|
ネアリカ再開。
初参加の竜介くんは石油や天然ガスのプラントを設計する技師だった。サッカーで「ドーハの悲劇」があった中東のカタールで5年もかけてガス液化プラントを建築した。
最高気温50度の砂漠にコンテナ村が建ち、世界中から5000人ものエンジニアが集まってくる。
中東、東南アジア、日本、欧米など、言葉も、肌の色も、価値観も異なる人たちが、巨大なプラント装置を小さな配管に至るまで寸分ちがわずつくりあげることに感動したという。その経験から現在は早稲田で言語学を専攻している。
ネアリカという異種格闘技は石油プラントに似てるかも知れない。
竜介くんはルックス=格闘家だがやさしい笑顔をもち、緻密な構築力は並はずれている。
抽象的な構図の中心にドクロをすえた。
どんどん変化していくネアリカに教えられるのは、アートも人生も「コントロールしない」、「コントロールできない」ってことだ。
自分はからっぽコップで、そそがれたミントティーやドクダミ茶を誰かの唇に運ぶ、
英語で麻薬の運び屋を「モブ」という。
マフィアがモブの面接で選ぶ条件とは、
自己主張をしない。
自分の置かれた状況で最良の判断を下す。
他者の情報をより多く収集できる。
忍者の極意ともつうじるが、谷川俊太郎の「みみをすます」が秘伝を伝えている。
みみをすます
きのうの
あまだれに
みみをすます
みみをすます
いつから
つづいてきたともしれぬ
ひとびとの
あしおとに
みみをすます
めをつむり
みみをすます
ハイヒールのこつこつ
ながぐつのどたどた
ぽっくりのぽくぽく
みみをすます
ほうばのからんころん
あみあげのざっくざっく
ぞうりのぺたぺた
みみをすます
わらぐつのさくさく
きぐつのことこと
モカシンのすたすた
わらじのてくてく
そうして
はだしのひたひた......
にまじる
へびのするする
このはのかさこそ
きえかかる
ひのくすぶり
くらやみのおくの
みみなり
みみをすます
しんでゆくきょうりゅうの
うめきに
みみをすます
かみなりにうたれ
もえあがるきの
さけびに
なりやまぬ
しおざいに
おともなく
ふりつもる
プランクトンに
みみをすます
なにがだれを
よんでいるのか
じぶんの
うぶごえに
みみをすます
そのよるの
みずおとと
とびらのきしみ
ささやきと
わらいに
みみをすます
こだまする
おかあさんの
こもりうたに
おとうさんの
しんぞうのおとに
みみをすます
おじいさんの
とおいせき
おばあさんの
はたのひびき
たけやぶをわたるかぜと
そのかぜにのる
ああめんと
なんまいだ
しょうがっこうの
あしぶみおるがん
うみをわたってきた
みしらぬくにの
ふるいうたに
みみをすます
くさをかるおと
てつをうつおと
きをけずるおと
ふえをふくおと
にくのにえるおと
さけをつぐおと
とをたたくおと
ひとりごと
うったえるこえ
おしえるこえ
めいれいするこえ
こばむこえ
あざけるこえ
ねこなでごえ
ときのこえ
そして
おし
...... みみをすます
うまのいななきと
ゆみのつるおと
やりがよろいを
つらぬくおと
みみもとにうなる
たまおと
ひきずられるくさり
ふりおろされるむち
ののしりと
のろい
くびつりだい
きのこぐも
つきることのない
あらそいの
かんだかい
ものおとにまじる
たかいびきと
やがて
すずめのさえずり
かわらぬあさの
しずけさに
みみをすます
(ひとつのおとに
ひとつのこえに
みみをすますことが
もうひとつのおとに
もうひとつのこえに
みみをふさぐことに
ならないように)
みみをすます
じゅうねんまえの
むすめのすすりなきに
みみをすます
みみをすます
ひゃくねんまえの
ひゃくしょうの
しゃっくりに
みみをすます
みみをすます
せんねんまえの
いざりの
いのりに
みみをすます
みみをすます
いちまんねんまえの
あかんぼの
あくびに
みみをすます
みみをすます
じゅうまんねんまえの
こじかのなきごえに
ひゃくまんねんまえの
しだのそよぎに
せんまんねんまえの
なだれに
いちおくねんまえの
ほしのささやきに
いっちょうねんまえの
うちゅうのとどろきに
みみをすます
みみをすます
みちばたの
いしころに
みみをすます
かすかにうなる
コンピューターに
みみをすます
くちごもる
となりのひとに
みみをすます
どこかでギターのつまびき
どこかでさらがわれる
どこかであいうえお
ざわめきのそこの
いまに
みみをすます
みみをすます
きょうへとながれこむ
あしたの
まだきこえない
おがわのせせらぎに
みみをすます
|