどの憎しみの気の中に身をおいた経験は初めて。
ダムに拠らない治水の方法を住民総員で探ろう、考えようとする主張のどこにあれほどの
憎しみを買う理由があるのか、心が凍る思いでした。
誰がダムを作りたいと考えているのか、明白にわかった集会です。
ダム問題を人吉・球磨地域という、いわばコップの中の出来事として
捉えている彼ら。
「社命だから仕方ない」と朝の4時から並んだ業者はいいました。
大声で人を恫喝しひるませ、踏絵で忠誠心を諮る。
談合と根回しと口利き、旧態依然としたやり方が、今なお通用すると勘違いしている。
川辺川ダム問題は全国から注目されている、最後の巨大プロジェクト。
そのことに気がつかない彼らは墓穴を掘りました。
そして、ダム推進派の強引な進行ぶりにのっかかった国土交通省も。
あざけりの言葉をはけば吐くほど、憎しみを矢のように射れば射るほど、
正義はどこにあるか、まっとうな意見はどれか わかったと思います。
憎しみの気の存在をこの目でしかと見届けた21日でした。
憎しみの矢は、再び射た人間に帰ってくるでしょうに。
思いをよせること、やさしさにふれること、人を信じること。
akiraさんの日記に登場する人々のやさしさに触れてきた一年でした。
遠い熊本から、勝手に送りつけるメールを嫌な言葉一つ出さずに掲載してくれた
ことに心から感謝しております。
他人の存在を認める、受け入れる。 来年もこのことを一番に考えて毎日過ごしたい
と思います。どうかいいお年を。
お元気で。 来年もよろしくお願いします。

 

24 december(tue)
12 rhythmic lizard moon

 今日のネアリカンは、「マイナスイオン三人衆」と呼ばれる指圧師の三智(6回目)とひきこもりのフリースペースを運営する文ちゃん(5回目)のふたりだ。(もうひとりはゴッドハンドとっちゃん)。
  世の中には「マイナスイオンを発生させる人間がいる」(発見者 榎本由紀
 特徴をランダムにあげれば、

  言葉数が少ない。
  目立つのが嫌い。
  こっちが訊けば答えてくれるが、自分からはあまり話し出さない。
  聞き上手。
  話がとぎれても、不思議と苦にならない。
  親しくなると、意外におもしろいキャラが見えてくる。
  空気のような存在感の重要さに気づくには時間がかかる。
  ときどき、むふっと一人笑いする。
  半径1メートル以内に接近すると、時計が止まる。
  しかし、仕事きっちり(引っ越しのサカイ風)。
  かすかな微笑みの包容力。

 「マイナスイオン三人衆」と毛糸貼ってみたら、そのすごさがしみじみとわかるよ。 いっしょに「ぼー」っとしてるいるだけで、癒されちゃうんだから。
 当然ながら世の中は「目立たない」人がほとんどをしめている。
  オレだってルックスや作品をぬかせば、「目立たない」人の部類にはいる。
 ( 笑うなって)
 自分のことを話すより、人の話を聞くほうが圧倒的に好きだし、 会話とぎれる時間を愛してるし、回覧板まわしたり、ゴミはきちんと分けてるし、スーパーではドレッドをたばねてこそこそ買い物するし、生活は地味そのもの。
 いわゆる「ジミヘン」(地味=生活。変=作品)だ。
 オレのこたあ、どうでもいいの。 (はっ、また自己主張してしまった)

 目立つことを避け
  声高な自己主張もせず
  競争にはくわわらず
  ほめられもせず
  苦にもされず
  おだやかに笑っている
  「マイナスイオン人間」にわたしはなりたい

 6日間連続のネアリカで腰を痛めたオレを三智がマッサージしてくれた。さすがプロの指圧師だ。腰骨はさすがに身をよじったが、 終わったあとの爽快感。指先から遠赤外線ビームとマイナスイオンが放射されてんじゃねえの。

 肺ガン摘出手術を受けた矢口明子さんから直接電話があった。手術後の体液を外に出すチューブがはずされ、やっと今日動けるようになったという。
 たばこも吸わないのに肺ガンで5年の命を宣告され、手術を受けたら結核だったと診断された。
 摘出された卓球玉ほどの腫瘍には螺旋状に生育していった病根があったが、明子さんの口から出た結核菌がいっさい検出されない(もちろん家族にもネアリカンにも感染してない)。
 いちおう「結核」と診断したものの医者も首をひねる。かなり特殊な例のため、腫瘍は研究室にまわされた。
 ということは、やっぱりガンだったという可能性もあるんだって。
 研究結果が出るまでなんとも言えないが、ガンとして組成した病根が急に繁殖を止めて死滅したということもありえるそうだ。
 オレは勝手に明子さんのポジティヴ力と祈りの力がガンを消滅させたと思っているが、研究結果をまたないとわかんない。
 明子さんの退院は4日後の29日、感染者もいないし、まったく普通の生活にもどれる。
 いちど死を告知された「ゾンビー明子」は、来月中にもネアリカンに復活すると宣言した。

25 december(wed)
13 rhythmic lizard moon

 Felis Nabidad !(フェリス ナビダッ! スペイン語でハッピークリスマス)
 去年のクリスマスに君はなにをしてた?
 と問われると、思い出せない。
 でも今日のネアリカンは、来年こう言うだろう。
 「梟の毛糸貼ってた」
 クリスマスに集まったネアリカンは、2回目のアヤちゃんやじろべえさん、ハルカちゃん、初参加のまっぽん(真弓)の4人だ。
 まっぽんはエイズ撲滅キャンペーンの事務所で働いている。イベントではチンポ型の着ぐるみ(先がハート型になっている)をかぶり、コンドームを配っているそうだ。
 なんだか、すごい。
 50人ちかいボランティアがきたが、人生でチンポ型の着ぐるみをかぶった経験があるのはまっぽんだけだろう。
 ランディさんのファンサイト、「ラララランディ」を主催するやじろべえさんは、居酒屋の店長をやっている。今日の朝7時に仕事を終えたまま日光にきてくれた。昼飯のテンジャン鍋を食べ終えた後、女性陣をネアリカにもどし、流し台を金属たわしで磨き、包丁まで研いでくれた。一家に一個「やじろべえ」がほしい。混沌に突っ走る自分とバランスをとるためにやじさんは、必需品だね。
 同じく雑貨屋で「店長」をやっているアヤちゃんは、クラゲねえさんとか呼ばれて癒し系なのに、とんでもなく手際がいい。ルックスは「のほほ〜ん」で油断させながら、どんどん貼ってく。オレが40回も参加したすえに会得した4本の毛糸を同時に貼るテクニックを当たり前のようにやってく。
「4日後に来る素樹文生のために、残しといてね」とたのむくらい早いのよ。
 占い師ハルカちゃんは、「毛羽立ち」を埋める重要さを教えてくれた。はさみで切った切り口をピンセットで丸め込むことにより、線の境目がはっきり出るのよ。キャンバスを埋めるのが精一杯でそこまで考えたことはなかった。
 「毛羽立ちを丸め込む」は、基本の「隙間をあけないで」とならぶ、スタンダードな基本テクニックになるだろう。
 これだけは言おう。
  日々進化していくテクニックにビビらないで。
 誰でも最初は初心者、
 だからこそ、「こんなんありかよー」みたいな発明ができる。
 だって世界中で毛糸の絵を描いてるのは、メキシコの山奥と日光のうちだけだもん。

 はなしはクリスマスにもどるぜ。
 
クリスチャン人口が少ない日本ではなぜか「ラブホがいっぱいになるラブラブ記念日」。
  これって、異常?
 アメリカもヨーロッパもクリスマスは家族が集まる正月にちかい。いくらキリストの誕生日だって、「SEX記念日」じゃないんだから。
  オレの悪い癖でつい深読みしちゃう。
 クリスマスに種を植えておくと、稲の収穫時期である10月に子供が生まれる。たぶん農耕民族のクリスマス(「SEX記念日」)はキリスト以前からあったんじゃないのかな。

26 december(thu)
14 rhythmic lizard moon

 健康だけが取り柄なのに、爆走しすぎたせいか、風邪をひいちまったよ。

 ウイルスにい〜負けたあ〜
 いいえ過労にい〜負けたあ〜
(「昭和枯れすすき」のメロディーで )

 アーメンニモ負ケテ
 風邪ニモ負ケテ

 38度の高熱でナイトフィーヴァー
 
インフエンザでないといーわー

 誰かオレに葛根湯をくれないか
 どれか檻にか混沌をくれないか

 アーメンニモ負ケテ
 風邪ニモ負ケテ

 ひげにはりつく鼻水は樹氷
 のどがヒリつくわな。ミスはウヒョー

 誰かオレにルルをくれないか
 タレ?香織煮るルーをくれないか

 アーメンニモ負ケテ
 風邪ニモ負ケテ

 風邪っていうのは「ここらでちょっと休みなさいよ」っていうメッセージ
 なじって言うのは「こ、こらー!丁稚。ヨット屋住みなさい」酔って言う「めっ!」政治

 誰かオレに イソプロピルアンチピリンをくれないか
 ダレ顔レニー居そう、風呂?蛭?インチキ菌を?暮内科

 アーメンニモ負ケテ
 風邪ニモ負ケテ
 あめゆじゃとってちて賢者

 それでも明日は7時起きして、「ミライブゾク」のミーティングにいく。ついでにランディさんちよるし、「だめ連」の神長くん、「レイヴトラベラー」の清野さん、「完全自殺マニュアル」の鶴見さんに会うのも楽しみだ。
 あさっての28日はオレのドキュメントを撮ってくれてる野沢監督たちと恵比寿で忘年会だし、29日は素樹文生たちとネアリカだし、30日はバドミントン大会だし、31日は半蔵と年越しキャンプだし、
 オレは来年まで生きられんのだろうか?

28 december(sat)
16 rhythmic lizard moon

 落ち武者のように帰ってきたぜ、日光。
 また熱が37,6度に再発。
 ネアリカンのみちちょふにもらった秘薬ベーターグルカン(免疫細胞マクロファージを強化する)を2錠飲む。一錠200円と高いが、花粉症の鼻水が一瞬で止まり、風邪や糖尿病やガンにも効果がある魔法の薬だそうだ。じっさいこの2日間のハードスケジュールを支えてくれたから、効果あり。
 「ミライブゾク」のミーティング、おもしろかったよ。
  お堅い集まりと思いきや、オレのひざのうえではランディさんの娘ももちゃんがポケモンのゲームやってるし、
  主催者NHKの窪田さんはゲゲゲの鬼太郎ヘアーだし、
  「完全自殺マニュアル」の鶴見さんは水木しげるのキャラだし、
  「だめ連」の神長くんは髪切って、「さわやか左門豊作」になってるし、
  「レイヴトラベラー」の清野さんは熱いヤンキー魂だし、
 女性陣が個性的かつ、母性的だったのも印象的だ。
 不思議な縁で、鶴見さんの「完全自殺マニュアル」も、清野さんの「レイヴトラベラー」も、オレの「アジアントランス」も、太田出版の発行人落合さんが担当だ。
  パブロ・アマリンゴさんの講演会で会い、去年のアイヌモシリ1万年祭で会った主催の窪田さん、そのパートナーの杉田なおこさんとネアリカンのゆーちゃんも友だちだ。精神科医の関口さんもミライブゾクのメーリングリストに参加してる。
 いろんな縁が蜘蛛の巣のようなネットでつながり、「出会い」という必然を生む。
 
 野沢監督たちとの忘年会へかけつけ、午後3時から酒を飲む。
 野沢さんは輝かしい受賞歴があるドキュメンタリー作家だが、アルツハイマーが「いっちゃって」て、これがオレの未来だと確信する。集まってくる人たちも野沢さんの「いっちゃいかた」をかぎりなく愛しんで、いい感じ。
 ごめん。
 忘年会の模様をもっとくわしく書こうと思ったが、風邪と体力の限界で、
 倒れる。
 バタッ。
 おやすみ。

29 december(sun)
17 rhythmic lizard moon

 今年最後のネアリカンにふさわしい豪華メンバーがきてくれた。
 作家の素樹文生、編集者の高橋五月(メイ)、画家のポール(名取和宏)、バレリーナの安藤美里、女性バイカーの生形由香だ。
 「ええっ、もう終わり?」って感じで「梟のカムイ」も完成した。今まで1枚終わるのに1ヶ月かかっていたが、12月は「牛のカムイ」と2枚だぜ。
 しかも今日はガンの手術を受けた矢口明子さんの退院日ときた。めでたいことがおもしろいほど重なって、 乾杯!
 すると、うまい具合にタケちゃんとホセが「足尾温泉いこうぜ」ってやってくる。貼ってないけど、温泉輸送の大役を引き受けてくれるふたりも記念写真に参加した。
 5枚のネアリカに参加してくれたネアリカンはなんと52人!
 心からイアイライケレ(アイヌ語でありがとう)、そして来年もよろしく。
 素樹や五月ちゃんやタケちゃん、さらに加納さんやタケちゃんの奥さんヤスコちゃんも参加して3連ちゃんの忘年会だ。
 風邪はまだ完治していないが、ベータグルカンでいくとこまでいくぜ。
 みんなを待たせんのもなんだから、このへんで忘年会に復帰するね。

30 december(mon)
18
rhythmic lizard moon

 今年の「ネアリカ大賞」は、誰の頭上に栄冠が輝くか!
 (まだ今年しかやってねえじゃん)
 レコード大賞やグラミー賞やノーベル賞より重要なので、選考委員会やゲスト審査員も公平をきすのに精一杯だ。
 (選考委員会やゲスト審査員をつとめているオレも緊張する)
  中国製のハイテクノートブック「根在処(ねありか)学習帳」には、膨大なデータが記録されている。それらを綿密に検証して、栄えある 「ネアリカ大賞」を決めるのだ。

 作品ナンバー1「鹿のカムイ」
 サイズ 50号キャンバス(116,7cmX91cm)
 初日と最終日 わけらな〜い(亜米利加人風に)
 所要日数 うぉけるね〜い(英吉利人風に)
 参加人数 わがんね(栃木人風に)
 参加ボランティア チーフ健一郎(栃木)。小嶋剛成(栃木)。小嶋ヤスコ(栃木)。青山美幸(千葉)。在=城間正美(沖縄)。加納秀一(埼玉)
 発明 青山美幸「みゆきグラデーション」(上部の大きな目の白目部分。暗い色から明るい毛糸を2飛んで1の規則でグラデーションさせる)

 作品ナンバー2「太陽のカムイ」
 サイズ 120号キャンバス(194X130,3)
 初日と最終日 9月27日〜10月20日
 所要日数 12日
 参加人数 37人(複数日参加や毎回参加のオレもふくむ合計)
 参加ボランティア 矢口明子(東京 2回)。増田勝俊(東京 4回)。西久保美和(京都)。高橋五月(千葉)。半田瑞穂(神奈川)。チーフ・健一郎(栃木 2回)。山岸耕太(埼玉 2回)。吉井三智(東京 2回)。佐川一政(神奈川)。川島清子(東京)。素樹文生(東京)。望月俊彦(東京)。深津有美(栃木)。下司晶子(栃木)。貝塚克子 あゆこ(東京)。君野倫子 里佳子(東京)。河村真友子(東京)。斎藤文武(神奈川) 。
 発明 吉井三智 「多色毛糸」(下部の背中のつながった双子の胎児。1本に何色かはいっている毛糸を使う)

 作品ナンバー3「蝶のカムイ」
 サイズ 120号キャンバス(194X130,3)
 初日と最終日 10月21日〜11月4日
 所要日数 7日
 参加人数 32人
 参加ボランティア 桜井明子(千葉 2回)。半田瑞穂(神奈川)。増田勝俊(東京 2回)。西久保美和(京都 3回)。斎藤文武(神奈川 2回)。大野香奈(兵庫 3回)。矢口明子(東京)。上原信幸(栃木)。上原春美(栃木)。榎本由紀(埼玉 2回)。杉本奈美子(東京)。池澤雪子(神奈川)。西沢純子(神奈川)。小嶋ヤスコ(栃木)。小嶋剛成(栃木)。吉井みち(東京)。やじろべえ(東京)。
 発明  西久保美和 「みわメソッド」下部の眠る子ども部分。(毛糸を細かくほどき、まるで絵の具のような繊細さを出す)
 発明 大野香奈 「かなメソッド=ぐるぐるメソッド」(微妙にちがう色を円周上に貼ることによって、網膜上で円をぐるぐるダンスさせる)

 作品ナンバー4「牛のカムイ」
 サイズ 120号キャンバス(194X130,3)
 初日と最終日 11月23日〜12月7日
 所要日数 10日
 参加人数 34人
 参加ボランティア 青山美幸(千葉 2回)。明田清美(大阪)。増田勝俊(東京 2回)。小芝裕子(東京)。明田清美(大阪)。半田瑞穂(神奈川)。毛利亜子(東京)。中野亜季子(横浜)。吉井三智(東京 2回)。玄(東京 2回)。河村真友子(東京)。美智子(愛知 2回)。オオタケアヤ(東京)。西沢純子(神奈川 2回)。斎藤文武(神奈川)。桜井明子(千葉)。michelle(東京)。中西かよこ(東京)。
 発明 半田瑞穂 「お好み焼きメソッド」(多色の毛糸をほどき、お好み焼きのように盛り上げる)
 発明 西沢純子 「混血メソッド」下部の牛のからだの地図部分。(毛糸をほどき、ちがう色とより合わせて新しい色をつくる)

 作品ナンバー5「梟のカムイ」
 サイズ 120号キャンバス(194X130,3)
 初日と最終日 12月15日〜12月29日
 所要日数 9日
 参加人数 46人
 参加ボランティア 榎本由紀(埼玉 2回)。杉田直子 (東京 2回)。増田勝俊 (東京 2回)。毛利亜子(東京)。素福 (東京 2回)。大野香奈(兵庫)。鈴木久仁子 (東京)。河村真友子(東京)。美智子 (愛知2回)。沢田翠(東京2回)。ハルカ (東京 2回)。西久保美和(京都 2回) 。からくり半蔵(東京 2回)。石田明日香(神奈川)。小嶋ヤスコ(栃木)。岸愛子(神奈川)。吉井三智(東京)。斉藤文武(神奈川)。やじろべえ(東京)。戸嶋真弓(東京)。オオタケアヤ (東京)。生形由香 (東京)。高橋五月(千葉)。素樹文生(千葉)。安藤美里(東京)。名取和宏(東京)
 発明 ハルカ 「ケバケバ埋め埋め」(はさみで切った毛羽立ちをピンセットをくるりとやって埋めていくテクニック)

 苦しくったって
 悲しくったって
 毛糸のなかでは平気なの

( 「アタックナンバー ハマナカボニー404赤」より)
 審査委員長としては、まず52人のネアリカン(参加ボランティア)による血と汗と涙と温泉のドラマに感動する。
  今年最後のネアリカンを終えた高橋五月の報告によると、昨日の足尾温泉では3人の美女たちが素っ裸で野性にかえり、露天風呂の岩のうえにならんで雄大な山を眺めていたそうだ。
 毎回それぞれ初対面の出会いとドラマがあるんだよね。

 さあ今、司会者の手に各賞の審査結果がわたされました。
 オレの手は、結婚式の電報みたいにゴージャスなカードをひらく。
「それでは各賞に選ばれたかたは、ステージまでおこしください」
 会場のびろうど椅子に座るネアリカンの緊張が伝わり、紅潮した手をぶるぶる震んながら叫ぶ。
 「最多参加賞10回、増田勝俊!」
 会場から拍手が沸き起こり、ほほを京劇役者のように紅潮させたとっちゃんが壇上で表彰状を恭しく受け取る。
 「マイナスイオン賞は、5回の参加の斉藤文武さんです!」
 もと引きこもりだった文ちゃんが、ぬくっと立ち上がると、大観衆の拍手につつまれる。
 「癒し賞は、6回参加の三智さんです!」
  プロの指圧師三智は、38回のセッション全部に参加して腰を痛めた審査委員長を治療してくれた。
 「それでは審査員特別賞を発表します」
 これこそ「最も印象深かった」ネアリカンの最高峰である。
 「肺ガンをネアリカンの祈りで直してしまった矢口明子さんです!」
 チューブの取れたばかりの明子さんが車いすに乗って壇上に登場すると、会場から「アキコ、アキコ」とシュプレヒコールがわき上がる。明子さんは肝臓から摘出された腫瘍を会場に投げる。
「人生なんて、六苦ん六得るだぜ」
「ただいま視聴者からの人気投票がはいってまいりました」
 司会者が息をのむ。
「さあ、5作のなかからベストワンに選ばれるのはどれでしょう?」
 オペレーターガールたちが電話やファックスや
メールの集計からベストワンを選出していく。
 処女作「鹿のカムイ」が意外に人気を保ち、「太陽のカムイ」のファンも多い。最新作「梟のカムイ」が「蝶のカムイ」に追い越された。残るは「蝶のカムイ」と「牛のカムイ」の一騎打ちだ。両者とも引かない。「再生」と「母性」のファンは同じようでありながら一歩も引かないのだ。
「投票結果を読み上げます。わずか3票差で、ベストワンは牛のカムイに決定しました!」
 会場が割れんばかりに拍手につつまれる。
「それではいよいよ、ベスト・オブ・ネアリカンの発表です」
 壇上に7人の発明者が呼ばれ、会場が嵐の前の静けさに沈黙する。
 「みゆきグラデーション」の青山美幸、
 「多色毛糸」 の吉井三智、
 「みわメソッド」西久保美和、
 「かなメソッド=ぐるぐるメソッド」の大野香奈、 
 「お好み焼きメソッド」の半田瑞穂、
 「混血メソッド」の西沢純子、
 「ケバケバ埋め埋め」のハルカ。
 全員女性というのも興味深いが、ウィチョル族も考えつかなかったテクニックを発明したスーパースターである。
  審査員の票は初代のグラデーションを発明した青山美幸に集まったが、ぎりぎりのところで逆転劇が起こった。
「ベスト・オブ・ネアリカンは、京都からきた西久保美和さんです!」
 会場が沸騰した鍋のように沸き立ち、6人の発明とともに西久保の栄誉を讃える。
 いったいだれが、30時間連続で毛糸を貼れるのだろう。
 しかも猫アレルギーでマスクをかけて。
 ネアリカン52人壇上にあがった。
 全員が手をつなぎ、会場に頭を下げる。
 誰もがひとりひとり地球のネイティヴ、
 そして勇者 だ。
 わけのわかんない毛糸絵画の創作に参加し、
 素晴らしい作品をつくってくれた。
 この輪は来年も広がっていくだろう。
 ウイチョル族が教えてくれた
  「Respect=他者を敬う」
  という毛糸の波紋が世界に広がっていくといいな。

31 december(tue)
19
rhythmic lizard moon

 今年もいろいろあったなあ。なんかもう3人分くらいの人生を生きている気がする。

 1月 山川健一氏が主宰するウェブサイト「文学メルマ」に短編小説「Fireworks」を発表
 2月 ニューヨークへ小説「ケチャップ」の取材旅行
    小説現代(講談社)にて田口ランディーさんと対談
    父急死
 5月
〜6月 メキシコ旅行
 8月 アイヌモシリ一万年祭に参加
    東京駅前丸の内ビル5階のイタリアンレストラン「エッセンツィア」に絵画制作
 9月 毛糸絵画ネアリカの第1作「鹿のカムイ」が完成
10月 第2作「太陽のカムイ」が完成
11月 第3作「蝶のカムイ」が完成
    アシリ・レラさんの「アイヌユーカラ」に参加
    宇都宮「リンチ」にてライブ
12月 第4作「牛のカムイ」が完成
    第5作「梟のカムイ」が完成

 いいことも悪いこともふくめて、大きな転換の年だった。帰国して10年だし、日光へ引っ越し、作家になり、美術をやめて5年だ。
  それがネアリカという形で復活するとは思ってもみなかった。
 自分の人生、まったく予想がつきませーん。

 スローライフの楽しみ方は、
  「計画しない」「急がない」
  「金がない」でも「気にしなーい」。
 運命に流され、
 「うんめえー!」に 泣かされ、
 てめえになんかされ、
 バカにされてもバカにしない。

 天の邪鬼の戯言に1年間つきあってくれたみなさん、ありがとうなら、モグラははたちになってから。
 来年も平穏無事でありますようになんて祈らない。
 来年も、運命がさらにオレたちを振り回してくれますように。

News

 「ネアリカ」(毛糸絵画)の制作ボランティア、まだまだ募集! 
 「ネアリカ」第1作「鹿のカムイ」
 「ネアリカ」第2作「太陽のカムイ」制作過程
 「ネアリカ」第3作「蝶のカムイ」制作過程
 「ネアリカ」第4作「牛のカムイ」
制作過程
 「ネアリカ」第5作「梟のカムイ」制作過程
 「アヤワスカ!」の感想
 「風の子レラ」の感想
 「ケチャップ」の感想