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今日のネアリカンは11回目の文ちゃんだ。講演会のときに忘れていったi
Bookとプロジェクターを横須賀から車でとどけてくれた。
文ちゃんもいっしょに「べてるの家」の総会にいくことになった。10日に大洗からフェリーで20時間かけて、12日に苫小牧に着く。日高本線を襟裳岬にむかっていき、浦河でおりる。
べてるの家を一言で説明するのはむずかしい。
「年商1億をあげる精神障害者団体」
「病気やトラブルさへも笑いに変える吉本興業以上のお笑い軍団」
「すべての常識がひっくり返る逆さまの世界」
「古くて新しい未来像」
1978年、浦河赤十字病院に赴任してきたソーシャルワーカー向谷地(むかいやち)さんがオンボロの教会堂に住み着いた。すきま風が吹き込み、ネズミが走り回り、向谷地さんの洗濯物が壁や天井に画鋲で留めてあったというからすさまじい。
浦河赤十字病院を退院した精神障害者たちがそこで共同生活するようになり、84年「べてるの家」と名づけられた。
「べてる」というのは旧約聖書で「神の家」という意味で、ドイツ中央部(BIELEFELDの近く)にも精神障害者の施設が点在する同名の町BETHELがある。BETHELへナチスが「無用な障害者」を殺そうと乗り込んできたとき、牧師と医師が「患者を殺すならわれわれから先に殺してもらおう」と袖をまくり上げ安楽死の注射を打ってみろと迫ったところ、ナチスたちはその迫力に押されて退散したという。
「 地域への貢献」をめざしてべてるの家ははじまったものの、アル中患者は医者の白衣を盗んで無銭飲食をしたり、町の人としょっちゅうケンカするし、幻覚妄想患者は2階の窓からビール瓶を道に投げつけるとか、問題は後を絶たない。
地元の特産品である日高昆布の袋詰めをはじめるが、仕入れ先の工場とケンカし、自ら商売をはじめる。
会社を設立するかどうかのミーティングで、ある女性からこう言われた。
「あんたたちのような頭おかしい人に商売なんかできるわけないっしょ!」
司会を務めていたミスターべてることキヨシどんはキレた。
「そんなことまで言われてチックショー! 腹クソ悪い! つくるべ! 絶対会社つくるべ!」
なにしろ社員全員が病気の会社である。その日にならないと誰が出社してくるかわからない。そこで会社のモットーがすばらしい。
「安心してサボれる会社」
無理して働くと発作が出てしまうので、「諦めが肝心」。好きなときに働き、好きなときにサボる。人が働いているよこで昼寝していてもかまわない。
「利益のないところを大切に」
草むしりやスーパーの床掃除、病院のゴミ処理など健常者がやりたがらない仕事をしたり、 紙おむつは一個からでも配達する。
「弱さを大切に」
自分の弱さを情報公開して、お互いが補い合って生きていく。弱さによるネットワークは強い絆となる。
「発作で売る」
べてるの守護神、川村医師は講演会に入院中の患者をつれていってしまう。患者自身が講演してる最中に発作が起こってもかまわない。それどころか逆にウケ、感動させてしまう。
川村先生のモットーも常識と逆さまだ。
「直さない医者」
薬や管理で社会復帰させて果たして幸せなのだろうか? 病気という贈り物と共存し、楽しみ、売りにさえしてしまう。
「入院させない医者」
患者を病院に閉じこめず、町へ出ていかせる。地域の人とどんどん交流させ、お互いの理解を深めていく。トラブルなんかあって当たり前。「順調! 順調!」
「右肩下がりの人生」
出世や名誉なんてくそくらえ。患者と肩を組み、ほくほくした黒土の地面へ下りていくような生き方。
ソーシャルワーカー向谷地さんいわく、「精神障害者は、苦労する権利を奪われている」。自分では良心的だと思っている人々が障害者を囲い込み、彼らの可能性を摘んでいる。
だから苦労の多い商売をはじめた。
べてるでは徹底的にミーティングをおこない、すべて当事者に決めさせる。リーダーも規則もない、裸の人間がぶつかり合う直接民主主義だ。
17日におこなわれる総会のメインイベント「幻覚&妄想大会」がなによりの楽しみ。今年いちばんおもしろい幻覚や妄想を見た人に大賞が贈られる。
過去の受賞者では、美人看護婦に恋して想像妊娠した男性松本さん、空中に浮かぶ緑色の牛にションベンされた米田さん、UFOに飛び乗ろうとして2階の窓から落ちて骨折した大和さんなど、おもしろすぎる。
一般社会で蔑まれてきた幻覚や妄想が自慢でき、表彰までされちゃうんだから。
年商1億円、年間見学者1,800人というべてるのすごさは、障害者を社会復帰させるのではなく、障害者を受け入れる社会をまるごと復帰させちゃうということだ。こんな壮大な妄想、いや構想を実現させてしまったのは、世界ひろしといえど、べてる以外にはない。
べてる関係の書籍を入門順にならべてみた。
べてるの家の「非」援助論(医学書院刊)
とても普通の人たち(北海道新聞社)
悩む力(みすず書房)
べてるの家の本
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