下にいくほど新しくなっています

1 october (fri)
12 electric moon

 昨日の打ち合わせについて書く。
 飯田橋の警察病院近くに角川ビルがある。
 オレは2軒もパン屋によったおかげで40分も遅刻した。
 入口に立ってるガードマンがちらっと動く。
 オレはレインボーカラーの帽子をかぶり、ニカラグアの古着市で買った「HE HEALED ME」(神はわたしを癒した)と十字架に王冠がのっかった白いTシャツを着ている。
 「打ち合わせです」いぶかる警備員に言った。
 なんで呼ばれたオレが言い訳がましく説明しなくちゃなんねえんだよと怒りつつ、自動ドアをくぐる。
 前回打ち合わせした入口すぐ左のカフェラウンジを見まわす。
 いねえじゃん。
 やべえ、オレが遅刻したんで、みんないなくなっちゃったよ。
「なにかご用ですか」
 美しい受付嬢の声にふりむいた。
「アキラといいます。編集部のタッキーに呼ばれたんですが」
 なんでオレが言い訳がましく、平身低頭で説明しなくちゃなんねえんだよ。
「編集部のどちら様ですか」
 なんだっけ、タッキーの本名?
 そうだ、ジャニーズと同じ滝沢だ。
「あっ、滝沢です。田口ランディさんもきてるはずです」
  美しい受付嬢は訪問名簿をチェックし、「あちらです」と長い指をのばした。
 無機的な通路を曲がると、タッキーが迎えにきてくれた。
「ごめんごめん、いろいろあって遅刻しちゃった」
 窓もない会議室にはいると、ランディさんが満面の笑みでむかえてくれる。
「メキシコじゃん。メキシコの風がはいってきたー」
 ランディさんは1年間の執筆休業を終え、講演やらなんやかでこの3日間都内のホテルに缶詰状態になっていたという。
 タッキーは昨日から鬱にはいり、元気がなさそうだ。
「まっ、パンでも食って」
 オレはビゴとペルティエのパンを突き出す。
「なんだ、コンビニのパンなんかくわなけりゃあよかった」
 テーブルのうえにはコンビニパンのあき袋がちらばっている。
「あんまり食いすぎちゃだめだよ。ラ・カシータのメキシコ料理が食べられなくなるから」
 日本で唯一の本格的メキシコ料理を食べさせる渡辺シェフ(「地球の歩き方」にものっている)の料理が食べたくてわざわざ日光から上京したのだ。
「なに、それ?」
 ランディさんの柴犬のような目が点になった。
「きいてないですよ」
 写真家の大将と編集者のアヤさんが驚く。
 オレは2週間もまえからラ・カシータのホームページをタッキーに教え、そこでメキシコ同窓会をするというのを夢見て暮らしてきたのだ。
「あれ? 今日は打ち合わせだけするって言いませんでしたっけ?」
 おのれ、日本一いいかげんな編集者タッキーめ!
「オレ、食べ物がないともうこない」
 オレの剣幕にタッキーはろうばいしつつ、ラ・カシータに予約をいれてくれた。緑の地球を焼き畑に変えるようなオレの怒りはおさまり、やっと人間にもどることができた。
「アキラさんもきたし、本格的な打ち合わせにはいります。ランディさんのメキシコ小説がいちおう来年のゴールデンウイーク発売ということで、その後メキシコのガイドブックというか、われわれが行った旅行記を出したいと思うんです。ランディさんの棚に文庫としてならびますが、アキラさんも共著という形でかいてくれませんか

 うんうん、いいんじゃない。つーか、喜んで!
「でもアキラさんのメキシコ小説も11月に出るし、ランディさんの小説と情報がかぶるのが心配なんです」
 その瞬間、ランディさんがキレるのをはじめて見た。メキシコでもというか、いつもおだやかに会話していたランディさんが喉を引き絞るように叫んだのだ。
「小説は小説よ。なんであんたは小説の力を信じることができないの!」
 オレはランディさんの言葉に凍りつき、鳥肌が立った。
 この人は本気だ。
 「聖域としての小説」を本気で書いている。
 オレは自分の小説に対して、ここまで自刃をつきつけているだろうか?
 美術や音楽に逃げている自分が恥ずかしくなった。
 おととい書いた「逃げ道をつくれ」というメッセージは甘い。
 ランディさんの怒りは、
 命をけずって小説を書いてきた者だけが言える最終宣告である。

 覚悟か……。

3 october (sun)
14 electric moon

 明日、コマ(イル・クオーモ)の手術をすることにした。
 エリザベスカラーをつけても腫瘍はよくならないし、一生エリザベスのままでは不憫だ。
 飼い主のエゴでも、いちかばちか賭けてみるしかない。
 みんなからいろいろとアドバイスや励ましのメールをもらって、こんな幸せな猫はなかなかいないと思う。
 紹介しきれないメールもふくめて、「みんな、ありがとうニャー」と駒沢先生も言っておられます。

 抗生物質を餌に混ぜたら、それを食べないとのことだけど、僕は、息子(人間2歳)が風邪を引いて、抗生物質を与えることになったんだけど、それには、(針のない)注射器が付いていて、口の中に吹き付けるように飲ませるみたいだよ。少しでも、それだけ病気が回復するとは思わないけど、それによって、流れが変わることを祈るよ。(Pさん)

 貴重なアドバイスをありがとう。ちょっと顔にさわっただけでもいやがるんで、たぶんこの技は口を開いてくれないと思う。ごめん。

 まだ コマは逝かない気がした。
 手術中は、麻酔できっと痛くないよね? それが延命でも救命でも、一回だけって思って、手術してみては?
 うまく言えなくて ごめん。 、コマの生命力に賭けるしかないよね。 ほんと 猫語が話せればいいのにね… (Mさん)


 オレもコマはまだ逝かない気がする。根拠はないけど、やつのなかにはまだまだ生命力を感じる。

 コマはアキラ兄さんの守護者のように 異界の攻撃から守っていましたよ。まだまだ一緒にいたがっていると思います。
 ただ麻酔に耐えられるかどうか微妙ですね。我が家のデュークをバンクーバーから連れて帰ってくる時、 麻酔、おそらくケタミンを注射してもらったのですが、瞳孔と肛門が開きっぱなしで失禁してしまうという 何とも情けない状態になってしまいました。若かったのでそれでも平気だったようですが・・・・。( J・Pさん)

 オレも麻酔(麻薬)に強いからコマもだいじょうぶ!
 これも根拠ないかあ(笑)。

 実家の最後の飼い犬は15年生きた老犬で、もう最期は老衰だった。手の施しようがないってやつね。薬なし、手術なし、点滴とかのチューブもなし。
 私の両親はゴロ(って名前のオスイヌ)ができるだけ楽なように、1月だったから毛布にくるんだり、ぬるま湯用意したりしてた。(もう実家離れてたから、私はそれを見てない)
 イヌ殿の場合、死ぬ時期って自分で分かるみたいでね、エサも食べないし水も飲まなくなるの。
 三日ほどじっと眠ってるんだって。意識はあるけども、もう朦朧としてる感じね。
 最期は一発遠吠えして息を引き取ったって話しだった。
 遠吠えはなんだったのか、今もって家族の謎・・・。イヌ語で何かを言ってたんだろうけど、よく分からないの。(Jさん)


 たぶんゴロの遠吠えは「ありがとー、いってきまーす」だと思う。
 コマもエサをせがむときの「ハングリー吠え」で決めてほしいな。

 先週日本に残していたペットのフェレットが逝ってしまいました。
 そばにいて触れてあげることすらできなかった事がとても心残りでしたが、今はもうつらい思いをしていないだろう事に自分を納得させています。
 この子の前に死んでしまった子はあっという間に癌が体中に広がってしまい、手術をすることもできませんでした。
 最後は自分の口から栄養を取れなくなった子に2日に一度の皮下注射による栄養補助で延命治療をしました。
 完全な私のわがままです。一日でも一時間でもそばにいて欲しかったので痛い思いを長引かせてしまいました。
 この選択が正しかったのか今でも自信がありませんが、でもとても大事な時間でした。(Rさん)


 「この世にまちがった選択ない」と言い切りたいね。

 ちゃー坊という猫がいます。結婚してすぐダンナがまだろくに目も開いてない子猫だったのを拾ってきたのでした。
 スポイトで一日に何度もミルクをやって、エプロンのポケットに入れて育てました。今17歳(コマと同じ年)。長男より1歳お兄さんです。
 足腰が悪く高いところにジャンプできない平面猫です。
ここ何ヶ月もお漏らしするようになって(トイレに行く意思はあるが、行く前に出てしまう)オムツをしています。
 食い意地が張っていてご飯を食べてないふりをしてねだって、2度食べたりします。一日中同じところで同じカッコで寝てたりして、息子が死んでるんじゃないかと心配して突っついたり、名前を呼んだりするとメンドクサソーに目をあけてシッポで返事をします。
 今年の猛暑を乗り切れるかな、と思ってましたが元気みたいです。
 コマちゃんは、まだまだ生命力に溢れているように私には思えます。手術をすることが延命処置だとは私は思わない。だって、エサをねだるのは生きる意思があるからでしょう?
 抗生物質は、砕いて少量の水(ほんの茶さじ半分)で溶き、針をつけていない注射器(獣医さんにもらう)で喉に流し込むといいです。
 長生きを願うのも人間のエゴ、すでに飼うこと自体が人間のエゴ。
 でも繋がれていない彼らが帰ってくるのは彼らの意思です。
 コマちゃんはakiraさんの愛情を信頼しきっています。
 だから、akiraさんがいいと思うことはコマちゃんにとってもいいことなのです。
 akiraさんがもっとコマちゃんと一緒にいたいなら、そうすればいい。
 どんな選択をしても死んでしまったときには後悔するんです。
 だからakiraさんがいちばん望んでいることをしてください。(Eさん)

  すごい、これは励ましになるなあ。

 愛犬の猿之助(エンノスケ)が昨日静かに旅立ちました。
 鼻に腫れ物ができちゃって、最初は獣医から止血剤とかもらったんだけど、飲んでも調子悪くなるだけだし14才って年もあったから自然の流れにまかせました。
 年取ると食べるのがめんどくさくなるらしく、出してもあんまり食べない。
 母親がずいぶん心配して、俺や親父がコンビニのハム食ってる横で、犬が名古屋コーチン食ってたこともしばしば!
 犬の皿から初めて食べ物をちょろまかしました。それでも腫れ物が口にも広がり食べなくなったとき、
俺がおどろいたのは母親が猿之助の口の横からコインでも入れるみたいに食べ物をねじ込んで、今日は三つ押し込んだら自分で食べ始めた、とか今日は5つ、とか言ってるのを見た時。
 介護ですよ、最後の一ヶ月は。
 最後はキムタク並みにウィダー・イン・ゼリーのみ。手術も考えたんだけど、鼻とかあごへの手術は
麻酔も含めてダメージ大きいし、再発もするだろうから、ね。
 猛暑だったからいつも軽く冷房を効かせてあげて、早朝と深夜にゆっくり散歩して、立てなくなってからは一緒にご飯食べて、最後に大量におしっこして、うんこかき出してあげて、静かに眠るように旅立ちました。
 丁寧に準備ができて、こころをたっぷり交わらせて、悲しさは昇華しきって、今は全てが家族の心の中、なんだか魂をみんなにわけて、俺らはその魂を丁寧に丁寧に受け継いで、なにも変わらない今がある、って気分です。
 賢い犬でね、自分が苦しいと俺を連れ出して獣医にいったり、弟の菊五郎(ハスキー)が家から飛び出して死んだとき俺がタバコ吸おうとしたら、俺のライター奪って雨の中に捨ててきたりしてね。
 沢山の黄金色の思い出の中、かっこよく生き切った、猿之助でした。(H・Kさん)


 写真も送ってもらったけど、猿之助は凛々しい犬だね。 いつかカムイモシリでコマといっしょに遊んでやって。
 最後にうれしい知らせを届けよう。ジャンベつながりで結婚した小山田竜二と伊織に赤ちゃんが生まれた。

 この間はアポなしにおじゃましたにもかかわらず、良くしてくれて、あらためて明さんのサービス精神の大きさを感じました。本当に突然御邪魔しました。
 おかげで、ついに生まれました。27日の22時35分、体重は2560グラムで男の子でした。何かといろいろ心配ごとがたくさんあって、どうなるんだろ う?と思っていましたが、無事に生まれました。
 陣痛が来始めてから、約2時間という大安産でした。自分も立ち会い最後には、へその緒も切らしてもらいました。
 今まで、子供が可愛いとあまり感じたことが無かったのですが、やっぱり自分の子は可愛いもんですね。人並みですが、やっぱり可愛い!!
 という親ばかな報告でした。

 やったー、おめでとう!
 オレたちの世界へやってきてくれてありがとう、
 この両親を選んでくれてありがとう、
 この世界はつらいことやかなしいこともいっぱいあるけど、
 楽しいことをいっぱいシェアしよう。

4 october (mon)
15 electric moon

 吾輩はコマである。
 どこで生まれたかというと、亜米利加国ニュージャージー州の薄暗いじめじめした部屋でニャーニャー泣いていたことだけは記憶している。吾輩はここではじめて人間というものを見た。然もあとで聞くとそれは芸術家という人間中で一番獰悪な種族であったそうだ。この芸術家というものは時々我々を捕らえて煮て食うという話である。
 時は流れて17年。
 吾輩は病人である。
 いや、「病猫」である。つーか、ビョウビョウって読むとかわいくない?
 ないのである。
 なぜ「ない」ので「ある」という哲学的矛盾が存在するのかというと、そんなこたあどうでもいいのである。
 なぜ「そんなこたあどうでもいいの」かというと、
 本日、吾輩は手術である。
 「吾輩=手術」なら、「ブラックジャックは吾輩の天才だ」や「我が肺摘出吾輩」になってしまうという指摘もあろうが、そんなこたあどうでもいいのである。
 吾輩は恐怖である。
 「吾輩=恐怖」なら、ノストラダムスのは「空から吾輩の大王が降ってくる」だし、夏目漱石のは「恐怖は猫である」という言葉を話す化け猫ホラー小説になってしまうが、いきなり手術台に寝かされ、左の太ももから血を抜きとられたのである。
「貧血のおそれがあるので血液検査します」
 芸術家という人間中で一番獰悪な我が飼い主は、美人女医に見とれるばかりで吾輩の症状などどうでもいいのである。
「皮をつまんでもどらないのは、脱水症状を起こしてるからです。高齢になりますと肝臓や腎臓の機能が弱ってきますので、老廃物を排出しにくくなります」
 飼い主は「なるほど」などとうなずきながらも、女医の目に釘づけである。
「水をたくさん飲むし、しょっちゅうオシッコをしてるんで健康的かと思っていました」
 女医は吾輩の背中をつまみ、麻酔注射を打ちこんだ。静脈から血を抜かれるよりは痛くなかったが、体が重くなってくるのである。
 眠ってはいけない。香港で猫を食ったことのある獰悪な飼い主はこたつで猫鍋を囲み、美人女医の股間に足を伸ばすつもりである。ああっ、目の前をピンクやイエローの蝶々が飛んでくる。「夢のなかへ、夢のなかへ、いってみたいと思いませんか」と吾輩を誘うのである。このまま意識を失うと猫鍋になってしまうので、吾輩は幽体離脱をしてやつらを監視することにした。吾輩はエーテル体となって肉体をはなれ、天井すれすれに浮かんで自分を見おろす。
 おおっ、吾輩はあはれである。
「吾輩=あはれ」なら、「源氏物語」の本質は「ももの吾輩」だし、「Drスランプ」は「バイちゃ、吾輩ちゃん」になってしまうが、そんなこたあちょっとちがってもどうでもいいのである。
 2度目の麻酔注射、3度目の麻酔ガスを嗅がされ、吾輩は手術台のうえによこたわっている。獰悪な飼い主は女医にたのみこんで見学の許可を得た。女医とアシスタントはブルーの手術着をつけ、銀色のメスやハサミをいっぱいならべている。
 吾輩の顔に布がかぶせられ、真ん中の穴から右あごにできた腫瘍だけが露出される。アシスタントが醤油色した消毒液をスプレーで吹きかけ、女医が刺身包丁ならぬ電気メスをふるう。
 熱っ!
 おい、湯気たてて焼き切るなよ。吾輩はエーテル体なので熱くはないのだが、吾輩の肉が焦げる焼き肉の匂いが芳ばしい。じゃねえよ、あんなに痒かった腫瘍が骨付きカルビをはがすようにとれていく。この1年というものマジ痒かったぜ。吾輩は痛いのはわかっていても血を飛び散らせて引っ掻いてしまっていたのである。
 ジジッ、ジジッと電気メスはピンクの肉塊を切りとった。
「露出していた腫瘍は削除できました」女医は毛穴から噴き出す汗をぬぐいながらふりかえった。
「はあ」
 それをなんだよ。なんと獰悪で無責任な飼い主は居眠りしていたのである。
「つぎは問題の皮下腫瘍にかかります」
 吾輩の腫瘍は2つあって、唇に露出したものよりも、のどにかかる皮下腫瘍のほうが危険と言われていた。リンパ節が腫れていたり、重要な神経に癒着していると、エサが食えなくなる可能性がある。
 吾輩の生きがいは、ツナフレーク「愛情物語」だけである。
 この喜びを奪われたら、天国に逝くしかない。

「あれ?」
 女医の驚きに、無責任な飼い主が動揺して立ちあがった。
 たとえば着陸寸前の機内アナウンスで、機長が「あれ?」とか言ったらヤバイだろう。
「水が溜まっているだけでした」
 つまり、危険な皮下腫瘍は、炎症による「水たまり」だったのである。
 幽体離脱から飼い主に憑依して心を読むと、
「ネアリカンの明子さんのガンが消えたように、コマの腫瘍が消えちゃったよ。みんなの祈りがとどいたんだぜ。祈りイズビューティホー、コマの腫瘍を消したんだよ。神様ありがとう」とあくび泣きじゃない涙を流してる。
 吾輩じゃなくて、人間はバカである。
 自分の都合がいいときだけ神様とやらに感謝して、悪いときは神様のせいにする。
 腐ったアサリのような膿汁を流しつづける腫瘍は取り除かれ、まわりの健康な皮が縫い合わされる。青みがかったアクリル糸が縛られ、傷は内側に押しこめられた。
「終わりました。見てください」
 女医のひたいに光る汗に飼い主は引きよせられ、真上から吾輩の肉体をのぞく。
「唇もだいじょうぶですね。すばらしい手術をありがとうございました」
「10日後くらいに抜糸がすめば、エリザベスカラーがはずせます」
 吾輩はふつうの男の子に帰りたい。
 戴冠式ならぬ退冠式で、このうざったい襟巻きから解放されるのだ。
 吾輩にとってエリザベスの責務は重すぎる。しょっちゅうタンスや本棚にぶつかるし、こたつにももぐれない。
 女王の地位を降りるのはちょっと淋しいが、人間中で一番獰悪な芸術家が記念写真ならぬ、「記念ネアリカ」をつくってくれた。
 吾輩はCOMA(危篤)である。
 見て、見て!

5 october (tue)
16 electric moon

 コマの回復は驚異的である。
 先生はコマの血液検査の結果を見て驚いていた。
「いつ死んでもおかしくない年齢でこれだけ生命力のある猫ははじめてです」
 みんなのおかげである。手術中もオレをアンテナにして「励ましテレパシ」がパシパシはいってきたもん。

 コマの様子はいかがですか?
 状況が状況ゆえ笑ったらいけない、失礼だ、と思いつつ、エリザベスの肖像「コマのカムイ」を見比べて、笑ってしまいました。
 コマの涙が切ないです。エリザベスカラーの我が身を嘆いているようで。(それもこれも、コマの手術が無事終了した日記を読ませて頂いたからです。)
 人間だったら手術したあと、脊髄から「痛み止め」の注射を入れて痛みを和らげますよね。ネコや犬などの場合、どうなんだろう?
 この痛み止め薬を何日分処方しますので、飲ませてくださいね。とかなるんだろうか? ひたすら体力の回復をまっているのでしょうか? 今のコマは。
 最初のころのネアリカ、本当に強烈な印象、圧倒される画面で突きつけてくる意思を感じておりましたが、最近のネアリカの雰囲気は又違いますね。どちらも好きですが「アラハバキ」や「コマ」、「自画像」などふっと一呼吸おいたような、そんなネアリカも素敵です。
 おおらかな印象を受けています。(Sさん)


 痛み止めはなかったなあ。
 動物の野生を信じているのか、異常なほど痛みを回避したがる人間のようにしなくていいのかもしれない。
 しかしコマは、「必ず飲ませてくださいね」と言われた抗生物質はあいかわらず器用によけている。そうそう、昨日すごい大量な耳ダニを顕微鏡で見せてもらったんだけど、耳の消毒スプレーは飛んで逃げる。きっとコマは、オレが水鉄砲で攻撃してると思ってんだろう。
 人間はどこまで関われればいいんかなあ?

 「コマ」のネアリカ見たよ!
 ぶりウケ!
 こっちはMacのファインダー越しに勝手に爆笑です。
 不謹慎かもしれないけど、気を悪くしないでね。
 あの2重にコブみたいになってたのは、水がたまっていたのね。
 よかったね〜!
 ううん、こりゃー、アレだね。
 Gods missionだよ(ブルースブラザーズのノリで♪)
 安易に言いたくない言葉だし、アンチ・アイデンティファイ派だけど。
 コマ殿はまだ「逝ってよし」じゃないんだよ、きっと。
 取り合えず、ひと段落だね。
 食欲があるってことはいいことだし、ともかく回復を待ちましょう。(Jさん)

 コマは朝、オレの胸のうえで金縛りをかけるし、餌もバリバリ食っている。
 「食意地」は生命力の基本かも。
 
 コマのカムイかっこいい!
 毛糸で出来ているとは思えない!
 すごいネアリカパワーだなぁ・・・
 ハーブのカムイは色見が好き。
 ただただ、すごい!
 なんかねぇ、AKIRAさん、
 人として大きくなるってどういうことなのかな?
 よくわからなくなってしまいました。
 空気を読んでそつなく生きていくことが大人で、それがいいことなのかな?
 人として成長するってなんだろう?
 私は、色んな人がいて色んな価値観が在って、沢山のことを肯定していきたいのに。
 最近はおまえは変だって、何人かに言われて、なんて誉め言葉だろうとも思うけれど、ちょっと傷ついたりして。
 むずかしいなと思います。(Nさん)

 コマだけじゃなく、人はみな「社会的役割」というエリザベスカラーをつけている。
 時と場合によっては必要なもんだが、一生するのもウザい。
 社会と帳尻を合わせながら、
 タイミングを見計らいながら、
 給料と旅費を計算しながら、
 ここぞという時がきたら、

 ドバッとはずしてやれい。

6 october (wed)
17 electric moon

 「ダビンチ」から音楽に関するエッセイを依頼されたので、どのバンドについて書こうか迷った。
 真空メロウの「ズワイガニ」は名作だし、AKEBOSHIも捨てがたいし、UKロックのニュージェネレーションTHE MUSICも勧めたい。
 やっぱオレが今いちばんハマってる22−20sについて書こうと思ったが、「ダビンチ」は本の雑誌なんで、日本語の歌詞がブッ飛んでるシロップ16gにすることにした。
 そこで今日は22−20sを紹介する。
 はじめてやつらの「Why don't you do it for me」を聞いたとき、胸がかきむしられた。思春期に吹き荒れたエストロゲンの嵐がよみがえり、せつなくてせつなくて絶叫しそうになる。
 ひとことで言えば、「凶暴な叙情」を現在世界で唯一表現することに成功したバンドである。
 イギリス北部のリンカーン出身でまだ10代のメンバーは、マーティン・トリンプル(vo./g.)、グレン・バータップ(b.)、ジェームズ・アーヴィング(ds.)のスリーピースバンドである。
 「ブリティッシュ・ネオ・ブルーズの先駆者」と賞される扇情的なライブにレコード会社が殺到し、争奪戦は過去10年間で最大の事件となった。
 中学で出会ったマーティン(vo./g.)とグレン(b.)は同じ日に同じ店でギターを買った。中学生のやつらはブルースを聴きまくり、地元のブルース・ライブハウスでライブに明け暮れる。オリジナル曲は伝統的なブルースを逸脱し、ロックへと接近していく。
 バンド名の22-20sは、ブルースの巨匠、スキップ・ジェイムスの「22-20BLUES」からもらったという。
 6曲入りのライヴ・ミニ・アルバム「05/03」は限定枚数のため完売され、オレの手元には5曲入りの「WHY DON'T IT FOR ME」と11曲入りのデビューアルバム「22−20s」がある。
 もちろん買うにはフルアルバムのほうがいいのだが、5曲入りの「WHY DON'T IT FOR ME」のほうが出会いにはベストだな(ああ、在庫切れか)。「凶暴な叙情」がこれでもかと濃縮されている。
 そうそう、来月には日本での単独ツアーが決行されるぜ。

TOKYO .
11.29 (mon) ・ 30 (tue) Shibuya CLUB QUATTRO
OPEN 18:00 START 19:00
5,500YEN (adv.with 1 drink)
 
OSAKA .
12.2 (thu) Shinsaibashi CLUB QUATTRO
OPEN 18:00 START 19:00
5,500YEN (adv.with 1 drink)
 
NAGOYA .
12.3 (fri) Nagoya CLUB QUATTRO
OPEN 18:00 START 19:00
5,500YEN (adv.with 1 drink)

 とか書いていたらすげえ地震がきて、ギターが倒れた。
 広島の春駒さんから「だいじょうぶですか?」と電話があり、ついでに11月20日(土)の「同時出版記念パーティー& 全ネアリカ展」(渋谷「Space Edge」)の司会もたのんだ(交通費だけで3万円かかるのに、ギャラは1万円しかでないマイナスボランティアで、しかも春駒さんの弾き語りもあり
)。
 前回の「ネアリマスパーティー」はネアリカを作品として鑑賞することができなかったんで、今回は完璧なギャラリースペースで展示する。もちろんプチ・ネアリカの新作も見られるし、抽選でプチプチ・ネアリカのプレゼントもあるよう。ほぼ決まったんだけど、そのうち正式に発表するから、あせんないで。

 今日もずっと22−20sを聞きながら「アヤワスカのカムイ」を貼っていた。
 「ジャングルと愛」をどう表現するかで悩んだけど、こんな感じになった。
 見て、見て!

7 october (thu)
18 electric moon

 期待を
 裏切り
 つづけろ
 ケロッ

8 october(fri)
19 electric moon

 ついにオレも農業に目覚めた。
 家のまえにある30センチ幅の花壇に、野菜たちが葉を茂らせはじめたのだ。南向きなので日当たりはいいし、思いだしたときに水をやるていどだ。
 オレは2000年のいのちの祭りで自然農法の神様川口由一氏の指導を受けたし、岡山で自家農園をもつチカちゃんから放っておいても勝手に育つ種をもらった。引き抜いた雑草をうえにかぶせておくだけの「放置プレイ」農法である。
 あとは大地と太陽と雨が育ててくれる。
 自分で野菜を育てていると、いやな雨も恵みに感じるし、
 晴れれば太陽に感謝するようになる。
 かっこよく言うと、感性のリズムが自然とシンクロしてくるんだなあ。
 1ヵ月ほど前に植えたのは、ポテト、ニンジン(夏まき鮮紅と黒田五寸人参)、レタス、ルッコラ、ラディッシュ(赤カブ=二十日大根)などだ。収穫は、ニンジンは来年の4月、ポテトが今年の11月、レタスとルッコラは今月末、ラディッシュはあと1週間くらいかな。
 間引いた葉っぱをサラダで食べる。
 自分で育てた野菜の味は格別だね。
 「農場主」としての歓喜が舌に広がるぜ。
 そうだ、農場の名前を考えよう。
 新しく育ってくる命たちに希望をこめたものがいいな。
 よく自分の子供に親の名前を一文字つかったりするよね。
 「明」で考えると、
 「明るい農場」じゃ芸がないし、
 「明星農場」だとチャルメラみたいし、
 「明畑」とかはたかれそう。
 はたけ?
 はたけ、
 たたけ〜、
 おいらにゃ〜
 獣の血がさわぐ〜
 だけど、
 ルルールル−
 ルルルー、ルルルルー!
 明日ニャー(コマのコーラス)
 きっとなにかある〜
 明日はどっちだ
 (アニメ「明日のジョー」のテーマ曲)

 決まったぜ!
 農場の名前は、

「明日のージョー」にはルッコラとラディッシュの葉が茂る。左下はニンジンの葉も生えてきたぜ。

 みんな職場の人間関係や人生で悩んでいるのに、こんな看板をいっしょうけんめいノコギリで切ったり、アクリル絵の具で描いている自分が情けない。
 こ
ういう暮らしをしててゴメンなさい。
 楽しいことしかできないバカを許してください。
 アリさん、歌うしか能のないキリギリスは、
 「ワリとギリギリっす」

 美味しいサラダを食いながら、
 今日も毛糸を貼りました。
 「想い」は「形」にしないとだめなんだ。
 見て、見て!

9 october(sat)
20 electric moon

 台風22号が関東地方を直撃した。
 東日本では過去最大の規模で、風速は30メートル、土砂流入や増水のために中央線が止まった。
 雨に打たれたせいか微熱がある。
 今朝寒くて目覚めたら布団が落ちていたのも風速30メートルで飛ばされたんだな。
 いやいや、疲れがたまったのだろう。プチネアリカをはじめると止まらなくなって夜中すぎまでやってしまう。10枚が終わったところで、「ひと休みしろ」という体の警告だ。
 作品に没頭すると、体がボロボロになる。脳内麻薬オピノイドが鎮痛剤の役目をして、突っ走らせる。免疫の低下が臨界点に達したとき、風邪をプレゼントされるわけよ。
 働きすぎはよくないね。
 アマゾンのインディオみたく、ふだんはハンモックで昼寝して食料が切れてから狩りにいくってのが理想かも。
 風邪と台風は似ている。
 風邪は体をシンメトリーにもどしてくれる「自然の健康法」だと野口晴哉が言っていた。
 台風も「いくら人間があがいても自然の驚異にはかないませんよ」と文明を麻痺させ、ウオッシュされた翌日には「台風一過」の晴天をくれる。
 ちなみにオレは最近まで、「台風一家」だと思っていた。台風の凶暴さも澄みわたった空も、ひとつのファミリーって意味だと思っていたのだ。
 このまま風邪ひくのかなあ?
「べらんめえ、こちとら宵越しのストレスはもたねえ」
 風邪も台風も贈り物だ
し、
 まあ、いっか。
 (落語家じゃねえんだし、オチを自分に課すな)

10 october(sun)
21 electric moon

 哲学界のアマノジャック・デリダ(74歳)が死んじゃったよ。膵臓(すいぞう)ガンだって。
 アルジェリアのユダヤ系というのがそもそもデリダにマージナルな(主流からはずれた)視点をあたえた。プラトンからニーチェやハイデッガーまでの全西洋哲学を敵にまわして戦った男だぜ。
 独断と偏見で解釈するが、デリダが唱えた「脱構築」(デコンシトラクション)は、脱肛がチクリと痛むわけではない。
 えへん(咳ばらい)、
 オレの「天の邪鬼主義」そのものである。
 オレだっていつもギャグばかり考えているわけじゃないぞ。
 なめたら、あ観世音菩薩。
 たまには哲学談義だってしちゃうんだから。
 ギリシャ時代から現代までの西洋哲学はロゴス中心主義であった。
 「ロゴス」とはラモスの弟ではなく、言葉による表現からはじまって、理性や論理、秩序や摂理を意味する。特徴としては、整合的、客観的、合理的、明晰、筋がとおっていると、いいことずくめの優等生である。
 対極にある不良は、感性を意味する「パトス」である。
 不良哲学者デリダは、聖書の冒頭にある「はじめに言葉(ロゴス)ありき」という柱で建てられた巨大な西洋建築をかたっぱしから壊していった解体屋である。
 西洋が「これロゴスっぽくないから、いらな〜い」と捨てていったものをあさる変態ゴミ屋でもある。
 たとえば主婦がピーマンの肉詰め(この料理は世界に広く分布している)をつくるとき、へたと種をゴミ箱に捨てたとたんにデリダーマンがあらわれる。青いタイツの胸には「P」のパトスマークがあり、赤いマントには「絶対にダメ! ロゴス」と暴走族風な楷書体で刺繍されている。
 デリダーマンはニーチェの「超人」(スーパーマン)を笑い飛ばす確信犯な偽ヒーローだ。
「奥さん、ピーマンの種にはいちばん栄養がつまってますねん。あんたがつくっとる美味しそうなピーマンの肉詰めも、それを食べて喜ぶご主人の笑顔も、それを栄養にして有名私立大学に受かる息子の将来も、あんたが捨てたこの種に詰まっとるんやわあ」
 主婦は思いっきり不審人物なデリダーマンを家宅侵入罪で警察に訴えようとするが、手をにぎられる。
「理性で考えちゃあきまへんで」
 ロマンスグレーのデリダーマンはそこそこかっこいいので、主婦は「たまにはいいんじゃない、いけない火遊びも」とデリダーマンの尻を抱きしめる。
「痛っ、脱肛の塗り薬、忘れてきてしもうたわ。種だけ、わしがもろうとく」
 デリダーマンは、あっという間に消えてしまった。
 真実(ロゴス)ほど退屈なもんはない。

11 october(mon)
22 electric moon

 「笑いとは、地球上で一番苦しんでいる動物が発明したものである」
 とニーチェは言った。
 昨日ニーチェの「超人」(スーパーマン)にふれたら、本当にスーパーマンが死んじゃったよ。
 映画「スーパーマン」の主役クリストファー・リーブ(52歳)は95年に落馬して半身不随になり、昨日心不全で死亡した。
 ニーチェは「神は死んだ」と言い、スーパーマンの時代が来ると宣言した。
 あれから100年あまり、
 …… ついにスーパーマンも死んだか。
 ニーチェの代表作「ツァラトゥストラはかく語りき」は、オレの愛読書だった。23年ほどまえ、ニューヨークでマリファナでぶっ飛び、大笑いしながらこの本を何度も読んだものだ。オレにとって「ツァラトゥストラ」は、最強のギャグ本だったのである。
 ニーチェほど誤解された哲学者はいない。「権力(自己実現)への意志」や「奴隷制度の肯定」を勝手に解釈したヒットラーや、ブッシュ的な一神教父兄制社会のプロパガンダに利用されてきたので、ちょっとかわいそうだ。
 そうそう、ニーチェの「スーパーマン」にもどろう。映画にでてくる青タイツの「スーパーマン」とはちがうよな?
 30歳から10年も山ごもりしてたツァラトゥストラ(ゾロアスター教の神からとった)は、急に悟って町におりてくんだけど、市場の群衆にいきなりスーパーマンの演説をはじめる。

 聞け、私は君達に超人(スーパーマン)を教える。
 超人は大地の意義である。君達の意志は、こう言うべきである、超人が大地の意義であれ、と。兄弟たちよ、私は君達に切望する、大地に忠実であれと。君達は地上を超えた希望を説く人々(天国を餌に信者を集める牧師)を信じてはならない。彼等こそ毒の調合者である。
 かつては、神を冒涜することが最大の冒涜だった。しかし神は死んだ。そして神とともに、それら冒涜者達も死んだのだ。今日では大地を冒涜することが、最も恐るべきことである。知り得ないものの内臓(神)を、大地の意義以上に崇める事が。

 おいおい、市場の群衆はひまつぶしに綱渡りを見に集まってただけなのに、いきなりハイテンションな乞食が登場して「神は死んだ」と叫ばれてもなあ。「こういうむりやりな展開ありえな〜い」というのがニーチェの書ぜんぶを貫いていて笑えるのだ。
 しかもハイテンション乞食は自分をスーパーマンと称し、「スーパーマンにとって人間は猿だ」、「おまえらはウジ虫の末裔だ」、「おまえらは終わってる」とののしる。

 飼い主のいない、ひとつの蓄群!  誰もが同じものを欲し、誰もが同じだ。考え方が違う者は、自ら精神病院へ向かう。

 群衆が、「おめえの綱渡りな演説は聞きあきたから、綱渡りを見たい」と言うのもごもっともだ。しかしハイテンションスーパーマンはつづける。

 人が超人となるためには精神の三段の変化を実行せねばならない。

 スーパーマンの言うことを要約すると、
 一段階は、重く苦しいものを背負って歩む「ラクダ」。
 二段階は、己自身の支配者となるべき強い意志をもった「ライオン」。
 三段階は、「子ども」である。

 社会の価値観に従ってると「楽だ」(ラクダ)。
 自分の価値観に従ってると忠臣蔵みたいな「志士」(ライオン)になちゃうし、
 いろんなものと自由に遊べるものが「個ども」なんじゃないかな。さまざまな価値観を笑い飛ばして、「我がまま」に遊べる子どもがニーチェの理想だったのかも。

 ハイテンションスーパーマンのおもしろさは、「自分で言っておいて、ひっくりかえす」とこだ。自分で新しい価値を創造しておいて、それを自分で壊してしまう。スーパーマンはつねに自己を越えていかねばならない。
 切磋宅撫で自分を削る彫刻家ならぬ、「超克家」なのである。
 しかも「子ども」は到達点じゃなく、またラクダになるって、また振りだしかい?
 ニーチェが語る覚悟は、「くりかえす勇気をもった者こそ、スーパーマンである」と。
 西洋思想においてニーチェが革新的なのは、東洋の「輪廻」を受け入れるこの「永劫回帰」である。

 お前たちがかつて一度を二度欲したことがあるなら、
 かつて、「お前は私の気に入った、幸福よ、刹那よ、瞬間よ」と言ったことがあるなら、
 それならお前たちは一切のことの回帰を欲したのだ。
 一切のことが、新たにあらんことを、永遠にあらんことを、
 鎖によって、糸によって、愛によってつなぎ合わされんことを、お前たちは欲したのだ。
おお、お前たちは世界をそういうものとして愛したのだ。
 お前たち、永遠な者たちよ、世界を愛せよ、
 永遠に、不断に。
 痛みに向かっても、「去れ、しかし帰って来い」と言え。
 すべての悦楽は永遠を欲するからだ。
 深い、深い永遠を欲する。
 地上に生きることは、甲斐のあることだ。
「これが“生”だったのか」
 わたしは死に向かって言おう。
「よし!それならもう一度」

 ニーチェの核心はここにあると思う。
 すべてを肯定して、
 無条件に遊ぶ、
 覚悟 。

 夢は、全く見ないか、おもしろい夢を見るか、どちらかだ。
 起きている時も同じだ、
 全く起きていないか、おもしろく起きているか。

 神は死に、
 スーパーマンも死に、
 つぎの時代はどうなるのだろう?
 ハートマンか?
 明日死ぬかもわかんないから、独断と偏見でも言っておこう。
 すべてが神だと気づく時代がくる。
 人間だけじゃなく、大地も空も木も虫も動物も石ころよりもちっぽけな自分も、神だと気づく時代がくる……気がする。
 ウレシパモシリ(すべてが育み合う大地)がもどってくる。

12 october(tue)
23 electric moon

 埼玉で7人が集団自殺した。
 秋の味覚サンマが焼ける練炭をレンタカーに4つもちこんでいた。10代から20代と思われる男4人と女3人は出身地がバラバラなので、自殺サイトで知り合ったと思われる。
 ネットの集団自殺がふえているが、ひとりより集団のほうが死にやすいのではないだろうか?
 ひとりだと死ぬ瞬間まで自由意志で選べる。しかし自殺という目的集団になったとたん、自由意志は剥奪されるのだ。
 「赤信号、みんなでわたれば怖くない」である。
 三菱自動車の欠陥隠しも、UFJ銀行の検査妨害も、自民党の献金問題も、イラク戦争も、ヤクザの抗争も、暴走族のケンカも、イジメも、新興宗教の洗脳も、
 すべては「集団」という特殊な心理から生まれる。
 人間の子どもは脳が肥大したためにほかの動物の子どもより早い段階で産み落とされる。(ネオテニーという進化戦略だが、くわしくは2001年11月21日の日記を読んで)
 人間の子どもは長期間にわたり親に依存しなければならない。ミルクや食べ物は与えてもらえるし、自分で生存努力をする必要もない。
 ここでなんらかの規範に自分を預ける萌芽が形作られるのだ。
 その後も、幼稚園、小学校、中学、高校、会社と集団洗脳にさらしまくられる。
 「出た釘は打たれる」し、変わった子はいじめられるってのを身をもって教えられるんだよな。
 これは今日にはじまったことじゃないし、人類史を見れば目をおおいたくなるぞ。
 王や国家、部族や民族、宗教や教祖、正義や大義、思想や主義などが殺した命は、個人的な殺人者の何億倍にものぼるんだろう?
 集団に個を「預ける」ほど危険なことはない。
 オウムやヒットラーにしろ、左翼や右翼にしろ、国家や会社にしろ、
 集団は自己保存の法則を麻痺させ、熱狂的な献身によって判断力を放棄させる。
 仕事や恋もふくめて「〜のため」はやばいぞ。
 あくまで「自分が好きだからやってる」というクールな自由意志を失なわないようにしないとね。
 世界でも類をみないチョー不快な満員電車に揺られているんだけど、
 それを選んだのは自分だ。
 人生でもチョー不幸なはずれくじ引いたんだけど、
 それを選んだのは自分だ。
 仕事でもチョーありえない理不尽を押しつけられてんだけど、
 それを選んだのは自分だ。
 親とかもチョー最悪な環境なんだけど、
 それを選んだのは自分だ。
 恋愛でもチョー馬鹿なやつに出会っちゃったんだけど、
 それを選んだのは自分だ。
 自分ひとりで選んだんだ。
 自分の自由意志で選んだんだ。
 そう考えなきゃ、自分がいる必要、
 チョーないじゃん。
 「群れるな!」
 と叫びたいけど、
 誰もひとりじゃ生きられないんよ。
 練炭にあたって死んでいった自殺者たちよ、
 ゆっくりお眠り。
 今度生まれたら、ひとりで死んでみよう。
 そのつぎ生まれたら、ひとりで生きてみよう。
 そのまたつぎ生まれたらみんなと生きてみよう。
 永遠にもどってくるんだから、
 ゆっくり、ゆっくり、
 学んでいけばいいよ。
 だいじょうぶ、
 だいじょうぶ。
 だから安心して、
 おやすみ。

15october(fri)
26 electric moon

 マスコミは、自殺サイトやネット犯罪などを躍起になって批判してるけど、
 集団自殺者も、この日記を読んでる君とオレも同じ蜘蛛の巣(ネット)でつがっている。
 幼稚園の運動会でシュボジー(4歳)がリレーでころんだときのように、
 自分の知らない人の死でさえ、
 痛い。
 すりむいたひざから滲みだす赤、
 窒息死の灰色、
 死斑のパープル、
 哀しい色が染みいってくる。
 オレたちはどんなにちがおうとも、
 赤い血を流す。
 赤血球も、
 白血球も、
痛みは銀色の糸で伝わる。

 今この瞬間、
 自殺しようとしてる君へ、
 これだけは知っていてほしい。

 孤独じゃないやつなど、
 この世にたったひとりも
 存在しないって。

16 october(sat)
27 electric moon

 米沢牛 ああ米沢牛 米沢牛

 松尾芭蕉の詠んだ「松島や ああ松島や 松島や」という出産した女優に捧げる句より、なんて情熱的な傑作だろう。
 米沢牛の歴史は廃藩置県のおこなわれた明治4年にさかのぼる。侍がちょんまげを切り、日本人が四つ足の肉を食べはじめる前のことだ。上杉藩は英国と条約を結び、横浜から貿易商チャ―ルズ・ヘンリ―・ダラスを英国語教師として招聘した。ビフテキなる料理を食うダラスは米沢牛をたいへん気に入り、横浜に1頭持ち帰ったほどだ。
 オレは1ヵ月も前からこの日だけを楽しみに生きてきた。米沢と山形でおこなわれる関口先生の講演に出演するのである。地元では最高級の米沢牛ステーキのレストランを予約してくれたという。
 朝の10時すぎに電話が鳴った。あの温厚な関口先生が驚愕の声をあげる。
「ま、まだ、自宅にいるんですか!」
「だって自宅に電話したんだからいるのはあたりまえで……おおっ今日か!!」
 完全に忘れていた。
 天地動転の遅刻だ。10時27分に宇都宮発の新幹線切符までもらっていたのに。
「ぼくらは先にいきます。山本くんが待っているので、すぐ追いかけてきてください」
 そうだ、山本くんの切符までオレがもっていたのだ。10時50分の日光発にのって、宇都宮に着いたのが11時29分だった。
 山本和彦くん(25歳)はひきこもり体験を乗り越え、ひきこもりの当事者が集まれる「ホワイトキャンバス」というフリースペースを栃木県内に10カ所以上もつくった。このような快挙は全国でも例がなく、
「ひきこもり界の坂本龍馬」と呼ばれる偉人である。彼はさまざまな集会や講演に呼ばれ超多忙なスケジュールをこなしている。
 3日まえ、オレから山本くんに電話して「10時に宇都宮の改札で」と約束したのに、偉人を1時間半も待たせてしまった。ひたいをコンクリートにすりつけて土下座するのが本道である。しかしオレの頭は霧におおわれ、いや霜降りの網におおわれ、夢遊病者のごとくさまようばかりだ。
「龍馬どん、昼食に予約つかまつった米沢牛が拙者の不手際で成就できもうさん。かくなるうえは切腹するのが武士の本懐」
「こんな駅の人混みで切腹されても困りますよ」
「じゃあ、一服してくる」
 駅の外でタバコを吸ってから、つぎの新幹線に乗った。しばらくすると山本龍馬殿の携帯に関口城主から画像が送られてきた。
「今、僕たちの目の前に運ばれてきた最高級の米沢牛ビフテキです」
 忠臣蔵も真っ青の「仇討ち」である。
 天然アルツハイマーによって遅刻した罪人にデジカメの米沢牛を送りつけることは、佐渡島のサド、宇都宮の鬱患者をいたぶる罰に日適する復讐だ。
 米沢に着いたのは、講演のはじまる5分まえであった。駅に迎えにきてくれたスタッフがニコニコと近づいてくる。
「アキラさんですよね?」
「貴様、葉隠れの術をつかう拙者の正体をどうして見破ったのじゃ?」
「落ち武者みたいな人だからと言われていたんで」
「貴様、なぜ落ち武者がわかるのじゃ? 」
「うちの息子も中学校から落ちこぼれて、ひきこもったもんで」
 拙者は「人ごみ葉隠れ」用の風呂敷を肩からはずし、なんとなく納得いかないままバンに乗りこんだ。
 会場には30人ほどのひきこもり当事者、父兄がつめかけ、関口先生の話を熱心に聞いている。
 拙者と山本龍馬はビデオカメラに腰をかがめて、いちばんうしろの席についた。
 しばらくすると、若いころの長渕剛を歌舞伎町のチンピラにしたような若者がはいってきた。ひきこもり界の傑作ドキュメンタリー映画「HOME」の主演というか当事者のスーパースター小林博和である。
 関口さんが話してる最中にでかい声で拙者たちにあいさつする無神経さは武士道を逸しておる。拙者はいちおう握手をかわしたものの「武士の風上にも置けぬ者」として侮蔑した。こいつは司馬遼でいえば気まぐれで、無責任な「酔って候」の土佐の山内容堂だ。
 関口先生の書いた
「ひきこもりと不登校 心の井戸を掘るとき」を中心にトークが終わり、われわれが壇上にあがる。
「わたしの講演はこの人たちの前座みたいなものです」関口先生が紹介する。
 山本くん(龍馬)と小林くん(容堂)はひきこもりの当事者である。
 ひきこもりは日本社会のルールに合わず、内にこもった。
 オレは日本社会のルールに合わず、外に出た。
 ぜんぜんべつのように思われるが、逃げたことに変わりはない。
 山本・龍馬と小林・容堂、オレとのあいだには共通の傾向がある。
 「自分本位」、
 「集団嫌い」
 「ルール、ふぁっく!」
 という絶対ゆずれないところで意気投合した。
 深刻な悩みを抱えてる当事者や、お母さん、お父さんの質疑に答える龍馬と容堂が言う。
「ひきこもりは当事者だけの問題じゃありません。今まで心が遠くにいた家族が再会するチャンスなんです」
 さすが龍馬、いいこと言うよな。
 いきなり、とんでもない質問がオレに飛んできた。
「アキラさんとお父さんの関係はどうだったんですか?」
 かなり狼狽した。
 オレは親が死ぬまで許せなかった。
 最悪の子どもである。
 2年前、父が死んで遺品の整理してるとき、メモ魔の父がびっしりと車の走行距離など実務的な数字だけを書きこんだ手帳を見たとき、8月19日のオレの誕生日の日の1行目に、
「明20歳」
 つぎの手帳をあわててさがすと、
「明21歳」
 つぎ「明22歳」と書かれていた。ドメスティクバイオレンスの父が毎年オレの成長を思ってくれたことに号泣した。
 恥ずかしいくらい、涙が止まらなかったのだ。
 オレはギターを抱え、自分と親の感情を新曲「Sorry」で歌った。
 ここに集まったひきこもりの当事者、そのお母さんやお父さんたちの嗚咽が重なる。自分の歌でこんなにたくさんの人が泣いてくれるのははじめてだし、歌で痛みを共有することができることを知ったのもはじめてだ。

「Sorry」

Mama sorry Iユm sorry
こんなはずじゃなかったんだ
期待どおりになれなくて
sorry
Mama sorry Iユm sorry
一生懸命やったんだけど
いい子にはなれなかったよ
sorry
空はこんなにも大きくて
僕はこんなに小ちゃくて
わかってるよ わかってるよ
愛してくれて ありがとう
Papa sorry Iユm sorry
どうしようもなかったんだ
思いどおりになれなくて
sorry
Papa sorry Iユm sorry
僕なりにがんばったんだけど
偉い人にはなれなかったよ
sorry
太陽はこんなにも輝いて
僕にはまぶしすぎるよ
わかってるよ わかってるよ
愛してくれて ありがとう
Baby sorry Iユm sorry
君のせいじゃないんだよ
すべて僕が悪かった
sorry
Baby sorry Iユm sorry
もう一度やり直せるかな
ひざの砂をはらって
sorry
世界はこんなにも頑丈で
僕はこんなにも無力で
わかってるよ わかってるよ
愛してくれて ありがとう
夢はこんなにもふくらんで
僕はもう支えきれない
わかってるよ わかってるよ
自分でも わかってるんだ
わかってるよ わかってるよ
わかってるよ わかってるんだ
わかってるよ わかってるよ
愛してくれて ありがとう

17 october(sun)
28 electric moon

 飯豊の国民宿舎「梅花皮荘(かいらぎそう)」で温泉につかり、ぐっすりと眠った。
 今回の企画者である武義和さんは、教育ルネッサンスを起こした自由の森学園の創設に立ち会い、山形県で「小国(おぐに)フォルケ・ホイスコーレ」を主宰している。英語で言うとフォーク・ハイスクール、「民衆の学校」という意味だ。
デンマークで生まれたフリースクールで北欧5カ国を中心に300校以上もあるという。さまざまな問題をかかえた不登校児を受け入れ、毎年3〜5人くらいの生徒が住みこんでいる。
 美しい自然のなかに手作りの建物があり、冬には雪が3メートルもつもるという。なんといっても武さんと奥さんのあたたかい人柄、もと自由の森学園出身の獣医さんや大工さんのサポートがある。
 
 後列左から、武さんの奥さん、小林容堂、大工さん、
 前列左から、オレ、山本龍馬、武さん、関口先生。
 ドサまわり劇団は2つ目の講演のために山形にむかった。
 げげっ、今度は大ホールに80人もの大観衆ではないか。関口先生が話しているときオレが大あくびばっかするのが気になるというので、ゲスト3人衆は席をはずし、駅ビルの24階にあるレストランへいく。
 やったー、ついに米沢牛にありつけるぜ。しかしメニューにあるのは「山形牛のステーキ」だった。オレは真剣な眼差しでウエイトレスにたずねる。
「米沢牛と山形牛はどうちがうんですか?」
「米沢で育ったのが米沢牛で、山形で育ったのが山形牛です」
 ちがうやーん、そんなことわーってんの。
「 味はどうちがうんですか」
「山形牛もおいしいですよ」
 もー、んじゃ、
「 山形牛御膳ちょうだい」
 焼けた石の上にのせて山形牛を焼く。霜降りからにじみだす脂とバターのような香りがたまらん。うまいぞ、山形牛だって最高にうまいんだぞ。米沢牛なんて名前ばっかじゃないか、無名の山形牛だってこんなに美味しいんだから、米沢牛は……もっと美味いのか?
 武さん、今度は遅刻しないから、もう一回米沢に呼んでください。
 関口さんのトークが終わり、われわれが壇上にあがる。関口さんが自殺をテーマに話したんで会場が暗くなってしまった。我々三羽ガラスが必死に盛り上げ、会場の当事者や家族たちを励ます。山本くんは自分がひきこもったことによって家族が危機をむかえ、親たちが必死で援護してくれた。それまで冷たくなっていた夫婦間に会話がもどり、みちがえるように家族がまとまったという。
 最後はいつものようにオレの歌でしめる。
「危機というのは自分たちが気づくためのチャンスです。ぼくたちはいい学校にはいるためや高い給料をもらうためだけにこの世に生まれてきたのでしょうか? ぼくはたったひとつの目的のために生まれてきたんだと思います」

「Born to love」

青い青い青い砂漠にたおれ
最後の息で君を呼ぶよ
白い白い白い雲がちぎれて
君の笑顔になる

苦い苦い苦いことばかりで
生きてる意味さえわからなくなる
痛い痛い痛いほどの想いを
君に伝えたい

ぼくらはなんのために生まれてきたんだろう?
なくした言葉が聞こえてくる

We were born to love
We were born to love
ぼくらは愛するために
生まれてきたんだ
We were born to love
We were born to love
君を愛するために
生まれてきたんだ

黒い黒い黒い闇を背負って
ぼくは今日まで生きてきた
いつもいつもいつも自分に嘘をつき
ひとりおびえていた

なにがなにがなにがしたいんだ
自分のことさえわからないから
せつないせつないほどの気持ちが
君にとどくかな

ぼくらはいつまで憎み合うのだろう?
遠い約束を思いだすよ

We were born to love
We were born to love
ぼくらは愛するために
生まれてきたんだ
We were born to love
We were born to love
君を愛するために
生まれてきたんだ

赤い赤い赤い子宮のなかで
最初の夢を見ていたんだ
暗い暗い暗いトンネルをすべって
この世界と出会った

甘い甘い甘い唇かさねて
君の孤独を吸い出そう
寒い寒い寒い肌を合わせて
深い傷をなめよう

ぼくらはいつのまに忘れてしまったの?
裸の心が泣いているよ

We were born to love
We were born to love
ぼくらは愛するために
生まれてきたんだ
We were born to love
We were born to love
君を愛するために
生まれてきたんだ

We were born to love
We were born to love
すべてを愛するために
生まれてきたんだ
We were born to love
We were born to love
君を愛するために
生まれてきたんだ


 今いちばんつらい思いを抱えた人々が集まった会場から嗚咽がひろがっていく。
 もしオレたちが何度も生まれ変わるたびに自分でハードルをあげていくなら、ひきこもりの当事者も親たちも最高に勇気をもった人たちだ。
 あたたかい涙をありがとう。

18 october(mon)
1 self-existing moon

 朝めしをつくっていると、友人の加納さんから電話があった。
今、大宮を出るところなんで、1時間ちょっとでそっちに着きます」
「ん?」
「 紅葉も見頃だし、絶好のキャンプ日和ですね」
 つづけてテニスの師匠タカさんから電話があった。
「今、福島を出たんで1時間ちょっとでそっちに着きます
「ん?」
絶好のテニス日和ですね
 完全に忘れてた。
 キャンプもテニスもゴミ出しも完全に忘れていたのだ。
 天然アルツが進行を早めているぞ。
 たぶん3日後には自分の名前も忘れているかも。
 午後2時くらいに素樹から電話があった。
「道をまちがえて、いろは坂にはいったらすごい渋滞で動けません。まだ上りのとちゅうです。アキラさんを迎えにいくのは無理かも」
 げげっ、テント背負ってバスに乗るのかよ。「んなら、いくのやめようかな」と思っていたところに、タカさんが到着した。福島においた車が動かなくなったんで、バイクでやってきたのだ。
 そうか、バイクでやつらを追いかければいいのだ。
 オレはハーレーダビットソンの赤い革ジャンを着て、でかいバックパックにテントをつめ、タカさんのうしろにまたがった。
 渋滞する車のすきまをスイスイとぬけ、逆走ぎりぎりのテクニックをつかうタカさん、恐るべし。ふたりともハーレーの革ジャンだし、ゴーグルをかけたオレのひげとドレッドに走り屋たちもびびり、わざわざ道をあけてくれる。中禅寺湖畔の菖蒲ヶ浜キャンプ場に着いたのは、やつらとほとんど同時だった。
 今回のメンバーは作家兼アウトドア批評家の素樹文生、ヨガ教師兼アウト道師範の加納秀一、テニスマン兼アウトロー・ライダー佐藤隆雄、コンピューターの魔術師兼ドロップアウトオブ自衛隊の半蔵、紅一点は芸能人兼アウトオブ常識の真木千瑛(マキチエ)である。
 
マキチエは加納さんの道場にかようヨガ娘でもあり、いくつかのテレビCMにも登場している。最近は 「星間特捜・アサルトマン」のヒロイン役を演じている。オレのスーパースペクタクル痴呆にせまる天然ボケボケのキャラである。
 渋滞とは裏腹にキャンプ場はがらがらで湖畔の絶景ポイントにそれぞれひとり用のテントを張る。まずはビールで乾杯だ。極彩色の紅葉が青い湖面に写りこむ風景は、まさに極楽浄土を思わせる。まだ逝ったことはないが、
極楽浄土をながめながら飲むビールはまるでブッダの……尿漏れのようだ、ってオムツはずしちゃダメでしょ、おじいちゃんたら。
 山の端に吸いこまれていく太陽の煌めきが消えていくさまにみんなが無言で魅入られる。
 おめえらはプレーリードッグか! おめえらを待ってオレは昼飯を食ってないのに、もう日没になっちゃったじゃねえか。さっさと火をおこせ、バーベキューだ。
「これは、米沢牛か?」
「奥日光の肉屋さんに
米沢牛があるわけないでしょ」
「そ、そうじゃな」
 連日のイベントで頭が耄碌、いや朦朧としている。わけがわかんないまま、どこかに運ばれ、気がつくとカンパーイ!とか、やっているのじゃ。
「あれえ、アキラさん焼き肉のたれをもってくるとか言ってたのに、3センチしかないじゃん。これじゃバーベキューになりませんよ」
「おお、そうじゃった」
「売店で売ってるからジャンケンで買いに行く人を決めましょう」
 ふふ、ケツの青い若人たちよ。君たちはジャンケンの心理学を知っておるかのう、加納さん。
 6人の場合、全員同じ確率は
0.4%、3つに分かれる確率は74.0%、勝負がつく確率は25.6%じゃ。つまり全員同じってことはほとんどないし、4回以上やらないと勝負はつかない。人が歩行するとき、チョキやグーで歩いている者はいない。パーが自然体の基本である。しかし怒っているときや勝負にのぞむときはアッパー系ホルモン・ノルアドレナリンがグーを形作る。チョキというのはもっとも不自然な形態であり、確率的にも勝利率がもっとも低いのだ。ましてやこのメンバーはジャンケン心理学を知らない初心者であり、「最初はグー」をという慣性の法則を踏襲する怠惰な性格だ。
 ジャンケンポン、
 オレは、パー。
 残り全員がチョキ。
 ありえな〜い、一回で決まるなんて。おめえらは緻密な戦略をめぐらす超アウトサイダー、「チョキ族」だったのか。
 完全に打ちのめされた敗北感と人間不信におちいりながらオレは自腹で400円もするエバラ焼き肉のたれを買いにいった。
 夜空には宝石箱をぶちまけた星が散らばる。
 酒だけはたんまりあった。湖畔灯りもひとつふたつと消えていき、焚き火の炎だけを見つめる。疲労と酔いのまわったわしは、表層意識などぶっ飛んで、いちばん深い無意識から語りかける。
加納さんは、性エネルギーを精神エネルギーに変換するために30すぎまで童貞を守ったんじゃな」
 まだ素面の加納さんがギョッとする。
「それが、なにか」
 わしはドラムの巻きたばこを巻いて、ふうっと吐き出す。
「今は、童貞じゃないんじゃな?」
 わしは右目にかかるドレッドをはらって、ヨーダのごとく星を見あげる。
「セックスは、気じゃよ」
「ま、まあ、そうですね」
 老賢者の暴走にみんなとまどっている。
「ヨガの奥義を究めた加納さんのセックスは常人の想像を絶するものじゃ。逆立ちとかするのか?」
 わしの無意識攻撃に加納さんは狼狽しながらも真摯に答えようとする。
「基本的にはふつうの体位ですが、セックスは人間同士のもっとも深いコミュニケーションなのでハタ・ヨーガのポーズも取り入れることもあります」
「やはりそうか」
「えっ、そうかって?」
初心者は逆立ちのポーズに生け花をする」
「生け花ですか?」
「しかし 加納さんほどの境地に至れば、もっともっと常識ではおよびもつかないものを置くはずじゃ」
「たとえば、なにを置くんですか?」
「ひよこちゃんじゃ」
「ひよこって、祭とかで売ってる生きてるひよこですか?」
「ちがーう! ひよこのお菓子じゃ
。あのしっとりとした肌触りがたまらんのじゃ」
「そんなもん置きませんって」
「なに! ひよこちゃんを置くレベルをとおりこしているとな。ありえな〜い、それ以上のレベルはブッダのみが到達した涅槃じゃ」
 わしは炎の眼差しで加納行者を見すえた。
「ま、まさか、おぬしは前人未踏の境地に達し、誰も試みたことのないアレをやっているというのか?!」
「怒らないでください。だいいちひよこちゃんものせてないし、
いきなりアレって怒鳴られても」
「アレだけはいかん。世界中の変態たちが何万年間も輪廻をくりかえしながらも最終兵器として恐れてきた物じゃ。わしさえも86回生まれ変わってきたなかでそれだけは禁じてきたんじゃ」
「そんなハイテンションでまくしられても、なんのことだかわからないです」
 ヨーダはタバコを炎の投げ入れ、生きとし生けるものの哀しみをすべて受け入れることにした。
「はさんだな?」
 加納行者は目を白黒させて、老賢者の金言を待っている。
「逆立ちした股間に、なにをはさむんですか?」
「ちょっと、ちくちくするぞ」
 賢者の言葉とは心に突き刺さるものだ。
「鳩サブレーじゃ」

※ものすごく、すべってゴメンなさい。すべった意味さえわからないでごめんなさい。
 「Born to love」に感動して
ここにきてくださった山形のみなさん、ごめんなさい。
 4年間書きつづたけた日記で、「矛盾=AKIRA」なんです。

20 october(wed)
3 self-existing moon

 いそがしいぞ、なんだかいろんな人がやってくる。
 それも濃い連中ばっかり。アマゾン帰りのトシ(28歳)&ユーコ(27歳)を紹介しよう。
 トシはなんと3年間の世界旅行から帰ってきたばかりである。
 彼は、8歳のときに祖母が死んだのをかわきりに毎年母、父、祖父と肉親を亡くした。高校のとき自分が病を患い入院した。同室で会った同い年の男が看護師になるという夢を持っていて、大学、就職という社会のレールへの疑問持っていたトシは看護への道を歩むことになる。
 3年間学校に通い、無事国家試験にも受かり、病院で働きはじめた。この頃から旅にも興味があったがとりあえず3年間は働こうと心に決め、月日は流れた。
 このまま働くか旅に出るかと迷ったが、社会への疑問、自分自身がこのままでいいのか、若い時にもっと色々な経験がしたいなどの様々な想いがあり、25歳、911後、旅出つ。
 アジア、アフリカ、中東、ヨーロッパ、アメリカ、中米と、2年ほど旅をしていた途中、メキシコで旅行者からアヤワスカとこのホームページの存在を知る。
 そして日記でリュウや友恵ちゃん(そういえば、今日ふたりから電話があったのもすごいシンクロ!)のアヤワスカセッションを読み、オレにどこでできるかメールをくれた。
 彼はタラポトでゴンザレスのセッションを2回受け、その報告メールを日記に抜粋した。
 ユウコは、1年3ヵ月の旅から帰ってきたばかりだ。みんなと同じように、仕事のこと、将来のこと、友達のこと、家族のこと、ちゃんとしなきゃ、ちゃんとしなきゃって、社会で与えられた役割に苦しみながらでも毎日を生活していて、
 本人曰く「きっかけは現実逃避」(フジテレビ風に)。
 8月8日の日記で抜粋した「ダイナマイトで吹っ飛ばされて」も死ななかった女の子である。彼女の旅日記、「世界一周 旅女子」は抱腹絶倒で、超おすすめだ。オレもひとりで爆笑し、「アヤワスカ」のところで何度も泣いてしまった。ちょっと抜粋するから、このサイト、ぜんぶ読んでみて。

アヤワスカの名前を初めて聞いたのは2004年4月初旬。
去年の12月にペルーのクスコにある日本人宿・八幡で会った遺跡を追いかけて旅するタダヨシ君と偶然の再会をしたブラジルのサンパウロの日本人宿・アラキだった。
「アマゾン奥地に、お酒もマリファナも一切禁止のセウドマピアって街があるんだって。
ソコでシャーマンから宗教儀式として超強烈な幻覚作用を持つ、アヤワスカってのを受けれるらしいんだ」
シャーマン?
宗教儀式?
・・・超胡散臭え!!!!
この電脳ハイテク時代に何言ってるんだよ!!
第一、 私はあさってにはアルゼンチンに行っちゃうし、その後はチリに行って、それからアフリカに飛んじゃうから、もうブラジルには戻って来ないんだよね。アマゾンには行かないんだよね。
アヤワスカ、ちょっと興味はあるけど、まあ普通に、行かない。行けない。
でも、とりあえず旅メモ帳には残しておこう。

翌日、タダヨシくんは北へ向かい、入れ替わりに2年半の旅をしているトシさんが宿へ。
「僕は日本で看護士をやってた経験から漢方や薬草とかの、人を癒す事全般に興味があるんだ。南米にはシャーマンが薬草を使って人の心の病や体の病気を治す、アヤワスカってのがあるらしくてね。
ペルーのタラポトって街にそのアヤワスカをやってくれる偉大なシャーマンがいるらしいから行こうと思うんだ。イワセちゃんも精神世界系に興味があるんだね。じゃあ最近僕が最近チェックしてるサイトも教えておくよ。僕もそのサイトでアヤワスカを知ったんだけどね。アキラマニアってサイトだよ。」
・・・またアヤワスカ!
昨日の今日じゃん!
今までそんな言葉聞いた事も無かったのに、何で急にこうも連続して聞くんだ。
アヤワスカか・・・まあどうせ私には関係無いコトなんだけどね。
アヤワスカ、どうだったかまた教えて下さい。なんてメルアド交換をして翌日私はアルゼンチンへ。

4月中旬。アルゼンチンのネットカフェでメールチェックをして時間が余ったのでネットサーフィン。
チリの両替公式レートや友達のサイトをチェック。
そういえばトシさんが何かのサイトがおもしろいよ。って言ってたっけ。
ええと、何だっけ、アキラマニアだっけ。
ア、キ、ラ、マ、ニ、ア・・・と。
あったあった。コレだ。このサイト。えーと、日記がね、あるんだね。ふーん・・・。
・・・何だコレ!超おもしろいな!
つーか・・・この人、超スピリチュアルじゃん!
言ってる事、凄く良くわかる。凄く共感出来る!
数ヶ月分の日記を一気に読む。
あーこのサイトやってるAKIRAって人がアヤワスカ、アヤワスカ言ってるんだ。
つーかアヤワスカの本出してんだ。
だからトシさん、アヤワスカやってみたいって言ってたんだー。
・・・アヤワスカ、か。
何だか・・・ちょっと、やってみたい、かも。

そして4月下旬。アルゼンチンを抜けてチリ入国。
ネットカフェでメールチェック。そして、アキラマニアのサイトチェック。
・・・うわ!トシさんのアヤワスカ体験談がアキラマニアの日記にアップされてる!
トシさん何でAKIRAさんにメール送ってるんだ!
つーかトシさん本当にアヤワスカやったんだ!
「エレクトリカルパレードのようなビジョンが見えて・・・」だって!
エレクトリカルパレード!!!キラキラじゃん!うわー何だソレ!超見てえ!!
アヤワスカ、私も超やってみたいよ!ステキなビジョン見てみたいよ!
ダメだ!もうアタマからアヤワスカが離れない!
アヤワスカ!アヤワスカ!!アヤワスカ!!!

 それからユウコちゃんは、アマゾンの最深部にあるサントダイミー教会の総本山セウ・ド・マピア(マピアの空)へむかう。

ボートつうより、カヌー。にお金を払って乗せてもらう事になった。
セウドマピア方面に向かう生活雑貨やら食料やらを乗せた運搬用の屋根の無いエンジンつきの木をくりぬいただけの小さな、カヌー。
エンジンをかけた瞬間に、カヌーの横面で黒色のイルカがジャンプ!

カヌーはぐんぐんぐんぐん、泳ぐ。
川幅の広い水路から、段々と川幅の狭い水路へ。
時折、川岸に高床式の家が見える。所々に小さな集落があるらしい。
進めば進むほど、頭上を飛ぶ鳥の数が増える。
川岸には数十匹の黄色の蝶が渦を巻いて踊り狂う。
流木が川道をさえぎる。
時折、狭い川の左右から木々の枝が覆いかぶさる。姿勢を低くしてアタマを下げないとぶつかる。
手の平のカタチをした葉っぱを持つ緑の木。
まるで板のような平らな根っこを持つ緑の木。
小さな白い花を沢山沢山抱えた緑の木。
進めば進むほど、緑は、深まってゆく。
ああ、あまりにもあまりにもな圧倒的な、緑!!
緑が深過ぎて、いつしかランナーズハイに似た「アマゾンハイ」になった私は、
カヌーの舳先ギリギリのトコロに座り込んで大声で歌を歌っていた。
カヌーの運転手も大声で歌を歌う。
日本ブラジル共同開催のど自慢大会。でも2人とも鐘3ツ。カンカンカン。
歌声を乗せたカヌーは、更にぐんぐんぐんぐん、緑に、染まる。

そういえばおととい、眠る前に、アヤワスカの最終おさらいとして、パソコンに保存しておいたアキラマニアの日記を読んでいたんだ。
日記に「わたしとつながるすべてのものに」と言う歌の歌詞が掲載されていて、その中に「あなたが花をながめるとき 花もあなたを見つめている」と言う一節があって、
ふと思い立って木製のベッドを見つめてみたら、何となく、何となくだけど、ベッドも私を見つめているような気がして、
ちょっとギクッとして怖くなって目をそらした。
そのまま目のやり場に困って天井を見上げると、窓の無い部屋なのにドコから入ってきたのか蛾が、飛んでいた。
唐突に、
あっ。AKIRAさんだ。AKIRAさんが来てくれた。
って、思った。
もちろん私がセウドマピアに向かっている事なんてAKIRAさんは、知らない。
つーか私の存在自体を、AKIRAさんは、知らない。
でも、AKIRAさんが蛾の姿になって、セウドマピアに行こうとしてる私を心配してくれに、応援してくれに、来て、くれた。
そう、思ったんだ。
でもその時の私は、うつ伏せになって、ちょっとかぶれて痒くなったお尻をペロリとズボンから出していたので
ソレを見たAKIRAさんは照れてしまったのか、スグにいなくなってしまった!!!
折角AKIRAさんがこんなトコまで来てくれたのに、私は何ケツ出してんだ!
慌てて廊下に飛び出すと、ジジジジジと大きな羽音を立ててトンボが、飛んでいた。
あっ、AKIRAさん、今度はトンボになったんだ。
なんてぼんやりと眺めていたら、つい。と、トンボは、私の部屋の扉の上の壁に、止まる。
AKIRAさん、わざわざこんなトコまで来てくれてありがとうございます。
心配しなくても大丈夫ですよ。大丈夫ですよ。
でも・・・凄く凄く嬉しいです。ありがとうございます。
AKIRAさんに向かって親指をグッ!とつきたてて「ボン!(ポルトガル語でオッケーよ!の意味)」なんて言って、ブラジル人がよくやる挨拶をして扉をバタリと、閉める。


 オレは蛾か! そしてトンボか!
 いやいや、よくぞオレの忍法七変化の術を見破ったな。

カヌーの運転手が、叫ぶ。「マピアに着いたよ!」
水上サッカーをしていた子供に連れられて、外壁が黄色に塗られた宿にチェックインする。
スタッフに、ダイミー(サントダイミー教ではアヤワスカのコトをダイミーと呼ぶ)を飲む為にセウドマピアへ来たのだと告げると、今日の夜19時から早速アヤワスカのセッションがある事を教えられる。
えっ!今日?って言うか・・・あと数時間後?
えええ!!!ちょ、ちょっと待ってよ!
全然ココロの準備とか出来て無いんですけど!
何日かこの村に滞在して、落ち着いてからようやく飲む。位のつもりだったんですけど!
・・・でも、毎日飲める訳でも無いアヤワスカが到着早々飲めるなんて多分、大ラッキーだ!
有難く、セッションに参加させてもらおう!宿のスタッフに教えられ、早速広場前の2階建てのレセプションに行き、ビジター登録をする。
ビジターは1週間につき50RS(約1,800円)の滞在費を支払うと、サントダイミーのセッションに参加出来る。
とりあえず名前や連絡先などを登録して、数週間分の滞在費を支払う。
滞在目的欄には「世界の全てが知りたい」と、書いた。
宿でサラダとゴハンと豆を煮たフェイジョンとふかしたマンジョーカイモの軽い昼食を、取る。
夜のセッションの為に仮眠を取ろうと想うけど、興奮して全然眠れない。
小さな穴の開いたあんまり意味の無い蚊帳の吊られたベットで何度も寝返りを打つ。
AKIRAさんの「アヤワスカ!」を少し読み返す。

そして夕刻18時55分。
女子は白いブラウスに黒ロングスカート、男子は白いシャツに黒いネクタイに黒ズボンのサントダイミー教の服を着て、そして私は白いTシャツにインド綿のロングスカートを着て、連れ添って宿を出る。広場を抜けて、六角形の形をした大きな教会へ向かう。
教会へ向かう道すがら、初めてのアヤワスカが怖くて仕方無い。
どんな風になっちゃうんだろう。怖いな。怖いな。
恐怖を紛らわす為に、下を向いて小さな声で歌を歌う。
でも、完全に声が震えちゃってる。よっぽど怖いんだな。私。
大きな大きな木作りの教会の入口には天使の絵。ノートに名前を書いて教会内部へ。
既に随分沢山の人がいて、歌を歌っている。サントダイミーの、歌だ。
歌を終えると男女別に分かれて教会通路の小さなカウンターにアヤワスカを飲みに行く。
サーバー係が生サーバーから小さなコップに一見どろりとした少し緑がかかった茶色の液体、アヤワスカを注いでくれる。
みんなぐいと一息に飲み干すと、十字を切っている。
十字か。郷に入っては郷に従え。って言うけど、私が十字を切っても全然ココロ込めれ無いからなぁ。
いつも通り、ゴハンを食べる時に「いただきます」とするように、両手を合わせて、拝もう。自分の順番がきてサーバーの前に立つ。
あっ!おっさん!今、手元滑ったでしょ!
私のコップ、明らかに前の人達よりアヤワスカの量多いでしょ!
マジかよ!勘弁してよね・・・。
コップを受け取り、かかげて、「よろしくお願いします。」なんて少し拝んで、
超不味い。って話だったよなぁ。なんて想いながら、
一息に、ゴクリと飲み干す!
・・・苦い!!!つーか、緑色の味!!
でも、吐く程の苦さじゃないな。大丈夫。大丈夫。
コップを置いて両手を合わせて「ありがとうございます。」なんて再度拝んで、教会内部へ。

教会内部は大きな六角形のテーブルを中心に広がっていた。
六角形のテーブルの真ん中には教会を支える大きな柱。
テーブルにはジャングルの花が沢山飾られている。
円形に広がって全員がイスに座る。
一番後ろの長椅子に座る。
30分位でビジョンが始まるんだっけ。
始まるまではどんな風なんだろう。超緊張するよ・・・!
祈りの言葉に続いて、歌が始まる。
どうして良いのかマジでわからないので、とりあえずおとなしく座っている。
ただただ時間が流れる。・・・何にも見えてこないよ・・・?
今ドレ位時間が経ったのかな?
何だよ何にもならないじゃん。何だよ〜。期待し過ぎちゃったよ〜。
あー首のトコロ、蚊に刺されちゃったよ。痒いなぁ。
首をボリボリ掻いたりしていると、隣の人が小刻みに震えている事に気が、つく。
あれ?隣の人、アヤワスカが始まってる・・・?
そう想った瞬間に、唐突に「光」が、見える。
・ ・・あれ・・・?光?
光が、見える?
光・・・だ!
光が見えるよ!!!
湧き水のごとくどくどくと沸き上がる光!
北風のようにびゅんびゅん吹く光!
太陽のようにさんさんと降り注ぐ光!
メリーゴーランドのようにぐるぐる回る光!
光の・・・洪水だ!!!!
全てのモノに光はぐんぐん流れていて、全てのモノの中に大きな大きな光があるよ!
世界は世界は・・・光で満ちているよ!
そして、その光は、その光は、空に空に向かって沢山沢山昇ってゆくよ!昇ってゆくよ!
高く高く!もっと高く!!!!
ああ、もっと高くもっと高く・・・!!!!!ビジョンを見ながら、思考も、働く。
凄い凄い!本当にビジョンが見えたよ!
凄い凄い凄い!!!!!
凄いな。コレ。いやマジで!そんな風にうっとり見とれていると、不意に、吐き気を、もよおす。
あれ・・・?
何かちょっとキモチ悪いかも。
いや、でもアヤワスカは尿意や吐き気がする時もあるって言ってたっけ?
ええと吐きたくなったらどうするんだっけ?
吐けば良いんだっけ?
吐くの我慢するんだっけ?
あれ?
どうするんだっけ?
どうすれば良かったっけ?
何だっけ何だっけ何だっけ何だっけ何だっけ?
あれ?あれあれあれあれ・・・・・・・!?!!!!!!!!

気がつけば、両手をダラリとおろして、足を投げ出して床に、座り込んで、いた。?????
あれ?何で床?
あれ?
今私何してたんだっけ?
あれあれあれ?
私の体を支えてどこかへ連れて行こうとしてるこの女の人達は誰なんだ?
日本人じゃないみたいだし・・・?
ココは日本じゃ無いのかな?
あれ?じゃあ、ココはどこなんだ?
あれ?私何で片足、ハダシなんだろう?
両足共ビーチサンダル履いて無かったっけ?
あれ?白いTシャツに茶色のシミがついてる・・・?
何だコレ・・・?

体を支えられたまま教会内の小さな部屋に連れて行かれ、薄い布をひいた床に寝かされる。随分時間が経ってようやく、私は今セウドマピアにいて、セッションでアヤワスカを飲んだのだ。と、思い出す。
直後、あごに鈍痛が走る。
・・?痛い・・・?何で痛いんだ・・・?
ふと、あごに触れてみると、指にべったりと血が!
!!!!!!!!
何で!?何で血!?
Tシャツを見ると、ところどころに血の跡が!!!!なおかつクチの中にはコロコロする感触が・・・?
何だコレ・・・?何か食べちゃったのかな・・・?
吐き出すと、歯。の、カケラ!
!!!!!!!!!!
混乱したまま慌てて小学生の時の交通事故で折った差し歯の前歯を触るも、前歯は、ある。
ド、ドコ!?ドコの歯・・・??
確認する為に全ての歯を舌で、舐める。
・・・右奥歯、が、欠けてる!
歯、欠けちゃった!!!クチを開いて何かしゃべろうにも、いつもの半分位しか開かない。何だ何だ何があったんだ?
どうしちゃったんだ?私?

そのまま随分長い間呆然として、そして状況判断で、考える。
セッションの最中、前のめりに倒れて前のイスにしたたかに顎を打ちつけて
ブッ倒れたらしい・・・?

・・・何してんだ!私!!!!!!!!!
バックパッカーごときが観光地でも無い小さな村まで来て何やってんだ!
普通に普通に生活してる人達の大事な大事なセッションに入り込んで何ジャマしてんだ!
つーか、何ブッ倒れてんだ!何やってんだ!・・・また人に迷惑かけた・・・!
人に迷惑かけたくないから旅の途中から意図的に誰とも接しないように出来るだけ1人で行動してたのに!
ノコノコずうずうしくもこんなトコまで来ちゃって、また知らない人に迷惑かけてんじゃん!
最低!自分!!!!!!!!
動けないまま呆然と低い天井を見つめていると、アヤワスカを飲む直前に少し話をした、くりくりカールのカワイこちゃんのナルが、隣に座ってくれて手を握ってくれる。
あごから首にかけてしたたる血をティシュで拭いてくれる。
「痛くない?」
「ありがとうねナル。大丈夫だよ。大丈夫だからナルは教会に戻りなよ。大事なセッションでしょ?」
「うん。でももうちょっとココにいるよ。」
「ありがとうね。でもね、もうね、人に迷惑かけるの本当にイヤなんだ。
誰かに迷惑かけるの本当にイヤなんだ・・・!」
「全然迷惑なんかじゃ無いよ。本当だよ。」
「でも・・・でも・・・!」
「ココにいたいから、ココにいるよ。」
強く強く手を握ってくれるナル。
胸がぎゅう。って、なる。

 ここまで読んで大泣きしたのに、「ナル」「なる」の無意識ギャグで大爆笑してしまったオレって、深読みしすぎ?

この間までいたボランティア先で一緒に働いていたトワコちゃんの言葉を思い出す。
「イワセちゃんが思うほど、イワセちゃんは人に迷惑なんかかけてないよ。
全然大丈夫だよ。例え何か仕方なく迷惑かけちゃったたとしても、全然気にしなくてもイイんだよ。
それに、イワセちゃんは大事だよ。
だって・・・一緒に働く仲間じゃない!
イワセちゃんが嬉しいと、私も嬉しいよ。イワセちゃんが悲しいと、私も悲しいよ?」
トワコちゃんにしてもナルにしても、何でアンタ達そんな優しいんだ!
私、他の人に対してそんな風に思えてないよ!
私、他の人に対してそんな風に何かをしたりした事ないよ!
「誰かに何かをもらったと思えば、その時その人に返せなくても、いつか誰かに何かで返せば良いんだよ。」
再度、トワコちゃんの言葉を思い出す。
とりあえず今は私は何も出来ないけど、いつか誰かに何かが出来るかな?ありがとね。ありがとね。
ナルの手をぎゅう。っと握り返す。
涙が、止まらない。しばらくしてナルはセッションに戻ってゆく。
私の傷は随分大きいらしく、血は止まらず、思い出したように時々、したたる。
横になったままの姿勢で首筋に幾度も血が流れる。
その度に誰かがそっ。と拭いてくれる。
一度なんかは「あー血がまた垂れてる。動けないなぁ。誰かが拭いてくれないかなぁ。」とか
甘い事を考えていたら、その直後に誰かが拭いてくれてビックリする。
・・・何で?何で私の考えてた事わかったの?共振(シンクロ)ってヤツ?テレパシー?
「アヤワスカの世界ではどんな事も起こりうるんだよ。」
AKIRAさんの本にあった言葉を思い出す。
たまたま想ってた時に、たまたま拭いてくれただけで、全然偶然なのかもだけど、
同じアヤワスカを飲んで、同じ空間にいるから、想いが飛んだのかな?と、凄く非現実的だけど、そう思えてしまう。
でも、自分の事は自分でするのが当たり前だよなぁ。と想い直して、その後は動けなくても、
頑張って動いて、自分で、拭く。旅をしていて、良い人ばっかりに出会えて、みんな親切で、何だかいつの間にか人に親切にされるのが当たり前になってたかも。
善意を当たり前だと想うなんて、図々しいよなぁ。

随分時間が経って、落ち着いた私は、起き上がって、布の上に、座る。
とうとうアヤワスカを飲んだよ。
でも、ソレがどうだって言うんだろう。
確かにビジョンは、見えた。
でもソレがどうだ。って言うんだ。
アヤワスカはただアヤワスカなだけだ。
ソレ以上でもソレ以下でも無い。
アヤワスカが私に何かしてくれる訳じゃない。
何かをするのは、結局私自身だ・・・!
でも私は何が出来るかな?何をしなくちゃいけないのかな?
・・・全然わかんないよ。
何も出来ないけど、とりあえずは、今、自分が出来る事だけ、しよう。
とりあえずは、ソレしか、出来ない。

次々に部屋にやってくる調子を悪くした人達。
不安気な顔つきで床に横たわる。
この人達もみんな不安なんだ。
今この場で私が出来る事は何だ・・・?
私はさっきナルに手を握ってもらえて凄く凄く嬉しかったよ。
同じように、手を握られたら、嬉しいかな。安心するかな。大丈夫だよ。大丈夫だよ。
何が大丈夫なのか全然わかんないし、でも、無責任かもだけど、
きっと全て、上手くゆくよ。
そう、思うよ。
大丈夫だよ。
クチにしなくても伝わるように、強く想って想って、横たわるその人達の手を強く強く、握る。
少し驚いた顔で私を見つめ返す。
そして、ゆっくりと、笑顔になって、くれる。
嬉しい気持ち、が伝わってきて、私も、嬉しい。
つーか、手を握られてる方にしてみたら顎からドクドク大量の血を流してる私の方が大丈夫じゃないように見えるよね。
そんな人に笑顔で大丈夫!って言われたら、確かに自分は大丈夫って思えるかも。

誰かのすすめでアヤワスカをまた、飲む。
もうビジョンは見えないけど、その度に深い「思考」に、入る。
旅の事、今までの人生の事、そして今後の事を、振り返ったり、反省したり、気がついたり、感謝したり、する。
誰かにしたイヤな事とか、誰かにされたイヤな事とかも思い出したりするけど、ヘコむ。とかでは無く、むしろソレですら、
感謝に変わる。
例えば過去に何かトラブルがあったとする。でも、今考えればそのトラブルがあったからこそ、
私はある事を学ぶ事が出来たし、ソレが無ければ更に大きなトラブルを呼んだかもしれない。
今までの行為や出来事は全て何かの為だった。全てに理由があった。
今やってるか何かも、今はわからなくても、これからに続く何かの為。
そんな風に前から漠然と考えていた事が、実感となって、理解、出来る。
だから、とにかく、まずは目の前の事を、きちんとやろう。
全部全部、後々の自分の為だよ。
私は基本的に逃げ逃げ人生だったよ。でもコレからは、少し、立ち向かってみよう。
いつかの、自分の為に・・・!
きっと、全部上手くゆくよ。きっと全部上手くゆくよ!

教会では祈りの歌が響いているよ。
全員が立ち上がってチカラ強く歌を歌っているよ。
ポルトガル語の歌詞なんて全然わからないけど、何だかステキなリズムだ。
教会内部の元の席に戻った私は気がつけば1人、ステップを踏んでいた。
何度も何度も同じ歌が歌われる。
沢山の歌声は教会の高い高い天井に吸い込まれてゆくよ。ああ、ああ、世界は、本当に本当にキラキラと輝いているのかも知れないね!!!!!

そうして、6時間に及ぶセッションは終わり、私はドクターに診察を受ける。
傷口が完全にパックリ開いている。
血がしたたるのも気にならない位、セッションが素晴らしかったんだよ。
横になってた方がイイってわかってたけど、寝てられない位、アヤワスカが素晴らしかったんだよ。
ドクターにそんな事を伝えると、少し、笑われる。「そうね。」って。


 誰かのためなんかじゃない、「ココにいたいから、ココにいるよ。」
「誰かに何かをもらったと思えば、その時その人に返せなくても、いつか誰かに何かで返せば良いんだよ。」
 ユウコちゃんは1ヵ月間マピアに滞在し、その後もペルーで何度もアヤワスカセッションを受けた。

アヤワスカは「ビジョンを見る」のが目的じゃなくて、イロイロ考えたり内省したり、
その上で感謝したりするきっかけをつくってくれるモノなんだね。
そしてソレはどこかにいる「神様」みたいなモノが教えてくれるんじゃなくて、
いつもは隠れている心の中のずっとずっと一番奥にいる「自分」が、教えてくれるモノなんだね。
アヤワスカは・・・1番奥にいる自分と、お話させてくれるモノなんだね。
だから・・・「アヤワスカ」や「神様」じゃなくて、結局、「自分」なんだね。

しかしココに住んでる人達は今までに何10回も何100回もアヤワスカを飲んでる訳でしょ?
今日私が気づいたような事は、とっくの昔に気づいてるハズでしょ?
じゃあ、じゃあこの人達は何でまだまだ飲み続けるの?何をそんなに祈っているの?
高い高い天井に吸い込まれるように響く歌声を聴いていて、ふと、気づく。
・ ・・この人達は、多分、多分だけど・・・
世界がステキであるよう、世界が更にステキになるよう、本気で祈ってる!!本気で願ってる!!
そして逢った事も無いような人達や、そして今後も逢うハズも無いような人達がステキな日々を送れるよう、
こんなアマゾンの奥地から本気で祈っているんだ!!!
!!!!!!!!!!!!!!!
スゲエな!アンタ達!!!!!!!!
いや私、家族とか友達とかがステキな日々であると嬉しいからそう祈れるけど、知らない人の分までは祈れないよ!
でもこの人達は本気で祈ってる訳でしょ?
マジでスゲエな!アンタ達!!・・・じゃあ私もちょっとだけ、真似してみようかな。
ちょっとだけ、祈ってみようかな。
全ての人が、全ての人が、笑顔でいられますように・・・!!!!

んんんんん。ゴメン。やっぱり未だ、ちょっと、ムリ。
私は未だそこまで辿りつけてないよ。
とりあえず、私は自分の事だけで精一杯だよ。つーか自分の事すら出来てないよ。
ええと、とにかくとにかく、どうか、どうかせめて、自分の周りの人達が笑えますように。
笑えますように笑えますように笑えますように!!!

 これですよ、これ!
 ユウコちゃんの日記にはまった理由はこれ。
 こむずかしい理論をならべて精神世界を語る人より、ギャグでかませる人のほうが偉いのだ。
 世界を笑え!

21 october(thu)
4 self-existing
moon

 「3時間で帰ります」とか言ってたのに盛りあがって、トシとユーコと夜中の3時まで飲んだ。
 11時くらいからオレの記憶はない。
 電話で目覚めると、テニスの師匠タカさんからだった。
「台風もいっちゃったし、絶好のテニス日和ですね」
 またまた完全に忘れてた。
 おとといキャンプをして福島に帰っていたタカさんがわざわざテニスを教えてくれるために日光にくるのだ。
 関口先生に山形講演にさらわれ、素樹ファミリーに中禅寺湖にさらわれ、トシとユーコにアマゾンにさらわれ、タカさんにテニスにさらわれる。
 オレの記憶の皿割れる。
 タカさんが雇われオーナーで働いてたペンションで、やめるまえに雇われオーナーだったカツ、やめたあとに雇われオーナーをひきついだヤマチンがいっしょにきた。
 総勢6名でメルモンテにいく。
 まずはテニス対決。
 タカさんは東北8位のもとインストラクター、ユウコはもとテニス部。タカさんは右利きなのに左で打つというハンデを自ら背負い、いろんな組み合わせでダブルスをやって盛りあがる。
 つぎはバドミントン対決。
 けっこうバドミントンは平等な感じでさらに盛りあがる。
 いよいよ卓球対決。
 ヤマチンは8年間卓球部で青森県4位の成績を残している。
 男子の卓球部とやるのははじめてだ。
 「男子の卓球部」と「温泉卓球部」の壮絶な死闘がはじまる。
 ペンハンド(両面ラケット)で複雑な回転をかけてくるのでぜんぜん返せない。
 考えてはダメだ。
 「温泉卓球部」は技がないから、ヤケクソ。
 全球スマッシュあるのみ。
 どんなカットボールも、ネットぎりぎりの低い玉も、
 スマッシュ!
 スマップ!(芸能人)
 スワップ!(夫婦交換が趣味の人)
 気がつくと、2セット連取していた。
 なにが「男子の卓球部」だあ、「温泉卓球部」をナメん猫。(ちなみにモデルになった猫が過労死したという)
 またすべってしまった。
 おごりたかぶってはいけないのだ。
 そんなとき、宗方コーチの言葉が胸に突き刺さる。
「世界はそんなに甘くないぞ、この程度で音をあげるな、あと100本!」
「コーチ、もう足が動きません」
「そこにボールがある限り、お前の足は動く」
 ヤマチン・コーチの1000本ノックに耐えられず、明はコートに崩れ落ちた。
 3セット目は完敗だよ。
 ヤマチンコーチに笑顔がもどる。
「俺は今まで憎しみをぶつけるように卓球をしていた。だがおまえを見て知ったんだ。卓球は憎しみのはけ口ではないということを。そして卓球をいかに愛していたかということをな。分かるか? 岡じゃない、明」
「この一球は絶対無二の一球なり、されば心身をあげて打ち出すべし」
「お願いですコーチ。あたしにもう1度チャンスをください」
 運命の4セット。
 ここで負けたら同点だ。
 しかし天地動転。
 すべてのスマッシュが決まる。
 勝ったー!!
 「温泉卓球部」が「男子の卓球部」に勝利したのだ。
 全国の「温泉卓球部」諸君!
 宗方コーチのちょっとすべってる格言を肝に銘じておけ。
「鳥はなぜ空を飛べると思う。それは鳥が飛べることを疑わないからだ」
 急にやったスポーツで全員脳内麻薬全開。
 ええっ、まだやんの?
 最後はバレーボール対決だ。
 3対3でバドミントン・コートに別れ、チームが一丸となる。
「いくわよー」
「オラーイ」
 レシーブで手首が真っ赤に腫れあがり、気がつくと4時間もテニス、バドミントン、卓球、バレーボールのスポーツ・トライアスロンをしていた。
 そのあと、ゆったりと温泉につかり、微笑みをかえす。
「バカだね、オレたち」
 

22 october(fri)
5 self-existing moon

 今日はちょっと怒ってるぞ。
 世紀末にはさまざまな芸術を生んだフランスに「宗教シンボル禁止法 」が施行された。
 公立校でイスラム教徒の女子中学生が退学になる。シーク教徒のシンボルであるターバンを脱がなかった高校生が業参加禁止処分になる。シーク教徒って髪を切っちゃいけないのよ。しかし学校側は「あらゆるかぶり物は一律禁止」と主張した。
 日本の服装検査が異常だと思っていたオレには、ショックだった。
 おめえら、格好で人を判断するなよ。
 格好でそいつらの人格まで否定するのか!
 従わない生徒は教室から隔離される。現時点では、フランス国内の公立校全体での違反者は72人、校長の説得に応じなければ退学である。
 しかも説得後は、スカーフを小さなバンダナに代えてんだぜ。この法律では「控えめなもの」や「おしゃれ小物」を認めてるのに、「2カ月近くもバンダナ姿で学校生活を続ける生徒については、宗教シンボルと考えるしかない」だってさ。
 この裏にもアメリカ対ロシアの対立がなくなってしまったんで、キリスト教対イスラム教の図式をつくろうとしてるやつらが動いてんだね。
 なにしろ「敵がいないと儲からない」から。
 まだあるぞ。
 兵役逃れをした韓国俳優ソン・スンホンさんが、入隊でドラマ降板させられたんだって。
 韓国ブームで沸く日本で、オレはソン・スンホンさんを知らない。でも日本でも人気があるドラマ「秋の童話」とか、「悲しい恋歌」から降板させられただけじゃなく、時効のため立件を逃れたソンさんら52人も改めて身体検査を受けた上で、11月中の入隊を命じられたんだって。
 まだまだショックな情報はあるぞ。
 ヒトの遺伝子はハエと同じだって。
 6カ国の共同研究でヒトゲノム(遺伝情報)を解析した結果、遺伝子の総数はハエと同じ、約2万2000個だったのである。
 人間の遺伝子は約3万2000個と予測されていたのに、ショウジョウバエの遺伝子と同じなんだって。
 数は同じの遺伝子が使われ方やたんぱく質の複雑な組み合わせで「人間らしさ」、「ハエらしさ」をつくっているのだ。
 オレは10年ほどまえ、こんな童謡をつくった。

 「THE FLY」

ウンコもゴハンもおまえにとっちゃ
まったくおんなじものなんだ
ウンコもゴハンもぼくらににとっちゃ
まったくちがうんだ

 だから たかるなよ ブ〜ンブン
 たのむ たかるなよ ブ〜ンブン
 あっちいってFLY FLY FLY

ゲロだってピザだっておまえにとっちゃ
まったくおんなじものなんだ
ゲロだってピザだってぼくらににとっちゃ
まったくちがうんだ

 だから なめるなよ ピロッピロッピロ
 たのむ なめるなよ ピロッピロッピロ
 あっちいってFLY FLY FLY

シッコもジュースもおまえにとっちゃ
まったくおんなじものなんだ
シッコもジュースもぼくらににとっちゃ
まったくちがうんだ

 だから すするなよ ジュ〜ジュ
 たのむ すするなよ ジュ〜ジュ
 あっちいってFLY FLY FLY

死人も美人もおまえにとっちゃ
まったくおんなじものなんだ
死人も美人もぼくらににとっちゃ
まったくちがうんだ

 だから ウジ生むな ニュルッニュルッニュル
 たのむ ウジ生むな ニュルッニュルッニュル
 あっちいってFLY FLY FLY

ウンコもゲロだってシッコも死人もおまえにとっちゃ
とってもだいじなものなんだ
ゴハンもピザだってジュースも美人もぼくらにとっちゃ
やっぱりだいじだもん


 ハエ叩きでつぶしたときの鮮血の赤がよみがえる。
 オレたちがマンションの10階から飛び降りたときと同じ赤だ。
 ハエはウンコにたかるから汚いのか?
 ハエは人間より劣った存在だから平気でぶっつぶすのか?
 価値観がちがうというだけで、
 退学させるのか?
 降板させるのか?
 殺すのか?
 だから なめるなよ ピロッピロッピロ
 ハエもおまえも同じカムイ(神)じゃねえか。
 なんで「ちがい」を軽蔑するんだ?
 なんで「ちがい」をリスペクトできねえんだ?
 おまえらはなにを恐れてるんだ?
 「平等」をはきちがえるな。
 ちがうからこそ世界はこんなにも豊かで、
 人にもハエにも平等にカムイはいる。
 生きとし生けるものすべてがひとつの魂から分かれ、
 別々の衣装をまとって、この星に集った。

 We are the one !
 オレたちはひとつだ。

 くれぐれも暴力親父の一神教とまちがうなよ。
 すべては神だ。
 「出会い」という奇跡は歓喜以外のなにものでもない。
 ハエに話しかけてごらん、
 異国を旅してごらん、
 風に吹かれてごらん、
 海と呼吸してごらん、
 木にふれてごらん、
 花に微笑みかけてごらん、
 ティーカップに口づけてごらん、
 みんな「今」というパーティーにやってきたパル(仲間)たちだ。
 なにも怖がることはないよ。
 聖も俗も、
 美も醜も、
 わりと可愛いわたしも、ものすごーく無様なわたしも、
 世界を彩る大切な絵の具なんだ。
 だいじょうぶ、

 世界を丸ごと愛していいんだよ。

24 october(sun)
7 self-existing
moon

 出版パーティーの打ち合わせのために東京から4人のボランティアがやってきた。
 今回の葬式は、じゃない総指揮はリュウである。つねに完璧をめざし、どっかで大ポカをやらかす男として有名だ。前回のイベントではビデオ係をやってくれたが、われわれのライブがはじまったと同時に映像がぷっつりと消えていた。どうでもいい映像はたっぷり撮ってあるのに、肝心なライブ映像が抜け落ちているではないか。
 御柱祭でも半日遅刻するし、富士山のイベントでも車のキーを自宅に置き忘れるという才能の持ち主である。この実力を買われての大抜擢となった。今回はなにをやらかしてくれるか楽しみである。
 オレがしきってきた「在津」組(忘却の川が存在の海へと流れでる町が縄張り)の二代目組長を襲名させ、「恥宝」賞(失敗の恥ずかしさを宝としてかかえてきた人に贈られる)と「犬棒」賞(歩いているだけで棒で殴られる人に贈られる)を授与するぞ。
 「笑って類友」という長寿番組が示すように、オレが惹かれる人は物忘れがひどい。
 アメリカインディアンのリーダー、デニス・バンクスは自分の子どもの名前をまちがうし、アマゾンの画家パブロ・アマリンゴさんはオレに大切な絵をくれたことも忘れていたし、アイヌの肝っ玉母さんアシリ・レラさんは会った人の名前をほとんど覚えていない。
 まあ、あまりにもたくさんの人が精神的支柱を求めて彼らに会いにくるのだからしょうがないが、けっこう大ポカをやらかすのも共通している。
 そうそう、こないだランディさんと角川で打ち合わせしたときのことだ。
「11月20日の土曜日に出版パーティーやるんだけど、こられる?」
「あー、ごめーん、ボロットさんのコンサートとかさなってる」
 オレはボロットさんの公演を去年から楽しみにしていたし、ボランティアで手伝うとメールしてる。自分のパーティーもそれに合わせて日にちをずらしていたのだ。しかしランディさんの自信たっぷりな発言に、「またもやオレのアルツかあ!」と劇画の汗が飛び散った。
 翌日、ランディさんのマネージャーをやってる飲み友、みず枝さんからこんなメールがくる。

昨年に引き続きまして、アルタイからボロットさんをお呼びしました。
今年はすごいです。ナマ倍音らしいです。
昨年の経験者も、未体験の方も、ぜひいらしてください。

アルタイ・コンサートのお知らせ

アルタイ共和国って知ってますか?
シベリアの小さな国。
シャーマン発祥の地と言われる国。
聖地ベロボディアがあるといわれる国。
その神秘の国アルタイに伝わる英雄叙事詩カイを、現代に蘇らせた歌い手が来日します。
2年前にアルタイに旅行して、すっかりアルタイの魅力の虜になった私は、怪声の歌 い手、ボロット・バイルシェフの歌を、どうしても日本の友人達に聞かせてみたくなりました。
それで、音楽家の巻上公一さんとコンサートを企画、ボロットを日本に呼びました。
11月、東京にアルタイの風がやって来ます。
日本人のルーツ、浪曲や演歌の源流とも言われるアルタイの咽歌。
その脅威の倍音、宇宙の命脈をぜひ感じてみてください。
今回はトッパンホールという音響のすばらしい会場で、倍音の響きをナマで味わえます。
当日は私と巻上さんと、もうひとり特別ゲスト(まだ内緒)が、
アルタイについてのディスカッションをします。

■■大地を揺るがせ、大気を充たす 
■■アルタイの喉歌[カイ]宇宙の命脈  
■■ボロット・バイルシェフ in Japan 2004
東京公演 2004年11月18日(木)19日(金)
     開場18:30 開演19:00
会場 トッパンホール
出演
ボロット・バイルシェフ(カイ、トプシュール、ショール、口琴)
巻上公一(ヴォイス、口琴、テルミン)
佐藤正治(パーカッション、ヴォイス)
田口ランディ(トーク)

チケット 前売り\5,500 当日\6,000 学割\5,000(直販のみ)全席指定
取り扱い 青い鳥創業(03-3486-7727 平日10〜18時)
トッパンホールチケットセンター(Tel: 03-5840-2222 10:00〜18:00)
チケットぴあ(Pコード184-938 tel.0570-02-9999 または03-5237-9966)
*学割は直接販売のみの扱いとなります。
「青い鳥創業」まで電話、またはHPからメールでお申し込み下さい。

会場 トッパンホール
Tel: 03-5840-2200 FAX: 03-5840-1515
飯田橋駅 JR総武線(東口)、東京メトロ有楽町線、東西線、
南北線、都営地下鉄大江戸線(B1出口)より徒歩約13分
江戸川橋駅 東京メトロ有楽町線(4番出口)より徒歩約8分
後楽園駅 東京メトロ丸ノ内線、南北線(1番出口)より徒歩約10分

 おいおい、ランディータも完全「在津」組じゃん。
 ボロットさんのコンサートは11月18日(木)19日(金)で、オレのパーティーは翌日の20日(土)だよ。
 やっぱりオレは正しかった、胸をグイグイはって正しかったのだ。
 アシリ・レラさんには負けるけど、少なくともオレの「在津(あるつ)」はランディータの「恥宝(ちほう)」や「犬棒(ケン坊)」より進行してないぞ。
 いける!
 オレのイベントの2日まえにボロットさんの生声を聴けるのだ。
 アルタイ共和国からくるボロットさんの喉声(ホーメイ)は現代の奇跡だ。超低音が大地を揺らし、超高音の精霊たちが空に舞い踊る。それらがひとつの喉から同時に発声されるだけじゃなく、映像さえも喚起させてしまう。
 黄金の山々(アルタイ)、緑に萌えるシベリアの高原、天を映す湖、真綿のように散らばる羊、いったこともない風景が魔法のごとく浮かびあがってくる。
 ホーメイの特殊な振動が聴く者の頭蓋を振動させるのか、ボロットさんのシャーマニックな力がわれわれのなかに眠る精霊を呼び覚ますのかはわからない。アルタイ語などまったくわからないのに、涙が止まらなくなるのだ。終わったあとには、放心状態で浄化された自分がいる。
 ボロットさんの歌は音楽そのものを越えて、一種の神秘体験に近い。
 去年は東京と沖縄公演に同行したが、何度でも聴きたくなる。CDではものたりない。遊牧民のように同じ空間に集い、いっしょに共振しなければあの神秘体験はできないのだ。
 しかも今回はマイクをとおさず、生で聴ける。トッパンホールはクラシックのために設計された最高の音響効果をもつ。
 奇跡的に同じ時代に生まれたのに、ボロットさんの歌を「体験」せずに死んでいくのはもったいない。彼の歌を聴けば、オレの発言が大げさじゃないことに気づくだろう。
 まだチケットがあることを確認したので、急いで申し込もう。オレのイベントにこれなくても、ボロットさんの公演には絶対いってくれー!

26 october(tue)
9 self-existing moon

 新潟中越地震のときはメルモンテの温泉からでたばかりで、築80年のうちが倒壊してんじゃねえかというくらい揺れた。
 現地の被害は甚大だ。27人が死亡、10万人が避難している。とくに高齢者が多いので避難生活がつづくと消耗するだろう。「自分自身のカムイ」を買ってくれた長岡市のママカツさんも友人たちも心配だ。

 母なる大地は恵みも与えるし、危害も与える。
 ギリシャの大地母神デメテルは愛する娘を冥界の王ハデスに奪われ、怒り悲しんだ。草木は枯れ、穀物は実を結ばなくなり、人々は飢餓に苦しむ。
 困り果てた夫ゼウスはハデスに頼みこみ、1年の3分の2は娘を地上にもどしてもらう。冥界から帰ってきた娘に母は歓喜した。
 大地に春がもどり、花は咲き、木々は芽を吹き、穀物も育ち、人々は飢饉から救われる。
 しかし収穫の秋が終わるころ、娘はまた冥界にもどらなければならない。デメテルは鬱になり、木々は枯れ、冬が訪れるのだった。
 デメテルと同じように、日本にも我が子を奪われた「
鬼子母神伝説」がある。
 起源はインドの仏教説話といわれるが、オレは大地や母の二面性を示す世界規模の原形神話だと思う。
 鬼子母神(ハーリーティー)は1000人の子供の母だったが、他人の子をつかまえて食っていた。
 これってお受験ノイローゼでライバルの子どもを殺した事件を思いだすなあ。ジェラシーや精子戦争や遺伝子の段階にひそむ競争本能かも。
 そこでブッダのお出ましだ。
 鬼子母神のいちばん可愛がっていた末っ子の愛奴(アイヌ)を隠してしまった。
「アイヌはどこだ、わたしのアイヌはどこにいったのだ」
 鬼子母神は他人の子どもは平気で食っちまうくせに、自分の子が誘拐されると半狂乱で探しまわる。
 ふたたびブッダのお出ましだ。
「鬼子母神よ、子どもがいなくなることがどんなにつらいかわかったか」
 鬼子母神は他人の痛みが自分の痛みと同じだと気づく。鬼子母神は仏教に帰依し、夫婦和合、安産成就、恋愛成就の神様になる。
 めでたし、めでたし。
 ブッダにツッコミをいれると、「おまえも誘拐犯じゃーん」
 この神話は、「個」の弱肉強食から人間という「種」の保存にむかったことを意味するのではないか?
 人類は社会性という武器を手にいれたことにより、飛躍的に増殖する。
 しかし臨界人口を超えた人類はガン患者のように地球ごと自滅させる方向に爆走している。
 現代人全員が鬼子母神になっている。
 今こそ鬼子母神が復活するときだ。
 母なる地球から子どもたちを誘拐し、むさぼり食っていることに気づかないと。
 むずかしい環境問題のことはわからないが、アイヌの大地母神アシリ・レラさんの言葉がよみがえる。

 地球は人間だけのものではありません。生きとし生けるものすべての母なのです。
 せっかくこの世に生を授けた子どもたちが兄弟を殺し、よってたかって母親をいじめています。それでも母親は我が子に文句ひとつ言いません。どんなに傷つけられても無言で耐えている母のすすり泣きがわたしには聞こえてきます。
 地球をきれいにしてカムイたちに返してあげなければね。(「風の子レラ」より)

 
で、「鬼子母神のカムイ」。
 見て見て!

27 october(wed)
10 self-existing moon

 今日の余震でネアリカが1枚倒れた。震度3でこれくらい怖いんだから、 新潟の恐怖はすさまじいものだろう。
 土砂のなかに埋まった車から運び出された母親は死んだが、2歳の長男は生きている。子どもの生命力に驚かされるが、命が受けつがれていく一抹の希望を感じた。
 閉所恐怖症や母を亡くした哀しみ、その子はトラウマにおびえ、これから何度もつらい思いと戦わなくてはならないだろう。
 それでも生かされているということは、彼がそのハードルを越えられる力をもっているからだ。彼だけじゃなく、今生かされている全員が自分で課したハードルを跳び越えられる力をもっている。
 自殺志願者からのメールがとどく。(マヤ暦で今月はself-existing 自己存在の月だ)

 わたしは
 ……いらない。

 いらないものなど、最初から生まれてこない。
 生きている、
 それだけで、
 自分が勇者であることに気づいてほしい。
 生物学的には599999999のライバル精子をしりぞけ、勝ち残った「エッグ・ゲッター」だ。(唯一の卵子をゲットしたクィディッチのハリポタみたいなもの)
 輪廻学的には無数の死者が転生を待つバルドゥ(チベット人が信じる中間世)の待合室から選ばれた「ライフ・ゲッター」だ。(競争率、偏差値、無限)
 とにかく、世界は君を必要としている。
 べつに偉人になる必要なんかないし、歴史に名を残す必要もない。
 まずは社会的な役割で考える洗脳を生ゴミに出せ。
 ちっぽけなちっぽけな人生でいいんだ。
 ふとした君の言葉が人を傷つけ、
 ふとした笑顔が人を救っているかもしれない。
 この世に生まれてきたってのは、
 世界が君を欲し、
 君が世界を欲してたからだ。
 「生まれたくて生まれたんじゃない」なんて言葉は通用しない。
 今この瞬間に生きてるってことは、
 今この瞬間に君が必要だからだ。
 死にたければ死ねばいい。
 オレは死にたいやつを引き止めるほどやさしくない。
 つーか、死ぬ自由も、あらゆる自由意志も否定したくない。
 死のうが、
 生きようが、
 だいじょうぶ、

 すべては許されてる。

 自分で選べ。

 
虹色の股間から生まれたときの号泣を、
 君はおぼえているか?

 オレは市役所の人生相談係じゃない。
 創作者だ。
 「メリークリスマスのカムイ」。
 見て見て!

28 october(thu)
11 self-existing moon

 友人からきたメールを緊急転載する。

10/26 15:00の電話
 小千谷市役所、小学校での救援物資の配給や、炊き出しなどを手伝っています。現場はまだまだ混乱しているし、人出も足りていません。
 そんな状況下で、マスコミの取材陣が50人近く現場付近を陣取っています。小千谷市役所の正面に車を止めて、そのために、救援物資を運ぶトラックは遠くに止めることしかできず、ボランティアの人たちがせっせと現場に物資を運んでいますが、報道陣は、それを手伝う気配すらありません。心労と肉体的疲労が積もっている被災者のかたがたに、当然のようにマイクを向け、24時間カメラをまわし続ける神経もさっぱり理解できません。
 現地では今、「大人用の紙おむつ」が不足しています。「赤ちゃん用おの紙おむつ」は足りています。あとは、トイレが使えなかったり、下着をかえられなかったりするので「パンティライナー」があると重宝しますが、こちらではもう品切れで手に入りません。P&G 、花王、ネピアなどの紙おむつメーカーに電話をして、現状を伝えてください。夜の寒さが厳しいです。お年寄りは使い捨てカイロをもむことすらできないので、「貼るカイロ」が必要です。
 マスコミの仕事は、こういった情報を伝えることだと思うのですが?今日はこのあと、小千谷小学校に小泉首相が来るということで、マスコミ報道人の数はさらにふくれあがり、「毛布の配給ができないので、小泉さんが帰るまで待つように」という連絡が入りました。
 何のための視察なんでしょう??
 午前中にも、数名の政治家さんが小学校に来ましたが、トイレはどこかとたずねられ、仮設トイレを案内したところ、「わたしに仮設トイレを案内するつもりかね?」と、いわれたそうです。いったいこの国は、どうなっているんでしょう.... 。
 現地では、大人用の紙おむつと、パンティライナー、貼るタイプのカイロを必要としています。これらの商品を販売している企業の「お客様相談室」宛てにメールを送ったり、電話をかけたりして、「小千谷市の被災者が求めているもの情報」を、伝えてください。あなたのblogやHPの中で、ただ伝えるだけでかまいません。皆さんの声が企業を。行政を動かします。
 マスコミはたよりになりません。マスコミへは、支援活動の妨げとなり、被災者の心労を倍増させる今の取材のやり方についての、抗議の声をあげてください。あまりにひどい状況です。
 小千谷市にも、続々と個人の方からの救援物資が届いています。ありがとうございます。しかし、それを種類別に分けて、配布する人出がありませんので、以下の点に注意して送っていただけると大変助かります。段ボールには、外側に「毛布」「洋服」「下着」など、中身を大きく書いてもらえると助かります。くつした1足、下着1枚でもうれしいのですが、できれば、ご近所の方と声かけしあって、ある程度まとまった数があると、とても助かります。
 送り先の住所はこちらです。

〒947-8501 新潟県小千谷市城内2-7-5 小千谷市役所


 おおー、長岡市のママカツさんからもメールがとどいた。

 ご心配をおかけします。大丈夫です。ありがとう。
 ライフラインは、僕のところは復旧しましたが、このところの余震でまたいつ寸断するかわからないという感じです。僕のところは小千谷から、そう遠くないところですが、被害は比較的軽いところです。
 同じ長岡でも、破滅的な様相のエリアもあり、仕事柄その被災者に会ったりするのですが、かける言葉もありません。
 また、今後の余震で震度6クラスが何回かくると、さらに被害は拡がります。
 僕自身のことで言えば、『自分自身のカムイ』を部屋に飾った次の日に地震がおきました。
 自分自身が地震、んーなんとなく、シンクロ、
 ちょっと不謹慎ですが、偶然とは思えない。
 今回のこの災害の中にも神がいる。
 もしかしたら、明日は、ここにいないのかもなどと思いながら、
余震におびえながら、
 いろいろ考えさせられます。


 オレがつくった「自分自身のカムイ」が長岡市に着いた翌日地震を経験したのも不思議な感じがする。
 ママカツさん、 「自分自身」を守ってくれてありがとう。

29 october(fri)
12 self-existing moon

 昨日の日記を見て即行動したNさんからメールがくる。

 「眼のカムイ」が気になって毎日HP見てます。
 ダイアリーを見ました。新潟にボランティアに行ってるお友達の話は泣けました。
 動きました。
 初めて。
 今の救援物資は何か調べて、タオル・カイロ・軍手・ビニ手を買いに行きました。
 予定ではいっぱいいっぱい買うつもりでしたが自転車ではあまり持ち帰れませんでした。
 やっと自分にも何か出来ると思って立ち上がってやったことはちっぽけなものでした。
 私、ちぃっちぇばりばりちっちぇ(泣)
 小さな荷物が届いても足手まといになるだけやん。情けなくなりました。
 でも、もしかしたらあと一個カイロがあったら・・・って状況になるかもしれないと思い直し発送しました。
 きっと私みたいにAKIRAさん発メッセージを受け取り行動に移した人がいると思います。
 私はたいてい、何をしてよいのかわからないので、ながいものにまかれる感じで良いと感じたことは行動に移して生きたいと思います。
 これからも自分勝手に良いものを拾って私の自信に変身させて行くのでHP楽しみに待ってます。
 「眼のカムイ」と出会ってから私の中の眼が動き出してるようです。
 いい感じ。


 Nさんは「眼のカムイ」(6万円)を6千円だと思って申し込んできたラブリーなやつだ。
 すげえぜ、すげえぜ!
 一瞬一瞬の選択で一日や一年や一〇年やで、一生は築かれる。
 「ばりばりちっちぇ」でも、この瞬間、頭で考えた人と行動した人では、数十年後とてつもないひらきがでるのだ。
 ムーヴ、ムーヴ、ムーヴ!
 まずは今世で与えられた肉体を動かすことだ。

 ランディさんからメールがきた。

 事後報告だけれど、小千谷市のレポート、私のブログに転載させていただきました。
 いい記事です。
 ありがとう。

 こうやって蝶の羽ばたきが世界を変える。
 「TOTAN」という雑貨屋をやっているAKANEさんから、ランディさんのプログを読んでメールがきた。

 今回の地震の報道を聞いてずっと何かしたいと思っていました。
 Mちゃんは某コンビニで募金をした、と言っていました。
 でも私はお金じゃない何かをしたいと思っていました。
 現場にボランティアとして行く勇気もありません。
 この間の戦争(アメリカの攻撃)の時もずっと何かしたいと思っていたのに何もしませんでした。
 でも今回こそ何かしたいのです。
 偽善に思う方もいるかもしれません。
 「これが必要」ってはっきり伝わった(わかった)のなら、やっぱりそれをなんとかしたいと思うのです。
 企業が動いてくれてしまったら用は足りるのかもしれません。
 荷物が無事届けられて配布されるのかはわかりません。
 誰がどんな風に使ってくれるかなんてきっとわかりません。
 だけど女として(へんな言い方だけど)、TOTANとしてでは無く私個人の行動として、生理用品と貼るホッカイロを送りたいと思います。

 オレもカイロを送ろうと思っていたが、あれこれ考えているまに状況は変わる。
 昨日転載したメールの友だちからだ。

 昨日はみんなご協力ありがとうございました。
 その後別の友達の友達のおかーさんからこんなメールも来たらしいです。
 『小千谷市役所の援助物資の件、メール転送有難う。
 今テレビでのアナウンスによると、小千谷市役所では、毎日100台分のトラックで援助物資が送られてきているが、保管場所が足りなかったり、物資の仕分けや運搬をする人が足りないので、送る前に市役所に電話をして欲しいとのことです。
 今のところおむつや、水その他必要な物資が1週間分ほど足りているそうです』。
 たぶん昨日のメールがあちこちに届いたのでしょう。
 みんなありがとう!
 本当はボランティアに行けるといいのですが、なかなかみんなができることではなく、人それぞれ少しずつ出来る形で力になれば何か良い結果になるはず。
 今一番必要なのは現地の生の声だと僕は思います。
 今僕も小千谷市役所に電話したところ確かにおかけ様で救援物資は今時点足りてますが、毎日の状況で何が足りて何が足らないかは変動するので一週間ぐらいしてからなにが必要か確認電話をしてから動いてもらえると助かるとのことでした。
 世間の注目が引いた時、これからがもっと大変になると思うので、できる方は約一週間たってから電話してなにが今必要かを聞いてから何かみんなでできることをしましょう。

 小千谷市役所 0258ー83ー3511

 AKANEさんの行動力もすごい。

 市対策本部に連絡をとりました。
 やはり今支援物資が山のように届いていて、それを配ったり整理したり、という人手が足りなくてスペースも無くてテンテコマイになっている、との事でした。
 という訳でひとまずあちらから再度連絡があるまで、手元に預かっておく、という形になりました。
必要は必要みたいなのですが、「どこで」というのがわかるまで送るのは逆にご迷惑になってしまうようです。

 たぶん今必要なのは、救援物資より、
 人間だろう。
 肉体をムーブしたいやつは、
 新潟県災害救援ボランティアに連絡してから、
 動け。

 タケちゃんが買ってきたアイリッシュ・ブズーキという弦楽器(起源はオレの住んでいたクレタ島)に合わせてこんな曲が降りてきた。Gmのみの全力疾走グルーブだ。

「インラケチ」
※マヤ語のあいさつで、「わたしはもうひとりのあなたです」という意味。

わたしはおまえの影であり なお
おまえはわたしの影である そう
おまえはひとりぼっちなんかじゃない
インラケチ インラケチ
わたしはおまえの父であり なお
おまえはわたしの母である そう
すべての出会いが魂の家族
インラケチ インラケチ
インラケチ インラケチ
夜明けは忍び足でやってくる
インラケチ インラケチ

世界はおまえの夢であり なお
おまえは世界の夢である そう
覚醒したまま夢を見つづけろ
インラケチ インラケチ
太陽と月が結ばれる なお
天使と悪魔が口づける そう
愛と憎しみがひとつに溶け合う
インラケチ インラケチ
インラケチ インラケチ
夜明けは忍び足でやってくる
インラケチ インラケチ

わたしは名もない花であり なお
日であり美であり君である そう
すべてものに宿りながらひとつ
インラケチ インラケチ
わたしはわたしの神であり なお
おまえはおまえの神である そう
すべてはおまえの内に眠っている
インラケチ インラケチ
インラケチ インラケチ
夜明けは忍び足でやってくる
インラケチ インラケチ

愛がほしいとおまえが言う なお
愛がたりないとおまえは言う そう
まずは自分を愛してやることだ
インラケチ インラケチ
悟りがほしいとおまえが言う なお
悟ってないとおまえが言う そう
無様なおまえがいちばん綺麗だ
インラケチ インラケチ
インラケチ インラケチ
夜明けは忍び足でやってくる
インラケチ インラケチ

おまえがおまえであればいい
おまえがおまえであればいい
おまえがおまえであればいい
おまえがおまえであればいい
おまえがおまえであればいい
おまえがおまえであればいい
夜明けは忍び足でやってくる
インラケチ インラケチ

 自分でできることをするしかない。
 「破壊」のあとには、「創造」が生まれる。
 「破壊と創造のカムイ」。
 割れた鏡に映る鑑賞者は、作品の一部となる。
 見て、見て!

30 october(sat)
13 self-existing moon

 911のときは翌日従兄弟から現地レポートがとどくし、akiramaniaのネットワークはテレビよりすごいな。
 独自でネアリカつくっちゃったHさんからも生レポートがとどいた。

 地震恐かったですね。
 私の家は震源地から少し離れたところにあるのですが、その日は仕事で長岡にいて、宮内と言う駅のホ
ームで電車を待っている時に地震が来ました。
  一番はじめの揺れの時、最近テレビで見た兵庫の台風での水害の映像が浮かんで、「災害で死ぬって人ごとじゃないんだぁ・・・」と思いました。
 ふだん鬱がひどい時は「死にたい」って思うのに、本当に死を目の前にすると「助かりたい。」と心の底から思いました。
 同じ死ぬでも、こんな怖くて痛そうな死に方やだよぉと思いながら、はじめの一時間くらいはその場で揺られていました。
 その後、寒さと恐さで足をガクガクさせながら近くの高校まで行きました。そこで毛布に包まったおばあさんを見てハッと我にかえって「しっかりしなきゃ」って思いました。
 結局その日と次の日は交通網のマヒで家には帰れなかったのですが、避難している人の車やテントの中で夜の寒さをしのがせてもらいました。
 私みたいな健康な若者でも車の中で寝るのや寒さはきつかったのに、お年寄りや小さい子供がいるうちはどんなに大変な事かと思います。
 自分がこういう目にあって、避難所を見てはじめて、切実に自分に出来ることはなんだろうと思います。自分で困ったことしか強く思えないのですが、私は寒くて寒くてどうしようもなかったので、みんなに毛布はいっているのかなぁとか、その時毎日のんでいる抗鬱剤を持ち歩いてなく地震が起こった時点でいつ家に帰れるかわからず心配だったので、避難してきた人達、家が崩壊した人は持病の薬確保できているのかとか。
 友達や知り合いもまだ避難していたり家が崩壊したり、心が痛みます。
 と言う私も普通の生活には戻ってますが、今回の地震ではじけたプレートがこちらのほうまで伸びておりまだはじけてないとかで、いつでも逃げれる準備しています。
 早く平和な日々がきてほしい。・・・迂回して迂回してやっと無事家に帰れたのに、今日少し鬱になり死にたいと言う考えが頭をめぐってきて・・・でもせっかく地震で助かったのに、死にたいなんて・・・でもこれとそれは違うのかな?・・・訳がわからない
 今月はじめに小学校、中学校と一緒だった同級生が自殺をしました。鬱でした。ネクタイで首をつっているのを両親が見つけたそうです。3歳と1歳の子供を残して。いくら新潟県の自殺率が全国で5位でも周りでよく人が死ぬよー。
 それともこれが人生のかな?
 あっ、今も揺れた。
 恐いよー。
 早く平和が戻ってきますように。
 避難している人すべてにあたたかい毛布、ご飯必要なものがいきますように、
 みんなが安心して眠れますように。
 みんなの心に平和が戻ってきますように。


 Hさんの迷いはほほえましいくらい心に響くねえ。とくにここがいい。

 ふだん鬱がひどい時は「死にたい」って思うのに、本当に死を目の前にすると「助かりたい。」と心の底から思いました。

 今度はべつのHさんも行動を起こした。

 昨日の日記をみて、わたしもそ背中を押されました。
 AKIRAさんの日記の転載を見た直後、わたしも働いている社内に一斉に転載内容をそのまま送信しました。
 で、さっそく本日の17時締め切りということで、社内の有志から集まる救援物資を小千谷市役所に郵送する予定です。
 個人的に、募金をしようかなと思っていた矢先、AKIRAさんの日記の転載を見て、直接何か物資を送ろうと思いました。
 どうぜ送るなら、少しでも量があった方がいいかなと思いまして。。。 とりあえず自分がいる近場のコミュニティーに声をかけました。
 そしたら意外にも! みんな無口に無表情で、いつもと変わらずパソコンに向かって黙々と働いている同僚達から、敏感な反応が得られました。
 同じ日本という国にいる人たちが物に困っているという状況、それに対して何も変わらない自分をとりまく日常、何も変動も感じていない自分とまわりの人間にはがゆさを感じていました。
 1ヶ月前に、1年の滞在を経てフランスから帰国しました。
 海外にいるときは、なぜか素直に人にやさしくなれる自分、日本に帰ってくると、まわりの目、他人を気にして行動を取る自分。
 そんななまぬるい自分自身から脱することなんて、ありふれた日常にもあるんだと。。。AKIRAさんの日記→転載→転送→郵送、に至る自らの行動過程を含めて、大変得るものがありました。

 たった今、新潟県地震対策出納部(025-280-5987) に直接電話し現地状況を伺ったところ、国内からさまざまな救援物資が届き、今時点とりあえず1週間分程度の物資は足りているとのことでした。
 後日担当の方から受け入れの状況がわかり次第、わたしの携帯に直接連絡を下さるということなので、その時に社内で集まった救援物資を郵送したいと思います。

 阪神大震災で水のはいったポリタンクをとどけたとき、半壊した家のまえに立つおばあちゃんがオレにむかって手を合わせた。
 おじいちゃんを地震で亡くしながらも、これ以上ないしわくちゃ笑顔でむかえてくれた。
 「一度死をくぐった者は、こんなに素敵な笑顔を作れるのか!」
 と、驚いた。
 オレたちの日常につぎつぎと降りかかってくる不幸も、
 不運も、
 試練も、
 君の笑顔を彫るための彫刻刀だ。
 肌を削られる痛みによってオレたちは退屈な日常から覚醒する。

 生まれ死んで
 生まれ死んで
 生まれ
 もう一度君と出会うんだ
 (「旅立ちの歌」

 何度ころんでも立ち上がり、
 何度死んでも、生まれ変わり、
 オレたちは出会いつづける。
 オレが死んだあとも作品は生きつづけ、
 たくさんの人々と出会いつづけるだろう。
 そこで、「フェニックスのカムイ」。

 (仙台フェニックスとは関係ないぞ)
 これはリサイクル着物の刺繍を生かして毛糸を貼った。
 見て、見て!

31 october(sun)
14 self-existing moon

 イラクで人質になった香田くんをマスコミはいっせいに非難する。
 「日本はテロに屈指ない」
 「日本が地震であたふたしてんのに、勝手な行動すんな」
 「おめえはイスラムの常識もしらねえで短パンはいて、20ドルしかなくて、テロリストに利用されて、交渉のワイロにオレたちの税金つかうな」
 「かるい気持ちで、外国行くな!」
 ジェラシー、はいってんじゃねえの?
 日本社会から出てアブナイ国へいったやつは、自分ができないことをして、うらやましいから罵倒する。
 「冒険したいんだけど、社会のレールからはずれると再起不能になちゃうし」
 「新潟の被災者は、日本の常識に乗っ取って生きてきたんだぞ」
 「小泉首相だって忙しいのに、勝手なことすんな 」
  最後にこんな声が聞こえる。
 「不自由なわたしをさしおいて、自由に生きるな!」
 香田くんはどういうやつかもしれないが、
 自分が罵声を食らっているように、
 痛い。

 渋谷での出版記念パーティーに、なんと「なまけもののパン屋」が出店してくれることになった。
 世界中のパンを食ったオレにとって、現在日本で食える最高のパンだ。
 「なるべくたくさんの人にパン本来の味を知ってほしい」んで、一切れ100円から売ってくれるって。マジ衝撃受けるよ。粉と水と塩と天然酵母だけでつくられた硬い塊を食らうと「こ、これが本物のパンだったんだ!」ってカルチャーショックを受け、今まで食ってたパンが食えなくなる。はっきりいって、なまけもののほうが銀座のビゴや赤坂のペルティエよりうえだ。
 なまけもののくせに日本でいちばん努力してるし、「徹夜でも焼きます!」って燃えている。
 石垣島のYさんからこんなメールがとどいた。

 香田さんのこと、くやしいです。
 私は某石垣島に住んでいるものです。
 AKIRAさんの日記で見て、「なまけもののパンや」さんからパンを送ってもらいました。
 今日、パンが届いたんですが…。
 箱を開けるといきなり10/24の「新潟で震度6強3回」の見出しの下野新聞が。
 手書きの手紙には、めちゃへたな絵で(笑)パンの絵とおいしい食べ方が。
 他に、注文メールで話題にした大工哲弘さんについての手紙と、その歌詞が手書きで添えられていました。
 もう!!!
 これだけで、泣けた。
 自分もこの9月からWEBで焼き菓子屋をはじめました。
 けど、ここまで命をかけてやっているだろうか!?と。
 自問自答してみます。
 紹介してくださったAKIRAさんにお礼を、と思いメールしました。
 今新潟へテントを送るべく動いていますが、(何せこちらはキャンプの本場ですから!)
 ふとその中で、新潟の地震被害は自分の痛みにつながっている…と思いました。
 自分の子供の頃のやけどの痛みや、仲間はずれにされたことや、
 自分の出生…、自分の中に残っている痛みが今私を動かしているなあ、と
 ふと気がついて泣けてきました。


 今回のイベントはネアリカを鑑賞する視覚と、
 ライブを堪能する聴覚、
 そこにパンの味覚がくわわった。
 ネットとという仮想現実でつながった者たちよ。
 生身で会って、笑顔を交わそう。
 ここで出会わないと、今世の出会いはいつまでも仮想現実のままだぜ。
 待ち合わせは、11月20日(土)、渋谷で会おう。
 150名限定だし、キャンセル料とかないんで、早めに申しこんどいた人の勝ち

大ネアリカ展 &
「神の肉 テオナナカトル」「COTTON100%」
出版記念パーティー

2004年11月20日(土)16:00〜21:00
渋谷スペースエッジ

めるくまーる。1600円
現代書林 。1400円
11月15日同時多発売!!
期間限定でプチ・ネアリカを販売します
条件:11月20日(土)の個展に出品してくれる方
基本ルールは、早い者勝ちです
興味のある方はメールください

プチネアリカ1〜10
プチネアリカ11〜12
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 ネアリカ Contents of Nearika
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